白兎は理想を抱え、幻想へと走る   作:幻桜ユウ

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第六話

 

 

 

 僕達はダンジョンから地上へと帰還した。すっかり夕暮れ時になって、冒険者も各々の家へと帰る。

 

 そして、バベルの前にてアリーゼさん達と別れた僕とアイズはロキファミリアのホームーー『黄昏の館』へと戻った。

 

 そこで迎えてくれたのはロキファミリアの首脳陣であるフィンさん、リヴェリアさん、ガレスさんと主神ロキ様だった。

 

 「二人ともお疲れさん!」

 「どうやらしっかり試練は達成できたようだね」

 「二人とも疲れているだろう? 立ち話でなく座って話そう」

 「ガッハッハ! ベル! 良い面構えじゃないか! 今夜は宴を開こうじゃないか!」

 

 あぁ。やっぱり家族っていうのは良いなあ。前世の僕が取りこぼした一つの真理。やっぱり『孤独の英雄』は必要ない。いや、そんなものは存在しない。僕はここに来て良かった。ここでなら、見つけられると思うから。前世では辿り着けなかった『幻想』を。

 

 「ただいま。みんな」

 「私、疲れた。ベル、膝枕して」

 

 アイズよ。少々マイペースではないか? あと、僕も疲れているんだけど?

 

 「アイズ。ベルだって疲れているんだ。せめて、明日にしておけ」

 「じゃあ、予定通り二人のステイタス更新やな〜」

 

 そして、僕達は執務室に移動し、僕は長椅子に横になった。そして、僕の上にロキ様が跨り、ステイタス更新をする。

 

 「ベルたん・・・。予想通りランクアップは可能やけど、このアビリティはドン引きやで」

 「そうですか?」

 「だっておかしいやろ! 何でちょっとダンジョンに潜っただけでこんなにアビリティが伸びるんや!」

 

 ロキ様はそう言って、ランクアップする前の最終ステイタスを写した羊皮紙を渡してきた。

 

 

 

 

 

 ベル・クラネル Lv.2

 

 『力』S 954→SSS 1138

 『耐久』S 973→SSS 1123

 『器用』SS 1035→SSS 1289

 『敏捷』SSS 1121→1262

 『魔力』S 942→SSS 1274

 

 幸運 H

 

 《魔法》

 【エレメンタルフォース】

 ・付与魔法

 ・速攻魔法

 ・『ーーーフォース』に属性名を入れることでその属性を纏うことができる

 ・使用可能属性 『ファイア』『アイス』『ウィンド』『サンダー』『アース』『ホーリー』『ダーク』

 

 《スキル》

 【理想】

 ・早熟する

 ・理想を強く想う程、効果上昇

 ・想いは伝播する。

 

 【幻想】

 ・【理想】が限界へと至った時発動

 ・古き理想が燃えて、新しき理想が生まれる

 ・燃やされた理想は使用可能

 

 

 

 

 「なんかすごい成長していますね。トータル1000越えですか」

 「もう、二人とも怖過ぎるで・・・」

 

 そう言いながら、新しくなったステイタスを写した羊皮紙を確認した。

 

 

 

 

 ベル・クラネル Lv.3

 

 『力』I0

 『耐久』I0

 『器用』I0

 『敏捷』I0

 『魔力』I0

 

 幸運 H 純粋 I

 

 《魔法》

 【】

 

 《スキル》

 【理想】

 ・早熟する

 ・理想を強く想う程、効果上昇

 ・想いは伝播する。

 

 【幻想】

 ・【理想】が限界へと至った時発動

 ・古き理想が燃えて、新しき理想が生まれる

 ・燃やされた理想は使用可能

 

 【理想昇華】

 ・燃やされた理想を理想の形に応じて変化

 ・燃やされた理想を理想の質に応じて強化

 ・燃やされた理想を理想の色に応じて昇華

 

 

 

 

 

 「魔法は・・・発現してませんね。その代わり、スキルが発現しましたか」

 「『理想昇華』・・・か。見たところ、他の二つのスキルと関係したスキルのようだが」

 

 リヴェリアさんが僕のスキルについて分析する。

 

 「『理想昇華』という名前を見ると、『理想』の上位互換のように見えるけど、あまり関係があるように見えないね」

 「うーん。『幻想』の延長線上ですかね?」

 

 フィンさんは率直な感想を言う。

 

 「うーむ。それもあるが、儂としては発展アビリティの『純粋』の方が気になるぞ」

 「『純粋』ねぇ。綺麗になるんやないか?」

 「言われてみると、ベルが少し綺麗になっている気がする」

 

 ガレスさんは発展アビリティに目を付け、ロキ様がなんとなく効果を考え、アイズは僕を見てそんなことを言う。

 

 自分が綺麗になったかどうかは鏡を見ないと分からないな。

 

 「でも、ベルだよ?」

 「ベルだしね」

 「ベルだぞ?」

 「ベルたんやからなぁ」

 「な、何? 一体?」

 

 突然、みんなが僕だからと言って頷き合っている。何のことだろうか?

 

 「「「「「確実に何かある」」」」」

 「え〜」

 

 一体僕はどんな目で見られているんだ?

