王者の鼓動、今ここに列を成す   作:小金さん

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前回同様、プレイミスなどありましたらこっそりと指摘いただければと思います。
いったい何の作品書いてたんだっけ?となったので投稿です。
 
 


クラシック級/9月前半:魂と可能性

「俺のターン、ドロー!」

 

 遊星LP4000 SC2  ジャックLP4000 SC2

 

 カードをドローし、併走するキングヘイローをそっと観察する。

 動揺はあったようだが気持ちはまるで萎えていない。

 その様子を見て一度頷く。

 

 気持ちが強い。いい女だ。

 

「遊星さん?」

「な、なんだスズカ」

「いいえ、何でもないですよ、ふふっ」

 

 心なしか腹部に回された腕の締め付けが強くなった気がする。

 だが何でもないというからには何でもないのだろう。

 そう判断してもう一度盤面を見渡した。

 

 ジャックの場には攻撃力2800のクリムゾン・ブレーダーと攻撃力2400のレッド・ワイバーンが並んでおり、伏せカードはない。

 逆転してみせただけでも充分凄いが、いつものジャックならばさらに伏せカードを用意していたはず。

 それは先ほどの会話からも伺える。

 

 最初のターン、実はジャックから頼まれていたことがあった。

 それは“分かりやすく強者であることをアピールして欲しい”というものだ。

 キングヘイローへ圧力をかけたかったのだろう。

 その要望に応えるため、慣れない一ターン目からの仕掛けを行った。

 

 そしてその結果があれだ。

 己の未熟を晒されてもなお戦うことを諦めていない。

 彼女のレースを見てみたいと改めて思った。

 

「……俺は手札からSp-スピード・エナジーを発動。

 ターン終了時までジャンク・バーサーカーの攻撃力をSCの数×200ポイントアップ!

 バトル、ジャンク・バーサーカーでクリムゾン・ブレーダーを攻撃!」

「くっ……仕方あるまい」

 

 ジャックLP 4000→3700

 

「裏守備モンスターを召喚してターンエンドだ」

 

 焦ることはない。ここは一息入れよう。

 そんな遊星の言葉が聞こえてくるような立ち回り。

 冷静な判断にキングヘイローも思わずうなる。

 

「意外ね、一ターン目の動きからしてもっとガツガツ来るかと思ったのだけど」

「奴は焦る必要がないからな。SCが四つを超える次のターンから本腰を入れるつもりだろう」

「なら焦らせてやればいいのよ、私達のターン! ドロー!」

 

 遊星LP4000 SC3  ジャックLP3700 SC3

 

 意気揚々と引き込んだカードを見てキングヘイローは満面の笑みを浮かべた。

 いいカードが引けたと誰が見ても分かる無邪気っぷりである。

 

「ふん、手札からフォース・リゾネーターを召喚。そしてそのままレッド・ワイバーンとチューニング!

 王者の鼓動、今ここに列をなす。天地鳴動の力を見るがいい! シンクロ召喚!

 我が魂、レッド・デーモンズ・ドラゴン!」

「来たか」

「まぁ、おっきい」

 

 巨大な竜がジャックの背後に現れ、熱波が周囲を舐め尽くしていく。

 それはソリッドビジョンだと分かっていても熱さを感じさせるものがあった。

 ジャックの誇る絶対的エースモンスターの招来である。

 

「とは言え、くず鉄のかかしがあると分かっている以上、攻撃は無意味。

 俺はカードを一枚伏せてターンを終了する」

「ならば、俺のターン!」

 

 遊星LP4000 SC4  ジャックLP3700 SC4

 

「俺はジャンク・シンクロンを召喚!

 このカードは召喚に成功した時、墓地のレベル2以下のモンスター一体を特殊召喚する!

 チューニング・サポーターを特殊召喚!

 裏守備モンスターを反転召喚し、このジャンク・ブレイカーとチューニング・サポーターにジャンク・シンクロンをチューニング!

 集いし願いが新たに輝く星となる。光さす道となれ! シンクロ召喚!

