白兎は理想を抱え、幻想へと走る   作:幻桜ユウ

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第三十五話

 

 「だ、大丈夫ですか? ロキ様」

 「大丈夫なわけあるかい!? なんや、この【ステイタス】!? もはや、原型留めてないで!?」

 「い、色々あったので……」

 「その『色々』を話すんや!」

 「えと、あのですね」

 

 

 と、とりあえず、エレボス様達の事は言わずに前世の追体験をしてきた事を言えば良いかな?

 

 

 少年説明中……

 

 

 「──というわけです」

 「ベルたん……。ヤバすぎるで、それ。『前世』で起きた大事件をレベル1、2で解決して来たって。逆にランクアップしてないのがおかしいとも言えるんやけど」

 「あっ、多分それはあくまで【英雄の試練】の中での『偉業』だからだと思います。本来は【英雄の試練】を達成する事自体が『偉業』ちなりますが、僕自身に掛けた【英雄の試練】は少し特殊なので、『偉業』を達成するための設定にそもそもしていないからだと思います」

 「なるほどなぁ。というか、あの三人の【ステイタス】の更新したくないんやけど」

 「諦めて頑張ってください。アイズはともかく、アリアドネとアイルズは前よりまともなっているはずなので、多分、大丈夫ですよ?」

 「なんで、最後で疑問系になるねん! めっちゃ不安になるやないか!」

 

 

 あっはっはっは。アリアドネとアイルズの【ステイタス】は僕に引っ張られて低下しているはずだから、この前確認したようなチート染みた【ステイタス】ではなくなっている。だからというわけではないが、まだマシだろう。

 

 

 「すまんな〜、ベルたん。アイズたんを呼んでくれへん?」

 「分かりました」

 

 

 僕は部屋を出て、先程の応接室に戻る。

 

 

 「アイズ。ロキ様が、部屋まで来いって」

 「ん。分かった。行ってくるね、皆」

 

 

 アイズが部屋を出て、僕は椅子に座る。

 

 

 「さっき、何かあったのかい?」

 「ああ、いや、ちょっと僕の【ステイタス】で……」

 

 

 フィンさんに尋ねられた僕は新しい【ステイタス】を写した用紙を机の上に置いた。

 

 それをフィンさんが取って見ると、急に笑い出した。

 

 そんなに面白い?

 

 

 「あっはっは! なるほど、これは確かにロキが叫びたくなる気持ちも分かる」

 「どうしたのだ、フィン? 私にも見せろ」

 

 

 リヴェリアお姉ちゃんはフィンさんから用紙を奪い取り、その内容を見ると、「ふふっ」と言って微笑を浮かべる。

 

 

 リヴェリアお姉ちゃんも?

 

 

 「ベル。どうやら、私達の様子があまりよく分かっていないようだな」

 「うん。全然分からない。僕の【ステイタス】に何か面白いことでもあった?」

 

 

 フィンさんは僕の問いに笑いながら答える。

 

 

 「ベル。分かってないのかい? 要するに君はほぼ不老不死のようなもの。全盛期までは成長するだろうから、現時点では不老とは言えないから、『ほぼ』なんだけどね。まぁ、それは置いといて、要するに僕達は『君が死ぬ』事がないと【ステイタス】上で証明されたからね。安心したんだ。リヴェリアは僕以上だと思うけどね」

 

 

 フィンさんの最後の言葉にリヴェリアお姉ちゃんは「うっ」と言い、顔を赤くする。

 

 

 「コホン。冒険者は『冒険』とは切っても切り離せないものだ。『冒険』とは常に危険を伴う。だからこそ、お前が必ず帰ってくる事ができるような存在になってくれて、安心しているんだ。……ただし! だからといって、無茶をしても良い訳じゃないぞ! お前も一人の少年で普通の心を持っている。だから、自分の命を顧みない行動だけはやめてくれよ?」

 「うん。お姉ちゃん、ありがとう」

 「よしよし。お前は良い子だな」

 

 

 リヴェリアお姉ちゃんは僕の頭を撫でる。

 

 やっぱり家族は温かい。

 

 ずっとこのままでいたい。

 

 だから、皆。

 

 僕の前からいなくならないでね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アイズはロキの部屋に着き、扉をノックする。

 

 

 「アイズです」

 「入ってええよ〜」

 「失礼します」

 

 

 私はいつも以上に丁寧な言い方で入った。

 

 

 「そんじゃ、服脱いでそこに座ってな〜」

 「変な事したら【エアリエル】します」

 「それ、洒落になっとらんで!?」

 「毎度、斬るだけじゃ味気ないかと思ったので」

 「そんな訳ないやろ……。にしても、ほんまによう喋るようになったな〜。いつもの無口さとは大違いや。そんなにベルたんに気づいてもらえたのが嬉しかったんか?」

 

 

 

 そんなに変わっているのだろうか?

 

 でも、私はベルが好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで仕方ないから、私は彼と一緒にいたい。ずっとずっと、いつかこの『物語』が終わるまで。

 

 ああ、さっきから抑えが効かなくなっている。

 

 早く彼と『一つ』になりたいと魂が呼んでいる。

 

 でも、まだダメ。

 

 彼はやっと『自分』を見つけたのだ。

 

 まだ早い。

 

 猛烈な波を鎮めながら、思考の海から意識を現実へと戻す。

 

 そして、ロキは頭を押さえて「なんやねんこれ? ヤバすぎるやろ」と何度も呟きながら、私に用紙を渡してくる。

 

 私はその用紙を確認すると、

 

 

 

 

 

 アイズ・クラネル Lv.5

 

 『力』SSS 2082

 『耐久』SSS 2158

 『器用』SSS 2047

 『敏捷』SSS 2156

 『魔力』SSS 2349

 

 精霊S 聖風S 英雄S 神聖S 剣神S

 

 《魔法》

 【エアリエル】

 ・付与魔法

 ・風属性

 ・第一詠唱式『聖なる風よ(テンペスト)

 ・第二詠唱式『白く輝け(クラネル)

 ・第二詠唱式により出力増大

 ・第二詠唱式により神聖性を付与

 

 【精霊の奇跡】

 ・回復魔法

 ・【エアリエル】発動時、効果上昇

 ・詠唱式『母なる風よ、どうか私に力を貸して』

 ・自分が愛する者の為に使用する時、蘇生魔法に変化可能

 

 《スキル》

 【精霊姫】

 ・怪物種に対しアビリティ超高補正

 ・自身の愛する者の為に戦う時アビリティ超高補正

 ・自身の愛する者と魂を繋ぐ

 

 【英雄王妃】

 ・早熟する

 ・想いが強くなる程効果上昇

 ・自身が最も愛する者といる時想いはさらに強くなる

 

 【神姫】

 ・身体組成を高次元へと変化可能

 ・魂において思考、行動可能

 ・『ベル・クラネル』と魂が混ざる程、存在が昇華する。

 

 

 

 

 


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