白兎は理想を抱え、幻想へと走る   作:幻桜ユウ

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第三十六話

 

 

 

 アイズのステイタス更新とアリアドネ、アイルズの『改宗(コンバージョン)』を終えた。

 

 アリアドネとアイルズは僕の『器』に引っ張られているため、レベルは5となっている。

 

 正直、二人にはとても申し訳ない気持ちなったが、二人は「これでお父様と隣で戦うことができます!」と言っていたのを聞き、僕は嬉しくなった。

 

 そして、ある日『眼晶(オクルス)』からアルフィア義母さんの思念伝達が来た。

 

 その報告としてはレベル9になったという報告だ。

 

 貴方は一体どこを目指しているんですか?

 

 本気でそういう気持ちになった。

 

 もう正直、ラスボスは『神獣の触手(デルピュネ)』よりもアルフィア義母さんじゃないか?

 

 レベル差が4もあるって・・・。ほぼ勝てる可能性ないじゃん。

 

 うーん。一応、アルフィア義母さんと連絡しているのは皆には秘密・・・まぁ、アイズ、アリアドネ、アイルズにはバレているけど。ここにはいないけど、多分レフィにも。

 

 隠し事が全くできないな〜。

 

 4人共、大体の言うことは聞いてくれるからバレる心配はないから別に困らない。

 

 僕は自室のベッドに腰掛け、ため息を吐く。

 

 

 「ふ〜。それにしても、アイズの【ステイタス】を見た時は驚いた」

 

 

 アイズの真名が『アイズ・ヴァレンシュタイン』から『アイズ・クラネル』に変わっていた。他にも、()()()()()()()()()()【ステイタス】。

 

 アイズは自身の『器』を制御している。

 

 僕は似たようなことができるが、流石にアイズのような自然さを出すことはできない。

 

 精霊ならではという事だろう。

 

 神格化が始まったばかりの僕ではまだできない。

 

 【精霊の救い手】も全然使う事ができない。

 

 ボフッ。

 

 僕は勢いよくベッドに倒れ込む。

 

 

 「でも、時間はたっぷりある。ゆっくり慣らしていこう。こういう類の物は焦ると取り返しがつかなくなるからね」

 「うん。ベルは自分のペースでやれば良いと思うよ」

 「・・・なんでアイズがいるの?」

 「一緒にいたいから」

 

 

 僕の問いにいつの間にか僕の隣で寝そべっているアイズはさも当たり前かのようにそう答える。

 

 そういえば、聞きたいことがあったんだった。

 

 

 「アイズ、最近結構僕にべったりだったよね? 何かあったの? リヴェリアお姉ちゃんにも我慢しろって言われたし」

 「えっとね。私が我慢できなくなっちゃったの」

 「我慢? 何に?」

 

 

 アイズは顔を真っ赤にさせて、ブツブツと呟くように言う。

 

 

 「・・・い・・・く」

 「はい?」

 「・・・性欲」

 「・・・はい?」

 

 

 ま、待て待て待て。君、今9歳だよね? えっ? その歳で性欲を持っちゃってるの? 僕でもそれらしいものはまだ持っていないのに?

 

 ああ、いや、待て。アイズの言う『性欲』は人間の方じゃないのか。

 

 言ってしまえば、『魂の一体化』。

 

 魂の方に思考が行くようになった現在に置いて、欲というのは体ではなく、魂に置けるものに引っ張られていく。

 

 人間の三大欲求の一つ『性欲』は魂で言えば、『魂の一体化』すなわち、『魂から混ざる』という事。

 

 これは本能とほぼ同義で理性では制御できにくい。

 

 なるほど、だから、アイズは僕にべったりだったのか。

 

 それどころか、僕に接触する事で魂が少しずつ混ざっていったから、【英雄の試練】に介入できたのか。

 

 ああ、こうやって一つずつ整理していくと、絡まった真実が解かれていく。

 

 『魂が魂を求める』。それに抗えないアイズは僕と混じりたいと言っているのだ。

 

 正直、僕にとって問題はない。別に『そういう行為』をするわけではないし、僕の方から『魂の領域』を明け渡せば良いだけの話だ。

 

 

 「おいで、アイズ」

 「・・・うん」

 

 

 僕がアイズを呼ぶとアイズは僕に抱きついてくる。

 

 顔を僕の胸にうずめて、スリスリしている。ちょっとくすぐったい。肉体的にも精神的にも。

 

 僕はアイズを抱きしめ、さらに『魂の領域』を共有させる。

 

 すると、アイズはさらに僕の体を強く抱きしめる。

 

 さて、読書の諸君は少し置いていかれているだろうから、少し解説を挟むとしよう。

 

 『魂の領域』というのは、各々が持つ魂が存在する領域の事だ。分かりやすく言うならば、海に浮かぶ島だ。普通の人はその島だけで世界が完結しているが、僕達はその島の外側を知っているため、船を作り海を渡ることができる、そのような感じだ。

 

 神ならば、そこら辺をもう少し細かく説明できそうだが、僕には難しい。とにかく、魂の領域において思考と行動できるようになるとその領域を弄ることができる。

 

 『魂の一体化』とは『魂の領域』を共有する事だ。

 

 本来は島同士がぶつかり合うことはない。互いを傷つけないために壁が作られている。

 

 しかし、島が隣り合えば、領域は拡大する。

 

 そこからはまさに運命共同体とも言えるだろう。

 

 だが、何らかの原因でその島々が離れてしまった場合、その島は伸びたゴムのように戻ろうとしたがる。

 

 だから、アイズは前世から今世にかけて離れてしまった魂を戻そうとしているのだろう。アイズは僕が記憶を持っている事を知っていたから。

 

 そして、アイズが僕を求め出した最大の切っ掛けは2年前の僕の泥酔事件。今、こうして『魂の領域』の共有をしているから気づいたが、僕はあの時、()()()()()()()()()

 

 僕は泥酔したことにより、本能が現れた。

 

 家族に甘えたい欲求とアイズと混じりたい欲求。

 

 だから、僕が最初にアイズを求めてしまった。だから、アイズは抑えが効かなくなり始めた。

 

 全く、発展アビリティ『純粋』が機能しないのも頷ける。言い方は変だが、『器』は『魂』に逆らえない。魂の欲求は器の干渉では止まらない。止められるのは同じく魂の理性。

 

 領域を共有すれば、しばらくは落ち着くだろう。

 

 すると、アイズが抱きしめる力を緩めた。

 

 どうやら、領域の共有は終わったみたいだ。

 

 

 「・・・ありがとう、ベル。もう落ち着いたよ」

 「それは良かった。我慢できなくなったら、ちゃんと言うんだよ? 溜まりに溜まって、襲われるのは勘弁してほしいから」

 「・・・そんな事しないもん」

 

 

 アイズは僕の言葉に頬を膨らませながら、プイッと顔を背ける。

 

 僕はその様子に思わず微笑を浮かべる。

 

 

 「さて、もう夜も遅い。そろそろ、部屋に戻ったら?」

 「んー。いや、今日はベルと一緒に寝る」

 「もう、共有は終わったよね?」

 「単純に一緒に寝たいの」

 

 

 僕ははぁーとため息を吐き、やれやれと思いながらベッドのスペースを開ける。

 

 アイズはパァッと顔を明るくして、僕の横に潜り込む。

 

 僕はアイズの頭を撫でながら、目を閉じる。

 

 こんな日も良いなぁ。

 

 

 

 

 

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