 飛翔せよ、スターダスト・ドラゴン!」

 

 涼風と共に現れるのは遊星のフェイバリットカード。

 今ここが高速の最中だということを忘れさせてくれるような優しい風を纏っていた。

 マイフェイバリットが側にいる安心感をどことなく感じつつ、遊星は伏せられたカードを読む。

 攻撃も出来ない状態でわざわざレッド・デーモンズ・ドラゴンを召喚した以上、サポートカード……それも専用サポートカードである可能性が高い。

 

 迷いは禁物、か……。

 

「チューニング・サポーターの効果によりドローし、ジャンク・バーサーカーの効果を発動!

 墓地にあるジャンク・ブレイカーを除外し、レッド・デーモンズ・ドラゴンの攻撃力をジャンク・ブレイカーの攻撃力分下げる!」

 

 レッド・デーモンズ・ドラゴン 攻撃力3000→1200

 

「永続罠発動! スクリーン・オブ・レッド!

 このカードが存在する限り、貴様は攻撃宣言が出来ぬものと知れ!」

「やはり……! だがこいつは受けてもらう!

 Sp-ソニック・バスター! SCが四つ以上ある時に発動することができ、自分フィールド場モンスターの攻撃力の半分をダメージとして与える!」

 

 対象はもちろんジャンク・バーサーカーだ。

 攻撃力は2700、その半分の1350がジャックにダメージとして与えられる。

 

 ジャックLP 3700→2350

 

「ぐっ」「きゃあ!」

 

 転倒しないように耐えながらもキングヘイローは冷や汗を感じずにはいられなかった。

 攻撃を防げたと思ったらすぐに効果ダメージを差し込んでくる。

 油断も隙もあったものじゃない。

 それに、もし先ほどのターンにスクリーン・オブ・レッドを引けていなければ大量の戦闘ダメージと合わせて負けていたと知ったその衝撃は大きい。

 

 本当にこの人、強い……!

 

「一枚伏せてターンエンドだ」

「でも、負けるつもりはないわ! 私達のターン!」

 

 遊星LP4000 SC5  ジャックLP2350 SC5

 

 キングヘイローの気概にデッキが応じたのか、引き込んだのはチューナーモンスター。

 それを見ると同時にキングヘイローは自分の体が熱くなるのを感じていた。

 先ほど感じた冷や汗が一気に蒸発していくような熱さだ。

 しかしよく熱源を辿っていけば熱くなっているのはキングヘイローではないことに気付く。

 そう燃えているのはその背後にいる男。

 ジャック・アトラスの鼓動が燃えていた。

 

「よくぞ、よくぞ引き込んだ! それでこそだキングヘイロー!」

「なになに!? え、ちょっとトレーナー、貴方すっごく熱いんだけど!?」

「この俺の熱き魂が伝わるか!」

「めっちゃ伝わってるわよ! 首の辺りからめっちゃ伝わってるから!」

 

 またしてもぎゃあぎゃあと騒ぎ始める二人をサイレンススズカは不思議そうな目で見ていた。

 何をそんなにはしゃいでいるのだろう、とでも言ったところだろうか。

 

「スズカも感じたことがあるはずだ、アレが来るぞ」

「あれ?」

 

 疑問に首を傾げたが答えはすぐに来た。

 疾走するDホイールの風を吹き飛ばすほどの熱が来る。

 この迸るプレッシャーは遊星の言うようにサイレンススズカにも心当たりがあった。

 都合二十回。

 脳裏をかすめたのはキングヘイローとのレースで感じたあのプレッシャーだ。

 だが、あれとは比べるまでもないほどジャックの圧力は暴力的で思わず遊星に抱きつく腕に力がこもる。

 

「なんて、プレッシャー……!」

「あれこそ、バーニングソウル!」

「そう! これこそ我が魂の燃焼!

 俺は手札からシンクローン・リゾネーターを召喚!

 そしてスクリーン・オブ・レッドの第二の効果を発動、スクリーン・オブ・レッドを破壊して墓地からレベル1のチューナーモンスターを特殊召喚!

 甦れ、チェーン・リゾネーター!」

 

 そして場に出揃ったのは二体のチューナーとレッド・デーモンズ・ドラゴン。

 だが遊星はそこよりも合計レベル10という事実に眉を顰める。

 

 スカーレッド・ノヴァ・ドラゴンではないのか?

