『やめてくれ!こんなことに付き合う必要はない!』
『ロンド・ベルだけにいい思いはさせませんよ!』
『地球がダメになるかならないかなんだ、やってみる価値ありますぜ!』
──宇宙世紀0092に始まった第二次ネオ・ジオン抗争。
その終結は一機のガンダムが放ったサイコ・フレームの光によりアクシズを押し返した事によるジオンの作戦失敗で終わった。
サイコ・フレームの輝きによって共鳴した人の思い。
その輝きは別世界でさえも届きうる物だった。
「ん?なんだあの光?エジプトで祭りでもやってんのか!?ウオオオオオオ!!燃えてきたぜ!!アタシもURA優勝して記念にブラジルまで飛んでやらぁ!!」
唯一その光を目撃したのは葦毛のウマ娘のみであったが、この出来事をきっかけとして運命はねじ曲がる。
『さあ残り400、先頭に立つウマ娘は彼女のみ……!?最後尾から上がってきましたゴールドシップ!!物凄い速さだ!!』
『なんだこの速さは!!一着ゴールドシップ!!差は…なんと16バ身!!!?URAファイナル、初代王者にして伝説を作ってしまいました!!』
黄金の船は史実とは外れた運命の波を漂っていく。
─決して沈む事なく、ただ前に進み続けて。
アクシズショック。
それは、人類全体が共有した思いがサイコ・フレームを寄り代として地球に落下するアクシズを押し返した現象。
サイコ・フレームから放たれた光は、人を繋ぎ、魅了した。
それは別世界の人類……いや、ウマ娘でも例外ではなく……
「よし、今から朝まで海釣りだぜ!!エビで鯛釣るどころかリュウグウノツカイ釣れちゃうアタシには楽勝モン、釣りすぎてリリースしちまうレベルで釣りまくってやるぜェ~!!!」
ドでかい釣り竿を担ぎ、夜の砂浜に立つ1人のウマ娘。
彼女の名はゴールドシップ。
希代の癖ウマ娘の名を欲しいままとするとんでもないウマ娘である。
そんな彼女はいつもの気まぐれによって海まで釣りをしに来ていた。
静かに立つ波。蹴りあげるとパシャンという音と共に周りが波立ち、水しぶきが上がる。
雲一つ無い夜の空に浮かぶ月は玉座に座る王の様に堂々と佇んで、星はその月を讃えるかのように自己主張せず光っていた。
波止場に着いた彼女は黙々と釣りの準備を進める。
ゴールドシップ自身騒がしいという自覚はある。
トーセンジョーダンがこの場に居るならば釣りの準備なぞほっといて問答無用で蹴っとばしに行くのだろうが、今回は1人だ。誰も聞かない独り言をダラダラと話すよりかは黙って早く釣りを始めた方が結果的には楽しめる時間は増える。
不意に空を見る。
そこには日本だけでなく世界でもあり得ない規模のオーロラの様なものが空を包んでいた。
「ん?オーロラか?でっけーなー………。そうだ、マックイーン辺りにこの写真送ってアラスカに居るって嘘ついて騙せるか試してみっか!」
興味本位からか、写真を撮ろうとスマホを出そうとすると、
「ッ!?」
オーロラの様なモノから何かが彼女に流れ込んでくる。
三女神像を介しての因子継承で自身に力が流れ込んでくる感覚は忘れていないものの、それとは決定的に違うモノが少なからずあった。
温かく、そして優しい。
因子継承によって流れ込む荒々しい力と思いとは違う、見守られているような、包み込む思い。
そして彼女自身、見たこともない光景が脳内でフラッシュバックする。
暗い宇宙の海。
その中を泳ぐロボット。
知らない兵器を駆使し、ロボットがロボットを撃墜していく。
血で血を洗う様な凄惨な光景。
地球に落ちてくる隕石。
無謀にもそれを押し返そうと隕石に取りつくロボットたち。
一機の白いロボットから放たれた、さっき見たオーロラの様なモノ。
それが隕石を包み、地球への進路を逆にし、押し返されている。
流れゆく人の思い。
それをオーロラの様なモノごしに感じ取った彼女は何か漲っていた。
「ふーん……隕石をねぇ………アツくさせてくれんじゃねーの。アタシは勝つ。勝ちまくって、最高に楽しんでやる。」
そんな些細で、軽い決意。
それ一つで彼女を取り巻いていた史実という運命が霧散し、消え去った。
この先の運命の輪から抜けだした彼女がどうなったかはわからない。
だが一つだけ言える。
彼女はあの日見た光以上の輝きで人々を繋ぐ、夢の様なウマ娘になったのだ。
閃ハサ早く観たいです。