白兎は理想を抱え、幻想へと走る   作:幻桜ユウ

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第二十八話

 二人が泣き止んだことを確認すると、僕は二人に尋ねた。

 

 

 「アリアドネ、アイルズ。二人はこれからどうするの?」

 「「お父様と一緒にいる」」

 「……つまりは【ヘスティア・ファミリア】の本拠地(ホーム)に来るっていう認識で良いのかな?」

 「「うん」」

 

 

 そうですか。まぁ、今は神様もいないし、数日泊めるのは良いかな? 

 

 

 「分かった。じゃあ、一緒に行こうか」

 「「うん!」」

 

 

 二人は元気に頷き、僕の横に来た。どうやら、身を隠すのをやめたらしい。

 

 アリアドネの金髪青目。

 

 アイルズの銀髪赤目。

 

 久しぶりに見た二人の姿はとても見違えるほどに美しくなっていた。

 

 アイズと比べても遜色はない。

 

 道ゆく人々は二人に視線が釘付けになっている。

 

 正直、不埒な視線から愛娘を守ってやりたいが、二人やアイズに過保護過ぎだと怒られているため、何もしない。

 

 子に親離れできないと思っている親ほど子離れできないものだ。

 

 それが嬉しいのだから。

 

 僕達は本当に久しぶりに談笑しながら家へと帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日──

 

 朝、僕は起きた。

 

 ん? 全然動けないっていうか、暗い。

 

 それに温かいし、柔らかい。

 

 僕は訳もわからず、とりあえず、目の前あるだろう何かに触れる

 

 

 「んっ」

 

 

 すると、アリアドネの艶かしい声が聞こえる。

 

 それによって僕の意識は一気に覚醒。

 

 自身の極限の体術を用いて、その場所から離れた。

 

 

 「なっ、なんで。二人とも僕の上に!?」

 「う〜ん。おはようございます、お父様。朝から私の体を求めるなんて欲求不満ですか?」

 「私には触ってくれないの?」

 「欲求不満じゃないし、触りません!」

 

 

 全く、二人の方が欲求不満なんじゃないのか? 

 

 二人ともネグリジェを着て、僕に抱きついていたということだ。

 

 二人とも16歳なら、もう少し慎みを持ってくれ。切実に。

 

 

 「はあ、僕は朝食を作ってくるから、その間に着替えてね」

 「「はーい」」

 

 

 そして、僕はキッチンへと向かい、朝食の準備をする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝食を食べ終えて、ダンジョン探索に行こうとした時、僕は気づいた。

 

 

 「そういえば、二人とも【ステイタス】って今どんな感じなの?」

 「えっと、私もアイルズもレベル10です。これが最新の【ステイタス】です」

 

 

 僕は二人の【ステイタス】を書いた用紙を受け取り、その凄さに瞠目した。

 

 

 

 

 

 アリアドネ・クラネル Lv.10

 

 

 『力』SSS 1892

 『耐久』SSS 1752

 『器用』SSS 1935

 『敏捷』SSS 1875

 『魔力』SSS 1924

 

 精霊S 剣聖S 魔聖S 英雄A 神聖S  

 

 【魔法】

 【精霊の園(フェアリーダンス)

 ・範囲内の味方の体力、精神力を持続的に回復させる

 ・範囲内の相手の体力、精神力を持続的に奪う

 ・範囲の広さと干渉する力の大きさは魔力値に依存

 ・詠唱式『この地に眠る同胞よ。我らに力を貸し与え給え』

 

 【精霊の奇跡】

 ・防護魔法

 ・致死攻撃の無効化

 ・無効化回数は自身のレベルに依存

 

 【アストライア】

 ・召喚魔法

 ・速攻魔法

 ・双剣『アストライア』を召喚

 

 【スキル】

 【英雄王の娘】

 ・早熟する

 ・家族と魂を繋ぐ

 ・家族が死ぬまで不老不死

 

 【双星(ツインスター)

 ・対象者と共にいる時、ステイタス超高補正

 ・対象者との連携力向上

 ・対象者のステイタスを知ることができる

 

 

 

 

 

 アイルズ・クラネル Lv.10

 

 

 『力』SSS 1756

 『耐久』SSS 1783

 『器用』SSS 1998

 『敏捷』SSS 1942

 『魔力』SSS 2185

 

 精霊S 剣聖S 魔聖S 英雄A 神聖S

 

 【魔法】

 【ジ・オリジン】

 ・破壊魔法

 ・破壊範囲の制御は魔力値依存

 ・詠唱式『森羅万象に願う。我が扱うは万物の根源。我が仇の全てを破壊せよ』

 

 【精霊の奇跡】

 ・強化魔法

 ・一定時間、器の強制昇華

 ・効果は自身のレベルに依存

 

 【ディザスター】

 ・召喚魔法

 ・速攻魔法

 ・双剣『ディザスター』を召喚

 

 【スキル】

 【英雄王の娘】

 ・早熟する

 ・家族と魂を繋ぐ

 ・家族が死ぬまで不老不死

 

 【双星(ツインスター)

 ・対象者と共にいる時、ステイタス超高補正

 ・対象者との連携力向上

 ・対象者のステイタスを知ることができる

 

 

 

 

 

 ……ちょっと頭が痛い。

 

 以前とは比べ物にならない。

 

 なんだこれは。チートレベルだ。

 

 発展アビリティもおかしい。

 

