やたら長くなってしまいましたが許してください。
サクラバクシンオー、ニシノフラワー、キングヘイローのトレーナーたちによるそれぞれのスタンスの違いを楽しんでいただければと思います。
「おはようございます! いえ、こんにちはと言うべきでしょうか!
こんにちは! サクラバクシンオーです!!」
「見たかバクシンオー」
トレーナー室に挨拶と共にやって来たサクラバクシンオー。
その元気いっぱいの挨拶を無視して話題を振るのは彼女の専属トレーナーだ。
話題を振ってこそいるが、視線はモニターに釘付けである。
その様子を見て何の話題だったのか察したサクラバクシンオーは腕をピシッと構えてお腹から声を出した。
「いいえ! 府中の桜はまだ咲いてはいないようです!」
「誰が桜前線の話題を振った、オーシャンSだ」
「オーシャン? いえ、見てはいませんが。
それと挨拶はちゃんと返してください」
何度注意しても治らなかった無愛想ぶりに嘆息しつつも彼の横にあったパイプ椅子に座る。
トレーナーがかじりついて見ていたのはオーシャンSであった。
スタート前の様子が映し出されている。
何かと話題にあがっていたような気がするがサクラバクシンオーは大した興味も向けず、日々学級委員長として邁進―――いや驀進に勤しんでいた。
「ふむふむ、皆さん調子もよさそうで……おや、見慣れない顔がありますね」
もはや顔馴染と言っても良いスプリンターたちの中に見知らぬ顔が一つ。
オーシャンSはGⅢの列記とした重賞レースであり、高松宮記念のステップレースの一つともされている重要な一戦だ。
新顔が顔を出すにはあまり相応しいレースとは言えない。
だが新しい風は歓迎しなければならない。
サクラバクシンオーはニンマリと笑みを浮かべて何度も頷いた。
「ライバルが増える、いいことですね!」
「お前が余程キングヘイローに興味がないのは分かった」
「キングヘイロー?」
はて、どこかで聞いたような?
ポクポクポク、チーン。
「ああ! 学級委員長の!」
「学級委員長ではないが全距離GⅠ制覇を宣言したウマ娘だ」
「随分と……見違えましたね?」
「ああ、しっかりと仕上げている。朝日新聞杯とは別人だ」
朝日新聞杯では中・長距離に適した体格だったが、今ではスプリンターに交じっていてもおかしくない程度に仕上がっている。
さすがに短距離一本で来ている生粋のスプリンターと比べれば見劣りしてしまうが、レースの勝者は筋力だけで決まるわけではない。
レース場に立つ資格があると認めたのか、サクラバクシンオーは口を閉じて画面に見入った。
それほど待たずしてレースの準備が整い、いっそあっけないほどゲートが開く。
キングヘイローのスタートは鮮やかなほど巧い。
ハナを取って数秒、逃げを打ったウマ娘に大人しく先頭を譲りながら集団へ。
三位を定位置としてこの集団をコントロールしているように見える。
慣れぬはずの短距離でバ群を支配する。
その様子には王者の風格さえ見て取れた。
だがこれは短距離レース、彼女の支配は長く続かない。
あっという間に終盤に差し掛かる。
こうなれば後はもう思い思いに飛び出してバチバチにやり合うだけ。
中山レース場のゴール前には急な上り坂がある。
好位先行で丁寧に進めてきたキングヘイローだが、パワーに劣るだけ不利か。
そう思っていたはずが、決着は坂に至る前についていた。
最終コーナーの半ばから坂の前までの間に抜け出したキングヘイローがまさかの一人旅。
その勢いのまま坂を登り切り、文句なしの一着で決めてみせた。
二位とは四馬身差。
高松宮記念のステップレースを見事勝利で飾る。
かつて放った大言が輪郭を纏い始めて来たのを感じさせる力強い勝利であった。
「素晴らしい伸びだ。
だが菊花賞を制したウマ娘の勝ち方じゃないな、あれは強いスプリントの勝ち方だ。
中盤の安定感も良い、優等生なのが透けて見える走りだった」
「それだけじゃありません、皆さんにいつものキレがありませんでした」
「ああ、覇道を使うらしい。それも一等強力な」
優等生の走り。
先行の脚質から繰り出される伸びやかな加速。
そして何より強い覇道の使い手。
二人の脳裏に、とある少女の顔がよぎった。
意識せざるを得まい、この一年―――サクラバクシンオーに至っては三年間ずっとライバルとして見てきたのだから。
その少女の名はニシノフラワー。
彼らが最も警戒をしている相手の名前である。
「おそらく彼女の走りを参考にしたのだろう」
「参考にしたって、それだけでマネできるものなのですか?」
「お前もできるだろう、しっかり叩き込んだはずだ」
「そりゃまぁ、できますけど」
あくまでキングヘイローがやったことは好位先行。
先頭集団を風よけにして、いいところで飛び出してそのままゴールを掻っ攫う。
教科書に載っているようなお手本の走り方そのものだった。
脚質が適い、ある程度の経験があればその形を行うことはそう難しくない。
ただしそれで勝てるかどうかは別問題だ。
そしてもっと疑問視すべきことがある。
「彼女、公式試合で短距離を走るのは初めてだったはずでは?」
「そうだな」
そう、そこである。
集団から飛び出すタイミングが難しいのだ。