 

 「僕としてはアイズのステイタスが気になるんだけど?」

 「ベルは見ちゃ、メッ! だよ?」

 「やっぱりか・・・」

 

 実はアイズは僕にステイタスを見せたくないらしい。まぁ、普通は同ファミリアでも他人にステイタスは見せないものだが。

 

 とりあえず、アイズが見てはいけないと言っているから、僕は先に自分の部屋に戻るとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ん。ロキ、お願い」

 「おお、分かったで〜」

 

 私はベルを部屋から追い出して、ステイタスの更新をする。

 

 「ほい、これがレベル2の最終ステイタスやで〜」

 

 

 

 

 アイズ・ヴァレンシュタイン Lv.2

 

 『力』 SSS 1192→1296

 『耐久』 SS 1082→SSS 1211

 『器用』 SS 1097→SSS 1256

 『敏捷』 SSS 1245→1367

 『魔力』 SS 1094→SSS1248

 

 精霊 H

 

 《魔法》

 【エアリエル】

 ・付与魔法

 ・風属性

 ・詠唱式『聖なる風よ(テンペスト)』

 

 【精霊の奇跡】

 ・回復魔法

 ・【エアリエル】発動時、効果上昇

 ・詠唱式『母なる風よ、どうか私に力を貸して』

 ・自分が最も愛する者の為に使用する時、蘇生魔法に変化可能

 

 《スキル》

 【精霊姫】

 ・怪物種に対しアビリティ超高補正

 ・自身の愛する者の為に戦う時アビリティ超高補正

 ・自身の愛する者と魂を繋ぐ

 

 【英雄王妃】

 ・早熟する

 ・想いが強くなる程効果上昇

 ・自身が最も愛する者といる時想いはさらに強くなる

 

 

 

 

 

 「アイズたん・・・。どんだけベルたんが好きなんや・・・」

 「ん。言葉で表現できないくらい」

 「事情は把握しているが、見た目7歳の少女が女の顔をしていることに複雑な気持ちだ」

 

 私は普通のことを言ったつもりだけど、何でリヴェリアが複雑に感じるのだろうか?

 

 「それで? 新しいステイタスは?」

 「ああ、うん。これやで」

 

 

 

 

 アイズ・ヴァレンシュタイン Lv.3

 

 『力』 I0

 『耐久』 I0

 『器用』 I0

 『敏捷』 I0

 『魔力』 I0

 

 精霊 H 聖風 I

 

 《魔法》

 【エアリエル】

 ・付与魔法

 ・風属性

 ・第一詠唱式『聖なる風よ(テンペスト)』

 ・第二詠唱式『白く輝け(クラネル)』

 ・第二詠唱式により出力増大

 

 【精霊の奇跡】

 ・回復魔法

 ・【エアリエル】発動時、効果上昇

 ・詠唱式『母なる風よ、どうか私に力を貸して』

 ・自分が最も愛する者の為に使用する時、蘇生魔法に変化可能

 

 《スキル》

 【精霊姫】

 ・怪物種に対しアビリティ超高補正

 ・自身の愛する者の為に戦う時アビリティ超高補正

 ・自身の愛する者と魂を繋ぐ

 

 【英雄王妃】

 ・早熟する

 ・想いが強くなる程効果上昇

 ・自身が最も愛する者といる時想いはさらに強くなる

 

 

 

 

 

 「・・・あまり変わらない」

 

 私が新しいステイタスへの不満をボソッと言うと、

 

 「いやいやいや、エアリエルの強化はかなり凄いと思うで!?」

 

 ロキは慌てて、私にフォローを入れてくる。

 

 「そうだぞ? 出力増大としか書いてないが、お前の風は元々が強いんだぞ? どの程度かは分からないが、お前の想いの結晶でもあるんだ。とんでもない性能を秘めていると私は思うが?」

 「・・・うん。私が信じてあげなきゃダメだよね」

 「そうやで? もちろん、ウチらもアイズたんの事は信じとる。でもな、やっぱ、自分が一番自分のことを信じてあげないといけないんや」

 「うん。ありがとうロキ」

 

 そうだよね。ベルは自分の力を信じて、今まで戦ってきていたんだよね。それが全て強さに結びついているわけじゃないけど、ベルの純粋な想いが『私だけの英雄』に繋がった。そう考えると、自分を信じるというのは忘れてはいけないことだと思う。

 

 「ぐへへ〜! 素直なアイズたんもええなぁ!」

 「変なことしたら、斬ります」

 「アッハイスミマセン」

 「全く。お前も懲りないな」

 

 やれやれと言った風にリヴェリアは首を振るが、内心では絶対に懲りることはないのだろうなと思っている。

 

 「じゃあ、ベルのところに行ってくる」

 「待て」

 「ムギュッ」

 

 私はベルの所に行こうとすると、リヴェリアに捕まった。

 

 一体、何のようなのだろうか? 私は早くベルの下に行きたいのだが。

 

 「アイズ。お前、ベルに回復薬の口移しを頼んだそうだな?」

 

 ビクッとアイズの肩が跳ねた。

 

 「ナ、ナンノコトカ、ワタシ、ワカラナイ」

 「惚けても無駄だぞ? ベルに相談されたからな」

 

 ベル!? 何でリヴェリアに言ったの!?

 

 「さて、お前の中身はもう既に立派な淑女なのだろう? そんなお前がいくら、ベルのことが好きとはいえ、限度はあるはずだろう?」

 「うっ」

 「よし。お前は今から説教だ」

 「えぅっ」

 

 しっかり捕まっているから、全然逃げられない!

 

 この後、少女は保護者にこってりと絞られ、翌朝でベルに止めてもらうまで続いたのだった。


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