 

「遊星よ、我が新たなる力への拝謁の権利を貴様にくれてやる!」

「あ、それ私のセリフよ!」

「我が魂、レッド・デーモンズ・ドラゴンにシンクローン・リゾネーターとチェーン・リゾネーターをダブルチューニング!」

「ダブルチューニングですって!?」

 

 いつまでも騒がしいコンビである。

 しかしいつだってリアクションを忘れないキングヘイローも肩を叩かれてリアクションが止まった。

 いや、叩かれたのは肩ではない。

 ジャックが叩いたのは己の心臓だ。

 熱い熱いと思っていた体がさらに熱を持つ。

 押し付けられた肩が焼けるようだ。

 

「んっ、熱い……!」

「王者と悪魔、今ここに交わる。赤き竜の魂に触れ、天地創造の雄たけびをあげよ! シンクロ召喚!

 現れろ! レッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラント!」

「レッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラント!?」

 

 見たこともないシンクロモンスターに遊星が驚きの声をあげた。

 先ほどのレッド・デーモンズ・ドラゴンの正当進化系であることが一目でわかるデザイン。

 そしてそのプレッシャーはスカーレッド・ノヴァ・ドラゴンとそん色ない。

 

「シンクローン・リゾネーターが場を離れたことで俺は墓地のチェーン・リゾネーターを手札に加える。

 そしてバトルだ! ジャンク・バーサーカーを攻撃! 獄炎のクリムゾンヘルタイド!」

「罠カード発動、くず鉄の―――」

「無駄だ! レッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラントはバトルフェイズ中に発動された魔法・罠カードの効果を無効にして破壊し、さらに攻撃力を500上げる!」

 

 攻撃力4000となった焔がジャンク・バーサーカーに襲い掛かる。

 立ちはだかったかかしごと吹き飛ばされ、遊星のDホイールがバランスを崩す。

 だが慌てずに立て直した遊星の瞳には強い光が宿っていた。

 

 遊星LP 4000→2700

 

「さぁ、来い遊星!」

「ああ、俺のターン!」

 

 遊星LP2700 SC6  ジャックLP2350 SC6

 

 場に残っているのはお互いモンスターカードが一枚ずつ。

 そしてこちらには伏せカードが一枚。

 仕掛けどころだ。

 そう判断し、遊星は魔法カードを発動させる。

 

「Sp-エンジェル・バトンを発動、手札を一枚捨てて二枚ドロー。

 墓地に送ったジェット・シンクロンの効果発動、手札を一枚捨てて特殊召喚!

 さらに手札からSp-ヴィジョンウィンドを発動、墓地のチューニング・サポーターを特殊召喚!

 この二つをチューニング!」

「レベル1と1でチューニング?」

「レベル1のシンクロモンスターも存在するぞ」

「え゛!? どういうこと!?」

 

 もはや漫才に近い何かを無視して遊星は処理を行っていく。

 

「集いし願いが新たな速度の地平へ誘いざなう。光さす道となれ! シンクロ召喚!

 希望の力、フォーミュラ・シンクロン!

 チューニング・サポーターとフォーミュラ・シンクロンの効果で俺は二枚ドロー!」

 

 今までの流れからこれはまだ続くなと感じたキングヘイローはまじまじと盤面を見つめている。

 そしてフォーミュラ・シンクロンのシンクロチューナーという特性に首を傾げた。

 

「ねぇ、トレーナー、これって……」

「そして罠カード、エンジェル・リフトを発動。

 墓地に眠るチューニング・サポーターを特殊召喚!」

「せめてゆっくり眠らせてあげて!」

 

 寝る暇もねぇ!とばかりにチューニング・サポーターが天より降り立ち、キングヘイローは疑問も投げ捨ててツッコミに回る、

 でぇじょうぶだ、これで出番も終了だ。

 

「手札からターボ・シンクロンを召喚し、チューニング・サポーターとチューニング!

 漆黒の翼羽ばたかせ秘めたる刃で風を切れ! シンクロ召喚!