正解のない問題であるし、何より短距離は他の距離に比べてそのタイミングがシビアである。
遅れれば後続に飲み込まれるし、早ければトップスピードをゴール板に持ってくることができずに失速して差されてしまう。
これは全てのレースで言えることだが、距離が短ければ短いほど間違えた影響は大きく響くのだ。
ともすれば数歩の誤差が命取りになりかねない。
だというのに短距離の平均速度は全レース中最速だ。*1
速度が早いだけに足の回転率も高い。
抜け出すタイミングは益々シビアになる。
それを一発で成功させたキングヘイローの経験はどこから来ているのだろうか。
短距離で模擬レースをやりまくっている、などという話は聞いていない。
むしろ肉体改造ばかり行っていて走る時間は減っていると聞いている。
情報戦……仕掛けられているのか?
トレーナーが考え込むのを見てサクラバクシンオーは会話を諦めた。
こうなっては相手にしてもらえないことを経験則で知っている。
かといって騒いでも叱られる面倒臭い時間である。
仕方ないので静かにレースを見直すことに。
そうするとトレーナーの視線もレースへ注がれた。
「……優等生なのが透けて見える走り?」
モニターに映るキングヘイローへ男の呟きが向けられる。
「菊花賞を取ってすぐに短距離に挑むと公言するような破天荒が、優等生?」
ギラギラと男の瞳が鋭くなっていく。
何かを確信してトレーナーは立ち上がった。
「行くぞバクシンオー、あの美しい伸びは忘れろ。撒き餌に付き合うほど暇じゃない」
「は? あ、トレーニングの時間ですね! ではバクシンと参りましょう!」
「あの大男、仕掛けてくるタイプには見えなかったが、そっちがその気ならいいだろう。
こちらは王者として正々堂々と受けて立つまでだ」
「バクシン! バクシーンッ!」
_____ヘイロー―――――
「やっぱこの子、目がいいな」
「目ですか?」
ところ変わって小さなトレーナー室でオーシャンSを見るのはニシノフラワーとその専属トレーナーだ。
ノートパソコンを二人で仲良く覗き込んでいる。
「シノさんは耳で相手との距離を測ったりするだろ?」
「ええ、たまにですけど」
「この子はそういうことしないタイプってこと。
もしもキングヘイローの後ろを取れたらいい感じに不意を突けるかもね」
サクラバクシンオーのトレーナーとは異なった切り口でキングヘイローの強さを解体していく。
先ほどの男が積み上げてきた知識と経験から来る読みで通し切ったのとは対照的に、こちらは細かく情報を噛み砕いていく。
ちなみに彼の言うシノさんとはニ“シノ”フラワーのことである。
「あと抜群に頭がいい、おそらくトレーナーは具体的な作戦は何一つ立ててないと思う」
「そうなんですか?」
「うん、たぶん予定だと差しで行こうとしてたけど、最初のスタートが上手く行きすぎて先行策に切り替えたんじゃないかなって」
さらに言えばトレーナーは先行策で行くことを想定していたはず、とこのトレーナーは読んだ。
でなければあの快速の伸びはあり得ない。
訓練なしにできる完成度ではなかったのだ。
「サブプランとして持っていたとか?」
「あのトレーナーが“上手くスタートできたら先行で行きましょう”なんてタイプに見える?」
「すみません……ジャックさんなら作戦を一つにバシッと決めちゃうと思います」
脚質や状況だけでなく人読みも入れて細かくレースを見ていく。
それはニシノフラワーが考えて走るタイプだからだ。
このレースの解体もニシノフラワーの糧となる立派なトレーニングなのである。
「じゃあトレーナーとしては何をしてるんでしょう?」
「たぶんあの人はあの人なりの勝ち方を見ていて、そこを目指してトレーニングをしてるんじゃないか。
でも選手がその勝ち方に固執しないように大ざっぱに導くだけ、みたいな……」
「……それでレースができるんですか?」
「できてるじゃん」
解体作業はジャック・アトラスのトレーナー論にまで及ぶ。
ニシノフラワーがジャックと個人的に知合いということもあってその理解度は正確なものだった。
「選手とトレーナーの性格が似通ってるんだと思う。
だから何も言わずともトレーナーが狙った通りの動きをすることになるんじゃないかな」
「なんだかよく分かりません」
「えーっと、例えばデュエルモンスターズでトレーナーがデッキを組んで、選手がプレイするようなもんかな。
デッキテーマが決まれば勝ち方も決まってくるでしょ」
「益々信じられません、他人が組んだデッキで勝負できます?」
「そこがあの二人の凄いところだ」
デッキを他人に触られるのも嫌がる人もいる世の中でデッキ構築から全てをお任せというのは普通ではない。
親が子に、師が弟子にデッキを託すというような場合でもない限り聞かないような話だ。
そしてデッキを渡されたところで使いこなせるかは別問題である。
一般的なトレーナーとウマ娘の間柄をデュエルモンスターズの例で挙げるのならばこうだ。
ウマ娘が
もちろん
この追加・除外させるカードの考え方で双方の相性が決まってくると言っていい。
読者に分かりやすくいうのならば遊城十代に「Eヒーローとシナジーがないハネクリボーは抜け」と言われて彼がそれを聞くだろうか?
