すごく今更ですけど独自解釈ありのタグ付けた方がいいんですかね?
といった感じの内容を投稿です。
クラシックを制覇したキングヘイロー、次の目標はスプリントチャンプ!?
ターフを走る者すべてがライバル! 狙うは全階級制覇!?
真のキングは私だ! 王、前人未踏への挑戦!!
勝利した暁には長中マイル短距離無敗マスターキングを名乗ってくれるわー!!
出るわ出るわ、トゥインクルシリーズの記事はキングヘイローの話題であふれかえっている。
それは先日行われた記者会見でキングヘイロー自身が放った言葉が原因だ。
菊花賞を制した彼女はその場での記者会見を体調不良で辞退。
改めて開かれた記者会見、今後はステイヤーとして長距離路線で活躍するのかと聞かれた彼女はこう答えた。
「次の目標は高松宮記念よ」
長距離でようやく掴んだトロフィー縁を撫でながらの言葉である。
高松宮記念は言わずと知れた短距離のG1レースだ。
今まで短距離に出場したことさえない彼女がどこまで活躍できるのか未知数と言っていい。
今回の菊花賞を取るまではマイラーと思われていたキングヘイローなので全く通用しないということはないだろうが、それでもG1という舞台はあまりに荷が勝ちすぎているように思えた。
そんな取材者たちを前に高らかに宣言する。
「それだけじゃないわ。
去年の忘れ物、安田記念もいただくつもりよ?」
ざわめく彼らをおいてキングヘイローは上機嫌にトロフィーの縁を撫でている。
蠱惑的に歪む唇をチロリと赤い舌が濡らした。
「私はワガママなの。
せっかく菊の花をいただいたことだし、並べるための秋の盾も欲しいわ」
盾とは即ち天皇賞のトロフィーのこと。
ここまで来ると取材者たちはむしろ静まり返っていた。
長距離を制した彼女が短距離、マイル、そして中距離のG1レースを狙うというのだ。
大胆発言にもほどがあるというもの。
どの距離でも勝てるというのは、ともすれば他の全選手を愚弄する発言とも取れてしまう。
これでもし高松宮記念を落とせば道化では済まない。
この一件が忘れ去られるまで裏通りを歩くことすら苦労するだろう。
今回の取材はそれなりの騒動となり、数時間後には中央レースファンの間に知れ渡ったという。
_____ヘイロー―――――
「これがキングの王道よ、か……滅茶苦茶やるねー」
「す、すごい、です……」
そこはセイウンスカイの寮部屋。
ネコのぬいぐるみを胸元に置いてベッドに横たわるセイウンスカイは携帯を眺めながらぼやいた。
そんな彼女に膝枕をしているニシノフラワーもまた自分の携帯で記事を読んでいる。
掲示板などでも盛大に報じられ、叩いたり叩かれたりの大騒ぎだ。
ネットの中ではこの話題で持ちきりである。
叩いてる側は“ふざけてる”とか“他の選手への冒涜だ”とか“調子に乗りすぎ”とかだいたいそんな感じ。
擁護してる側は“ビッグマウスはこれぐらいでないと”とか“このお嬢様面白いから好き”とか“菊花賞取れたからってはしゃいじゃってるの可愛い”とか、どうでもいいから好き勝手言ってるだけだ。
本気に受け取った側が怒っていて、冗談の類や実力が伴ってないと感じている側が茶化しつつも受け入れている状況。
共通しているのはどちらも彼女を応援していないところだろうか。
「……ホント、苦労を買うのが好きなお嬢様だよ」
だからこそ彼女の実態を知る人こそ応援したくなる、そんな少女だった。
実際ネットでは盛大に叩かれているがトレセン学園では好意的に受け入れられている。
それもこれも話を聞いたシンボリルドルフがわざわざ駆けつけ、その挑戦、受けて立つと言って握手を求めていたためだ。
学生のトップが受け入れたという噂が浸透してからは表立った陰口もなくなった。
基本に立ち返っただけとも言う。
つまり、レースで思い知らせるだけだ!と……まぁ、そういうことだ。
ターフを走る者すべてがライバル!という見出し、これが今のところガチになったというだけのこと。
そんなキングヘイローを想い、セイウンスカイが心配そうにしているのを眺めてニシノフラワーは複雑な気持ちだった。
言葉にするのなら“またあの人を見ている”とかそんな子供じみた感情だ。
嫉妬するのも良くないという思いからその感情に蓋をする。
大丈夫、この程度ならもれたりしない。
「でもさ、気がかりなのはフラワーを意識してることなんだよね」
セイウンスカイの言葉にニシノフラワーはびくりと反応した。
膝枕をされているセイウンスカイがその反応に気付かないわけがない。
「“高松宮記念最大の強敵であるサクラバクシンオー選手に対して一言お願いします”」
つらつらと記事の一説を読み上げる。
ちらーっと顔を下から伺ってみるとニシノフラワーは両手で顔を隠していた。
首筋まで真っ赤に染まっているので赤面しているのは隠せていない。
照れるフラワーは可愛い、セイちゃん覚えた。
「“私にとって最大の強敵はサクラバクシンオー先輩じゃないわ”」
「も、もうやめてくださいっ」
「“ニシノフラワー、小さくも華麗な天才よ”」
「ひゃー!!」
小さくも華麗、という言葉がセイウンスカイから飛び出して来たのでニシノフラワーがダウンした。
ネコのぬいぐるみにポスンと埋まる音が聞こえる。