 飛来せよ! A BF(アサルトブラックフェザー)-雨隠れのサヨ!」

「BFだと!?」

 

 驚くジャックへニヒルな笑みを浮かべて遊星は加速する。

 連続コーナーが迫るも彼は気にしない。

 いっそ鮮やかすぎるほど華麗にコーナーを抜けていく。

 

「ウソでしょ……」

「奴め、クリアマインドの先を求めるか……!」

 

 遊星の技量と突っ込める狂気にキングヘイローは言葉をなくし、ジャックは遊星がサイレンススズカに求める期待の高さに半ば呆れてもいた。

 

 ジャックが遊星に一ターン目から動けと要求したように遊星もまたジャックに求めていたことがある。

 それはアクセルシンクロの機会を作ることだ。

 生半可な相手ではそこまで持ち込むことなく勝負がついてしまう故の要求であり、ジャックもまた拒否する理由を持たなかったので加速に割り込むことはしなかった。

 

 それでも、そこまでやるかという思いは隠せない。

 なぜだかトレーナーとして敗北感を味わうジャックであった。

 

 

 

 

 

     _____ヘイロー―――――

 

 

 

 

 

「スズカ、キミにこの光景を見せたかった」

「素敵、景色がスピードの中に溶けていく……」

 

 クリアマインド。

 二人は今、まさに“そこ”にいた。

 サイレンススズカの言うように景色が溶けていき、光の中をDホイールが往く。

 まとわりついていたはずの風もいつしか消え去っており、ここは静寂が支配していた。

 

「クリアマインド……キミにはまだ早い、これを成せば体が壊れてしまうだろう。

 それでも、この世界を見ることは無駄ではないと思った」

 

 嘘偽りなく、ここは二人だけの世界だった。

 ともすれば着ている服さえないような、超感覚の世界。

 スピードのその向こう側にこれほど素敵な世界があるのだとサイレンススズカは知った。

 それが大事なのだと遊星は言う。

 

「いつかキミはこの世界へと己の足で辿り着くだろう。

 その時、どうか迷わぬように……スズカ、俺がキミの道しるべになる」

「道しるべ、ですか?」

「ああ、ここは限界の先の世界。だが世界の果てはここじゃない」

 

 手を取り合い、抱き寄せ、抱き寄せられ。

 二人は微睡むように瞳を閉じる。

 

「限界の先の、さらにその先……これがトップ・クリアマインド」

 

 例え独りでここに来たとしても迷うことはない。

 先で待っている。

 先への行き方を教える。

 だから、先へ。

 

 

 

 

 

     _____ヘイロー―――――

 

 

 

 

 

「集いし星が絆を紡ぎ、祈りと共に未来へ駆ける。光さす道となれ!

 デルタ・アクセルシンクロォッ!!!」

 

 加速して消えていったはずの遊星たちが突如として現れる。

 まるで空間を切り裂いたような歪みの中、それらを切り裂いて直進する遊星を先導するのは未知の竜。

 

「招来せよ、コズミック・ブレイザー・ドラゴン!」

「ふ、ふふふ、ふはははっははは!! それでこそだ、遊星!!」

 

 ジャックが進化しているように、あるいはそれ以上の進化を見せつけるのがこの男だ。

 一歩先へ、弛まぬ進化への渇望。

 これこそが遊星という男の在り方だった。

 そうして辿り着いたのが“辿り着くはずだった進化の可能性の一つ”であるコズミック・ブレイザー・ドラゴンである。

 

 絆の力とは異なる力、しかしそれも掴めば新た可能性が開けよう。

 何一つ無駄ではないし、無駄にはしない。

 無駄なカードなど一つもないのだから、絶望の向こう側で掴んだこの可能性(カード)だとて無駄にはしない。

 この召喚にはそんな意思が込められていた。

 

「バトル!」

「受けて立つ!」

 

 そして互いのモンスターがぶつかり合う。

 衝撃が世界を揺らした―――

 

 




中途半端なところで終わりですが、デュエル自体もここで終了してトレセンに帰宅しましたとさ。
クリアマインドとバーニングソウルを体感させたかっただけなので決着をつける気がさらさらないためです。
(そもそも決着付けるならキングヘイローにドローさせてません)

書いてて痛感したのはこのレベルのバトルに素人(キングヘイロー)を参加させるのは二度と止めようということです。
ヘイローのカード引き強すぎると「強すぎじゃね?」ってなるし、弱すぎると一方的な展開になりすぎるので何度バトル構成を書き直したか……。
ということで次回からはプリティーにダービーするゲームに戻ります。


次回、『一杯3000円!? ブルーアイズマウンテン登場!』にアクセラレーション!
 
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