 精霊以外、聞いた事も無い。

 

 でも、まぁ、二人がここまで成長した事は純粋に喜ぶべきか。

 

 僕は二人に頭を撫でながら、褒める。

 

 

 「よく頑張ったね。二人とも」

 「「……ッ! はいっ! ありがとうございます、お父様!」」

 

 

 二人は嬉しそうに目を細めて、僕の手を受け入れる。

 

 すると、アリアドネが気づいたかのように声を上げる。

 

 

 「私、お父様の【ステイタス】を見てみたいです!」

 「僕の?」

 「はい! 今のお父様はレベル1だと理解していますが、それでも見てみたいです」

 「別に良いけど、今の僕の【ステイタス】を書いた用紙が無いんだよね」

 「そうなの?」

 「うん。神様が僕の【ステイタス】を口頭で伝えたから、多分、秘密があると思うんだけど。……そういえば、二人って【神聖文字(ヒエログリフ)】読めたよね?」

 「えっ? そうですね。読めますよ」

 「じゃあ、僕の背中から直接確認して、確か、今の神様は『(ロック)』を知らないはずだから。見れると思う」

 「分かりました。では、失礼しますね」

 

 

 そう言って、アリアドネは僕のインナーを肩まで上げて、【ステイタス】を確認する。

 

 

 「ッ! お姉ちゃん。これは!」

 「ええ、ヘスティア様が隠したくなるのも無理はないですね」

 「どうかしたの?」

 「すみません! 今、紙に写しますね」

 

 

 そして、アイルズが僕に渡してくれた用紙を見ると、

 

 

 

 

 

 ベル・クラネル Lv.1

 

 『力』I 82

 『耐久』I 13

 『器用』I 96

 『敏捷』H 172

 『魔力』I 0

 

 【魔法】

 【ファイアボルト】

 ・速攻魔法

 ・付与魔法に変化可能

 ・昇華時、『神雷』と『聖火』を纏う

 

 【ディア・アルゴノゥト】

 ・召喚魔法

 ・速攻魔法

 ・『雷霆の剣』『炎の魔剣』を召喚

 ・追加詠唱式『笑おう! 例えどんな苦難があろうとも! 紡がれるは喜劇! 暗黒の世界を照らす希望の光! 神々よご照覧あれ! 私が、始まりの英雄だ!』

 ・『雷霆の剣』を『神雷の剣』、『炎の魔剣』を『聖火の魔剣』に昇華

 ・自動的に【英雄願望(アルゴノゥト)】の発動

 

 【スキル】

 【原点回帰(ベル・クラネル)

 ・【英雄の試練】【英雄願望(アルゴノゥト)】使用可能

 ・【憧憬一途(リアリス・フレーゼ)】【眷属冒険譚(メモリア・フレーゼ)】【理想】発現

 ・【ファイアボルト】昇華可能

 ・【英雄願望(アルゴノゥト)】強化

 

 【原点回帰:幻想(アルゴノゥト)

 ・自分の(理想)乗る(同調)者の数に応じて自分のステイタス超高補正

 ・自分の(理想)乗る(同調)者にステイタス超高補正

 ・絶望に屈さず、希望を掲げる限り効果持続

 

 

 

 

 

 何だ……これは。

 

 これが今の僕の【ステイタス】……なのか? 

 

 ははっ。そりゃそうだ。神様も隠したくなる。僕でもこれは隠したくなる。

 

 すみません、神様。

 

 次、神様が帰ってきたら、僕の正体とこの世界についてお伝えします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕達は今、ダンジョンに来ている。

 

 自分の本当の【ステイタス】を知ったからこそ、これは動かなければならないと思った。

 

 そして、今は17階層にいる。

 

 そろそろ、階層主(ゴライアス)が出てくるだろう。

 

 肩慣らしだ。

 

 一分で終わらせる。

 

 そして、『嘆きの大壁』から階層主(ゴライアス)が現れた。

 

 ゴライアスは小さな敵に咆哮する。

 

 僕は歩き出す。そして、歌を紡ぐ。笑いながら、声高々に。

 

 「『笑おう! 例えどんな苦難があろうとも! 紡がれるは喜劇! 暗黒の世界を照らす希望の光! 神々よご照覧あれ! 私が、始まりの英雄だ!』」

 

 「【ディア・アルゴノゥト】!」

 

 ゴォォン! ゴォォン! ゴォォン! 

 

 大鐘楼の鐘(グランド・ベル)が鳴る。

 

 昇華し、高次元の雷と炎を纏う剣には光が集約される。

 

 さて、行くぞ。

 

 

 

 階層主(ゴライアス)の攻撃を掻い潜り、的確にダメージを与えていく。斬撃のダメージは少ないが、剣に纏ってある『神雷』と『聖火』が大きなダメージを与えている。

 

 時間にして1分。

 

 僕は距離を取り、二つの剣を最上段に構えた。

 

 そして、僕は『英雄の一撃』を繰り出し、

 

 膨大な光が消える頃には、

 

 階層主(ゴライアス)は魔石も残さず、消えていた。

 

 「「凄い」」

 

 何が凄いのか。アリアドネとアイルズは自分達の言葉がよく分からなかった。私達でも階層主(ゴライアス)を一撃で葬る事はできる。

 

 しかし、お父様の一撃はそんな安いものじゃない。まさに『英雄の一撃』。私達ではとても表現できないその一撃は遥かに重いものだった。

 

 

 


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