その状態でもじもじされると太股という名の枕が揺れるのでちょっと落ち着いてもらいたいセイウンスカイだった。
「でもどうせならキングさんの声マネじゃなくてスカイさんの地声で言って欲しいです」
「おっ、欲しがるねー?」
「スカイさんの声マネ上手すぎて本当にキングさんに言われてるみたいでしたし……」
それはそれで充分恥ずかしいのだが、恋する乙女としてはやはり好きな人の声で聴きたいものなのだ。
仕方ないなぁ、とぼやきながらセイウンスカイは体を起こした。
ドキドキと期待して待っているニシノフラワーの顔にさっきまで抱いていたぬいぐるみを押し付ける。
「ひゃあ!?」
直前にいたずらっぽい笑みを浮かべたので何か来るとは思っていたが視界が封じられて驚きの声があがった。
しかも胸いっぱいにセイウンスカイの匂いが飛び込んでくるおまけ付き。
ぬいぐるみに残るぬくもりもなんだか気恥ずかしい。
そんな思考の横道に入ったニシノフラワーの耳元に吐息が来た。
びくりと全身が固まる。
プルプルと緊張に耳が震えている。
「私にとって君は花より可憐で、香しい存在だよ」
「~~~~ッ!」
その言葉が耳朶を打つ。
差し込まれた言葉がまるで熱を持って侵入してきたようで頭が沸騰するような感覚にニシノフラワーはゴロゴロと転がった。
声にならない声を顔に押し込んだぬいぐるみに向かって吐き出し、うめく。
どったんばったん。
その様子にさすがのセイウンスカイも額に手を当てて反省のポーズだ。
「あちゃー、やりすぎた」
今は友達以上恋人未満といった関係の二人だ。
こうして他愛ないやり取りも随分増えた。
そしてニシノフラワーが時折このようなワガママを言ってくることがある。
基本的に良い子すぎてワガママを言わない彼女が珍しくも甘えてくる時、セイウンスカイは極力受け入れるようにしていた。
だいたいが甘い言葉の要求だったり手を繋いだりなど、ちょっとだけ恋人っぽいことをする程度のことだ。
叶えるのは訳ない。
問題があるとすればその度にニシノフラワーがいい反応で悶絶するものだからセイウンスカイの悪戯心に火がついてしまうくらいだ。
今回もそれが原因でやりすぎてしまった。
これは一時間くらいゴロゴロしているだろう。
キングヘイローと何があったのか聞くのは難しそうだ。
次からは気を付けないとね。
誰に言うでもなくぼやいてセイウンスカイは椅子に腰かけた。
ベッドは当分ニシノフラワーの占領を許すしかない。
「今夜はフラワーの匂いで眠ることになりそうだ……」
これもまた自業自得である。
_____ヘイロー―――――
「バクシンオー、例のお嬢様について話は聞いてるか?」
「はい! クラスの皆さんに教えてもらいました!」
トレーナーの言葉にハキハキ答えるのはスプリンターの女王、サクラバクシンオーだ。
現在のトゥインクルシリーズの中で短距離最強を一人上げろと言われれば誰もが口をそろえて彼女の名前を挙げるだろう。
それほどまでの実力を誇り、また実績も持っている絶対王者だ。
サクラバクシンオーの驀進を阻んだのは未だクラシック級の幼き天才ただ一人。
それ以外は全てがサクラバクシンオーの下に膝を屈し続けている。
ドリームトロフィーリーグに栄転できていないのは年齢制限に引っかかっているからではないか?などと噂されるほどの実力だ。*1
そんな彼女よりも見るべき相手がいると断言したウマ娘が現れた。
幼き天才ニシノフラワーを倒すべき敵として見ているというのは決して間違いではないだろう。
だがそれはあくまでサクラバクシンオーを倒せるという目算があればこそだ。
「キングヘイローのことはどれほど知っている?」
「まったく!」
「……だろうな」
今までぶつかったこともない相手だから仕方ないとはいえ、話を聞いておいて全く調べなかった神経を疑いたくなるトレーナーであった。
長い付き合いなので細かいことを気にしてもしょうがないと流してタブレットを見せつけた。
「言うだけあって悪くない走りをしている」
「ほほーぅ、確かにラストスパートは中々の伸びですね! 私には敵いませんが!」
「負けんか?」
「はい!」
自信満々に頷くが、無駄に自信にあふれているのがサクラバクシンオーという少女だ。
どこまで信じていいかが難しい。
しかしそのかじ取りを誤らなかったからこそ今の成績がある。
トレーナーは軽く首を振って切り替えた。
「この画像は半年以上前の物だ、今はもっと切れ味も鋭くなっているだろう」
「最近の試合はないので?」
「長距離の一戦のみだ」
「……長距離? マイラーと聞いていましたが?」
本当に何も知らないらしい。
首を傾げる姿は愛らしいが阿呆丸出しで品性がない。
大人の体に子供っぽい中身というギャップも彼女の魅力ではあるがトレーナーはギャップ萌えを理解できない人種だった。
近いうちに矯正しようと誓いつつ事情を話してやる。
「なるほど、つまり私のライバルですね!」
「……どうしてそうなる?」
間違いではないのだがどうにもニュアンスが異なる気がする。
そう感じたトレーナーは一歩突っ込んでみると予想外の返答が来た。
「全ての距離で戦って制覇するというのはわたくしサクラバクシンオーの道と通じています!
