白兎は理想を抱え、幻想へと走る   作:幻桜ユウ

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第八話

 

 

 

 僕とアイズのランクアップ記念に『黄昏の館』で宴をすることになった。お母さんも招待されて来ている。

 

 だがもちろん、僕もアイズもお酒は飲めないので、普通の果実水を飲むことになる。

 

 すると、ロキ様が開始の合図した。

 

 「それじゃあ始めるで! ベルたんとアイズたんのランクアップおめでとうーー!! かんぱーい!」

 「「「「「かんぱーい!!!」」」」」

 

 コーンコーーーン!!

 

 「ゴクッゴクッ、プハーー! いやー! ベルたん達の手前、飲酒は遠慮してたけど! 久しぶりの酒は美味いわーー!」

 

 ロキ様はグラスに入ったお酒を一気飲みし、久しぶりに飲んだ酒に感動している。

 

 正直、ダメな人しか見えない。リヴェリアさーーお姉ちゃんに怒られるよ?

 

 チョビチョビと果実水を飲みながら、そう思う僕。

 

 すると、隣に座るお母さんが僕の頭を撫でながら話しかけて来た。

 

 「レベル3おめでとう。ベル。無理はしてない? どこか怪我したら私に言うのよ。しっかり治すからね」

 

 レベル5の回復魔法か〜。『戦場の聖女(デア・セイント)』のアミッドさん以上はあるだろうなぁ。アミッドさんはまだオラリオに来ていないから、僕はお母さんに回復を頼んでいる。リヴェリアお姉ちゃんも回復はできるけど、僕にかかりっきりなのはまずいためという理由もある。本人は「ベルが一番大事だ!」なんて言っていたけど、ファミリアの副団長なのだから、団員も見てあげて欲しい。

 

 「ありがとう。お母さん。その時はお願い」

 「ええ。任せなさい。『精癒』も持っているから、精神力の心配は要らないわよ。ドンドン来なさい」

 「いや、そもそも、ドンドン怪我するような事態は起きてほしくないんだけど」

 

 僕は苦笑いしながら、そう返す。お母さんは「それもそうね」と言った。しかし、願っても勝手に来るからな〜。そういうことって。 

 

 僕はこの先に起こる事に自分の記憶を整理しながら遠い目をせざるをえなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして数分後、僕に全く予想だにしなかったことが起きた。

 

 「お母しゃ〜ん。頭もっとなでて〜」

 「あらあら。ベルったら甘えん坊さんね〜。よしよし」

 「えへへ〜」

 

 酔いました。

 

 ええ、お酒を飲んでないのに酔いました。

 

 雰囲気で酔いました。

 

 結構油断してました。

 

 ベルは普段人に甘えたい欲求がかなりありますが、そこは前世と前前世の記憶を持っていることにより、自制できていました。しかし、酔うと、自制が外れて、あら不思議、押さえつけられた甘えたい欲求が解放されます。よってこの状況が作り出されました。

 

 「お母しゃ〜ん。だいすき! ずっとあいたかったよ〜」

 「ごめんねベル。でも、お母さんはこれからずっと貴方のそばにいるわ」

 「えへへ。やった〜! ずっといっしょにいようね〜」

 「ええ、ずっと一緒よ」

 

 ベルの甘え全開状態にメーテリアは口がにやけそうな衝動を抑えながら、なんとか対応する。

 

 正直、全然抑えられていない。

 

 すると、ベルは撫でられるだけじゃ、飽き足らないのかメーテリアに抱きついた。ちなみにアイズは静観している。アイズは『精霊』のアビリティと精霊の血の共鳴のおかげで状態異常には強いのだ。ベルは唯一打ち消せる『純粋』を持っているが、I程度ではたかが知れているのである。

 

 ベルは5歳児だし、仕方ないよネ!

 

 「お母しゃん。お母しゃん」

 「どうしたの? ベル」

 「あのね。お母しゃんむりしてないかなって。しんぱいだから」

 「っ!?!? だ、大丈夫よ! お母さんレベル5で強いのよ?」

 

 ベルのナチュラルあざとさ(フレイヤ様命名)のかわいさにメーテリアが口を押さえながら、必死ににやけないように奮闘している。

 

 しかし、先程から何度も言っているが、全然隠せていない。

 

 「ベル。次はリヴェリアお姉ちゃん所に行って来なさい。私はちょっと休憩するわ」

 「あーい」

 

 ベルは長椅子から降り、斜向かいに座っているリヴェリアの下までトテトテて歩いて行った。

 

 この様子には他の団員達もお酒を飲むのを抑えて、代わりに鼻血が出ないように鼻を押さえていた。

 

 宴はまだまだ続く・・・

 

 

 

 


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