互いの意思を尊重できなければトレーナーと選手の信頼関係は成り立たないのである。
それを考えればキングヘイローコンビは異質を極める。
ジャックが逃げで戦えと鍛え上げれば、キングヘイローは迷うことなく実戦で逃げを選ぶだろう。
そもそも逃げの練習をしたところで疑問に思うはずだが、彼女はそれを行うのに躊躇わない。
彼がそういうのならそれが勝つ道しるべなのだろうとキングヘイローは考える。
そしてジャックもまた彼女ならば己の指し示した道を完走できるだろうと考えている。
単純な信頼関係とは異なり、圧倒的な実力主義から成される信頼感。
あの二人を他の選手とトレーナーのような関係だと思うと火傷をする。
それがトレーナーの結論だった。
「高松宮記念でどんな手を取ってくるのか、予想に拘るとドツボにハマるかもしれない」
「これだけ鮮やかな先行を捨ててくると?」
「そもそも差しウマだろ、キングヘイローって」
「それはそうですけど、短距離は先行で行くことにした可能性だってありますよ?」
まだ納得のいっていない様子のニシノフラワーだがトレーナーは確信に至りつつある。
彼女の言うことも分かる。
ステップレースとは実戦で行われる練習のようなものだからだ。
それで上手くハマった策を捨てるのか?
いやそもそも捨てるのなら貴重な機会でそれを試した理由は何だ?
ノートパソコンに映る映像はレースなんかとっくに終えていてライブ映像に切り替わっていた。
レース研究に必要ないはずのそれも解体作業には必要なのだが、今の二人の目には映っていない。
「高松宮記念、世間はもうキングヘイロー先行の説が強い、それくらい鮮やかな勝利だった。
菊花賞を制したスタミナを有効活用するなら当然の策って説得力のある意見もあったな。
それに忘れちゃいけないのはサクラバクシンオーが負けたのはキミの先行策だけって事実だ。
あれは枠順、レース展開、シノさんの調子など全ての要素が重なって得られた勝利だったけど、おかげで世間ではサクラバクシンオーに勝つには先行しかないのでは?なんて言われてる」
全てがキングヘイロー先行策を推してきている。
これに乗せられてこっちが対策を練り、本番で差しだったらどうする。
短距離は短いのだ。
少しの動揺がレース展開に大きく影響する。
「周囲に影響されない強さを持つ
でもキミにはどうだ?」
「戸惑えば負けです……!」
先ほども説明した通り、ニシノフラワーは考えて走るタイプだ。
戸惑いは思考の混乱を呼び、思考の混乱は破滅を呼ぶ。
これがマイルであれば立て直しもできる。
だが目指すレースは1200mしかない、時間にして70秒前後の試合である。
3秒の戸惑いが、5秒の混乱が致命傷となる。
それと忘れてはならないこととして、ニシノフラワーもまた周囲から対策を取られる強者なのだ。
数秒も隙があればバ群に飲み込まれるのが道理だろう。
短い短距離では一度飲まれればお終いだ、彼女にバ群を突き抜けるパワーはないのだから。
「先行だと決めつけるのは早計だと理解できたかい?」
「はい……まさか初めての短距離挑戦をここまで有効活用してくるなんて驚きです」
「恐ろしく場慣れしてる。ジャック・アトラスの本領はこういった勝負の駆け引きにおける引き出しの多さなのかもしれない」
少なくとも自分と同期のトレーナーが仕掛けてくる技じゃない。
そう嘆き、頭を抱えた。
元・デュエルチャンプの称号は伊達ではない。
ウマ娘のレースにだって通用するのだと理解したからだ。
これはあれだな、デュエル修行の一環でトレーナーになったって話、マジっぽいな。
ならば逆も言えるのだろう。
ウマ娘のレースで培った経験や知識はライディングデュエルに通用するのだと。
もしかしたらキング・ジャックの再起は近いのかもしれない。
「……とにかく、葵ちゃんとミークに併走のお願いしてこようか」
「はい、先行と差しの両方ですね」
「今度はなに要求されんだろ」
「が、頑張ってくださいトレーナーさん!」
_____ヘイロー―――――
「マルチ・ピース・ゴーレムで攻撃!」
「きゃあ!」
キングヘイロー LP4000 → 3800
炎帝テスタロスが光の欠片となって消える。
これで一ターン目に用意した壁が破壊された。
ジャックの場にはまだ攻撃を行っていないモンスターが一体。
「レッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラントでダイレクトアタック!