つまり彼女もまた学級委員長ということでしょう!
これは負けてはいられません、バクシン! バクシーン!!」
トレーナーは頭を抱えた。
そう、サクラバクシンオーもまた全距離制覇を公言しているウマ娘の一人である。
とはいえ彼女の適正は明確にスプリンターであり、行けてもマイルが限界というのが実態だ。
1800メートルも走れば確実に垂れてバ群に落ちるのが目に見えている。
というかマイルの1600でもギリギリなのだ。
その上、現在のマイルはタイキシャトルとサイレンススズカ、そしてエアグルーヴといった豪傑と……ふらっとやってくる
今期からはさらにグラスワンダーとエルコンドルパサーが参入してくる地獄横丁一丁目だ。
どうしてそんな戦場に飛び込んでいかなければならないのか。
来年はサクラバクシンオーもマイルの本数を減らし、本格的にスプリントに絞り込んでいくというのがトレーナーの描く路線である。
しかし目を輝かせて秋の三冠への参戦を語る彼女をどう説得したものか、頭を悩ませるのであった。
「とにかく今は一年後より半年、そして目の前のことだ」
「そうですね! JBCスプリントを今年も勝ち越して学級委員長の力を生徒の皆さんに示しましょう!
はっはっはっー!」
元より対策を取るという性格のウマ娘ではない。
黄金世代だろうが何だろうが来るというのなら驀進の一撃で突き放すまで。
万全の体調で送り出せば負けないウマ娘だと知っている。
トレーナーはそう結論付けてトレーニングに入った。
_____ヘイロー―――――
「おバカな子ね、とことん自分でハードルを上げるのが趣味なのかしら?
……いいえ、本当は分かっているのよ」
誰もいない執務室で独り呟く女性。
彼女は豊満な体を抱きしめ、ふわふわの髪の毛をくしゃりと握りしめる。
「これは私があの子にかけてしまった“呪い”……本当におバカなのは私なの」
出てきた言葉は懺悔か、それとも後悔か。
「ねぇ、どうして?
どうして私はあの子に
その言葉を聞き届けてくれる相手はいない。
最愛の娘が茨の道を往く。
その根源を与えてしまった己の浅はかさを恨みながらペンを手に取る。
「あの子が自分の適性を無視してまで王道に拘った理由なんて一つしかない!
私があげた名前をあの子が誇りに思ってるから!」
悔み辛みを吐き出すかのようにペンを走らせた。
白い用紙が見る見るうちに衣装のデザインで埋め尽くされていく。
「それで結果を出せたと思ったら今度は自分だけの
ふざけないで! どれだけあの子を縛り付けたら気が済むの!?」
書き連ねた用紙を握りつぶして机に叩きつける。
血を吐くような言葉は全て己に向けたものだ。
そうだとも、彼女は娘を傷つけているのは全て己が端を発していると知っている。
この“呪い”は全て自分の“期待”から始まっているのだ。
だからもう二度とウマ娘として娘を見ないと、期待しないと誓った。
その結果がこれか?
苦痛の果てに待つのは地獄か?
「……もう、いやぁ……私なんてもう死んじゃいなさいよ……ぅぅ……」
泣き崩れる。
髪の毛をかきむしり、机に沈み込む。
素直に娘の活躍を願えばよかったのだろうか。
それは地獄に叩き込むのと同義と知っていても?
結果が変わらないのならば愛した分だけ自分は幸せを享受できる。
でもそれは代わりに娘が潰れるだけだ。
いいや、やはり発端はキングヘイローなどと名付けたことだ。
あれが原因だった。
あれさえなければあの子はきっと―――
もしもあの子がアサカヘイローの名前であったならば。
彼女はあそこまで王道路線に拘らず、もっと早い段階からスプリンターとして活躍できていたかもしれません。
そしてマイナー路線である短距離中心のレースならば親もまた素直に応援できていたかも……。
これはそういうお話。
ぶっちゃけ暗くしだしたら際限ないので次回ははっちゃけ回=デュエル回です。
あの封印が今解かれる!
次回、『その者、ゴルシにつき』にアクセラレーション!