獄炎のクリムゾンヘルタイド!!」
「くぅ!」
キングヘイロー LP3800 → 300
炎のブレスがキングヘイローを焼く。
ライフも風前の灯だ。
だが残った、その事実にジャックは鼻を鳴らしている。
倒しきれなかったというのにどこか満足げであった。
「マルチ・ピース・ゴーレムの効果を発動。
このカードが戦闘を行ったバトルフェイズ終了時にEXデッキへ戻すことで融合素材となった二体を墓地より特殊召喚する。
集え、ビッグ・ピース・ゴーレム! ミッド・ピース・ゴーレム!
さらにミッド・ピース・ゴーレムの効果を発動。
自分フィールドにビッグ・ピース・ゴーレムが場にある時、デッキからスモール・ピース・ゴーレムを特殊召喚!」
「壁を増やしてきたってわけね、帝には辛い展開だわ」
あっという間にフィールドが騒がしくなるがジャックはこの程度では終わらない。
パワーデッキを使う彼にしてみれば攻撃力1100のスモール・ピース・ゴーレムなど壁ですらない。
ただのシンクロ素材でしかないのだ。
「戯け、まだ終わってはおらんぞ。速攻魔法ユニゾン・チューンを発動!
墓地に眠るダーク・リゾネーターを除外し、ミッド・ピース・ゴーレムのレベルをダーク・リゾネーターと同じ3に変更してチューナーにする」
「チューナーに変更するカード!? じゃあここから―――」
「無論、シンクロ召喚だ!
レベル3のスモール・ピース・ゴーレムにレベル3のミッド・ピース・ゴーレムをチューニング。
赤き魂、ここに一つとなる。王者の雄叫びに震撼せよ! シンクロ召喚! 現れろ、レッド・ワイバーン!」
「そのカードはあの時の……!」
「ターンエンドだ」
これで場には攻撃力2100のビッグ・ピース・ゴーレムを始めとした大型モンスターが三体。
しかもジャックが最後に出したレッド・ワイバーンはフリーチェーンでモンスターを一体破壊できる強烈なカード。
この強力な布陣こそ、ジャックが思うサクラバクシンオー&ニシノフラワーの強さだということ。
ジャックのライフポイントは3900。*2
ここから一ターンで逆転勝利するのは並みの腕前では不可能、だがそれを求められている。
三ターンで勝ちきれなければ負けという短距離仕様の特殊ルールなのだ。
しかもバトルフェーダーや帝王の烈旋など一部の強力なカードは取り除かれている。
このデッキが今の短距離の実力ということなのだろう。
肉体改造の四カ月を経て、未だ未完成ということだ。
ならばこそキングヘイローは迷わずデッキに手を掛けた。
「私の、ターン!」
そしてキングヘイローのラストターンが始まる。
勢いよくドローを慣行、会心の引きに笑みを浮かべた。
一ターン目に消耗を最小限に留めたおかげで残り手札は四枚と潤沢だ。
ライフはギリギリだが、そのリスクギリギリのラインを見極める。
それがこのデュエルのテーマだとキングヘイローは理解している。
そしてそれを適えた今、全ての手札を使って勝つのみだ。
「まずはスタンバイフェイズ、黄泉ガエルを墓地から特殊召喚!」
『ゲコッ』
「メイン! 雷帝ザボルグをアドバンス召喚!
雷帝ザボルグの効果でレッド・ワイバーンを破壊するわ!」
「ならばレッド・ワイバーンの効果を発動、ザボルグを破壊する!」
お互いにモンスターを破壊し合い、煙が晴れるまで妙な間が生まれる。
「フッ、レッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラントを破壊しなくてよかったのか?」
「分かってるくせに、私の末脚はこの程度じゃないんだから!
レッド・ワイバーンの効果に合わせてこれを発動しておいたのよ!」
立ち上がった魔法カードはサモンチェーン。
チェーン3以降に発動できるカードで、効果は通常召喚を三回まで行う事ができるというもの。
つまりキングヘイローはまだ二回召喚を行える―――勝利のチャンスは充分にある。
「さらに魔法カード、グリード・グラードを発動。
相手フィールドのシンクロモンスターを破壊してるターンに発動できるカードで効果は二枚ドロー!」
引き込んだカードは再臨の帝王と灰流うらら。
最高に心強い相棒の到着にキングヘイローも不敵な笑みで応えた。
「再臨の帝王で墓地の雷帝ザボルグを復活させるわ。さらに灰流うららを召喚!
そのまま雷帝ザボルグに灰流うららをチューニング!
継承せし王者の鼓動が、不屈の魂を呼び起こす! 貴方に拝謁の権利をあげるわ!
シンクロ召喚! レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト!」
二体のレッド・デーモンズが、神にも匹敵する悪魔たちが今ここに相対する。
現れたレッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライトの姿にジャックは楽し気に顔を歪めた。
キングヘイローが召喚に成功したのはわずか数回だが、そのどれもが特大の切れ味を誇ってきた。
今回もその切れ味を見せてくれるというのだろうか。
「フン、だが我がレッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラントには及ばんな!」
「そうね、でもビッグ・ピース・ゴーレムは射程内よ!
レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライトの効果!
このカード以外の、このカード以下の攻撃力を持つ効果モンスター全てを破壊するわ!
アブソリュート・パワー・フレイム!」
ジャック LP3900→3400
劫火がビッグ・ピース・ゴーレムを焼き尽くす。
これによりジャックのライフが500削れるが打倒にはまだまだ遠い。
何より攻撃力3500のレッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラントが立ちはだかっているのだ。
さぁ、残る一枚の手札でどう来る?
ジャックの脳裏には一枚のカードが浮かんでいる。
一ターン目からずっと握っているあのカードがもしもそれならば―――
「私はレッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライトをリリースして邪帝ガイウスをアドバンス召喚!」
「やはり!」
「邪帝ガイウスの効果を発動!
闇属性のレッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラントを除外し、1000ポイントのダメージを与えるわ!」
「ぐおっ」
ジャック LP3400→2400
「これでフィールドはがら空き……最後にフィールドに立つのはこの
バトル! 邪帝ガイウスでダイレクトアタックよ!」
「それでこそだ、キングヘイロー……!」
ジャック LP2400→0
これにてジャックのライフが底を突き、勝負ありとなった。
それを見届けてからキングヘイローはゆっくりとへたり込む。
体力を使い果たしたのだろう。
半年以上続けてきたジャックとのデュエルでの初勝利ということも相まって力が抜けた様子だった。
「ようやく、勝てた……」
「これならば高松宮記念、期待できるかもしれん」
これだけやってもまだその評価なのか、と思う一方で本当にギリギリだったとも思う。
何か一つでも間違えていたら負けていた。
果たして今のような引きを本番でもできるだろうか。
「勝てたのだ、少しは喜べ」
「……でも貴方の本気はこんなもんじゃないでしょう?」
遊星とのライディングデュエルを一番近い距離で見ていたキングヘイローはそれを理解していた。
もしも彼が本気であれば二ターン目に伏せカードが増えていたことだろう。
それだけの引きの強さが彼にはあるのだと知っているから喜ぶ気にもなれない。
このデュエルは高松宮記念対策でしかないのだ。
あくまで力量はサクラバクシンオーを基準に抑えられているはず。
……いや、それでレッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラントを出してきてるんだからサクラバクシンオー先輩も大概ヤバいでしょ。
キングヘイローの感想はさておき、決戦の準備は整いつつある。
王道と称した険しい道程の難所はすぐそこまで迫っている。
短距離の王者となるのは誰か。
それを見通すのはウマ娘を見守る三女神であっても敵わぬことであった。
デュエルで裁定ミスあったらこっそりおせーてください。
バクシンはいる、悔しいが。
高松宮記念、来る。
次回、『・・・・すごいバクシンだ』にアクセラレーション!