みんなのマネージャー。
4月30日。桜の舞う季節になり、2回目の春をみんなと迎えた。足元には風で振り落とされていく桜の花々が飛んでいる。
「じゃ……また会おうね。みんな。また会えたら、嬉しい。それじゃ、ばいばい。」
みんなの顔を見て、涙がひとつひとつ溢れていく。本当はこんなことになるはずじゃなかったのに。離れたくなかったけど、俺の仕事はここまで。みんなと過ごせるのもここまで。
2ヶ月前。
カメラのフラッシュが美しい顔を照らす。その光がとても眩しかった。
「あ、マネージャー。」
「まほろ、また撮ってるの?」
「当然、まほろはフォロワーみんなにまほろの一面を知って欲しいから。」
「ラーメン大好きなことも?」
「それはダメ!」
頬をぷくっと膨らませ、じーとこちらを見てくる彼女は、宮路まほろ。Windの1人であり、入る時はツンツンしてて、個人で活動したいとか言ってたけど、どんどん馴染んでいって今は寮生活もいいとか言ってる。マネージャーとして、みんなと仲良くしてくれるのはとても嬉しい。
「ちょっと、マネージャー?どこ見てんの?」
「あ、ごめん。考え事してた。」
「もー、まほろといるときになにしてんの?」
腰に手をあて、猫のような可愛い表情で言う。
「あ、マネージャーすか?それに、まほろさんまで。」
Flowerの1人の鷹取舞花。黄色いリボンがトレードマークの子。前にほのかに勉強教えてもらってるとか聞いたなぁ。今度俺も教えようかな。
「2人でなに話してんすか?ていうか……まほろさん、なんでさっきマネージャーの手握ろうとしてたんすか?」
まほろはモジモジし始め、目をそらす。しばらくすると、用事を思い出したとかでそそくさと逃げていった。
その後、舞花と世間話を弾ませていると、遠くでどこかよく聞く声が聞こえた。
「いやーあそこにも新しいプラモデル売ってなかったよー」
「悠希ちゃん、もうあいり…足ガクガクだよぉ…」
「ユーキ!あそこのパフェ美味しそうじゃない?」
「ほんとだ!行こ行こ!!」
「ちょっと待ってよ〜!」
あれは……悠希とあいりと柚葉か。
birdの3人で、悠希がリーダー。あいりは最初謝ってばっかりで自信をあまり持ててなかったけど、みんなと協力していって自分から助けることも出来るようになってきた。実際俺も助けられている。柚葉は、散歩感覚で海外に行ってプロの料理職人を寮に連れて行ってbirdのみんなで食べてその料理を千紗が覚えるとかいうことがあったとかなかったとか……。まぁでも、CUEROOMとかでも、頑張ってるし、いいよね。
あいりが悠希と柚葉に置いていかれ、膝に手をつけているところを舞花と2人で向かった。
「あいり、大丈夫?」
「マネージャーさん、実はさっき悠希ちゃんと柚葉ちゃんと一緒に買い物に行ってたんですけど…2人が色んな場所に行って、あいり…もう足がガクガクで。」
「そりゃ大変っすね…あそこのベンチで休憩した方がいいんじゃないっすか?」
「あいり、抱っこしてあげるからあそこに行こう。」
あいりの前で身を丸くして、あいりの前に背を差し出す。
「えっ、その…は、はい……。」
肩と背に少し重みを感じ、ぶら下がる足を掴んでベンチに向かった。
こうやって女の子を抱っこして運ぶのってしたことないから、緊張する…。
心臓バクバクなのあいりにバレてないかな。というか、あいりすごいな。こうやって体がくっついてるから分かるけど、すごく鼓動を感じる。バックバクじゃん、あいり。やっぱりこういうのって恥ずかしいよな。
ベンチに着き、あいりを下ろして座らせた。
「マネージャーさん、ありがとうございました。」
椅子に座りながら礼をし、体を上げたあいりと目を合わせ、しばらく沈黙が続く。
「あの〜?マネージャーとあいり?見つめ合うのはいいんすけど、悠希と柚葉帰ってきたっすよ?」
舞花にそう言われ、後ろを振り向くと、悠希と柚葉が走ってきた。
「マネージャー!あいりー!ここにいたんだねー!!」
「アイリ!さっきはごめんなさい。」
「悠希ちゃん、柚葉ちゃん。いいよ、あいりもついていけなかったから…」
なんかよくなってよかった。
舞花と一緒に見て和んでいた。すると、柚葉がこちらを見て一言放った。
「なんか、マイカとマネージャー、親って感じね!」
「お、親!?そんなマネージャーと結婚っすか!?」
「柚葉、冗談は顔だけにしてくれ…恥ずかしい。」
ポケットに入れていた携帯が鳴り出す。かけていたのは、社長だった。
どうやら、りおさんも一緒にいるらしい。俺は舞花たちに別れを告げ、事務所に向かった。向かう途中、再び電話が鳴った。
「あ、マネージャー?ごめんね〜ちょっと長話になるだろうから、水買ってもらってもいいかな?」
「りおさん、パシリですか?」
「いや、パシリとかじゃないけど、ただ私が買い忘れちゃったんだよね〜ごめんね?てへっ。」
「てへっ、じゃないですよ。それじゃあ買ってきますから待っててください。」
電話を切り、駅前のコンビニに向かった。通りから駅に出ると、見た事ある子が不安そうな顔をして、しゃがんでいた。
「あ、あの大丈夫ですか?なにかありました?」
「実は足をくじいちゃって……ってマネージャーさん?」
「は、陽菜!?」
一度、陽菜をおんぶして2人で近くにあった椅子で座って様子を見た。
「ふふっ、またこういう形で会いましたね。」
「懐かしいね…最初の頃もこうやって会って事務所に行ったよね。」
「はい、それでりおさんと一緒にスカウトに行ってみんなに会ったりして、そこから色々ありましたよね。」
「うん、今思うと、陽菜とここで出会って本当によかったよ。」
「でも、またこうやって心配して来てくれるなんて本当にマネージャーさんは優しいですね。」
ニコッと笑う彼女の笑顔に、ついドキッとしてしまう。
「マネージャーさん?私の顔になにかついてますか?」
目を大きく見開き、じーっと見てしまった俺と目を合わす。彼女と話してしまってりおさんのおつかいを忘れかけてしまった。陽菜がバックから出した水を見て、おつかいを思い出した。
「あっ、やべっ!!そういえば水買って来いって言われてんだ!」
「誰からですか?」
「りおさん。なんか長話とかになるらしいし、大事な話なんじゃないかな。最初社長から直々に電話来たし。」
「そうなんですか、マネージャーさん。一緒にいてくれてありがとうございます。足もよくなってきました。本当に優しいですね。」
「どういたしまして。それじゃあまたね。」
立ち上がり、コンビニに向かおうとしたときに、後ろから袖を引っ張られることを感じた。
「ん?陽菜どうした?」
「あの…あの時みたいに、一緒に事務所に行きませんか?」
陽菜は上目遣いでなにか感情を伝えようとしてきた。その表情はちょっとずるくないかな……断れねぇよ…。
「うん、もちろんいいよ。その前にコンビニ行って飲み物買ってこないとね。」
水を買って、陽菜と2人で事務所に並んで向かった。
その後、社長室に水の入った袋を持って入った。
「失礼します。」
「遅かったわね。あなたに重要な話があるわ。遅れたことは今回許します。」
「あ、ありがとうございます。」
「いやーマネージャーごめんね?私が買い忘れちゃったから。」
「いやいや、大丈夫ですよ。」
水を社長とりおさんに渡し、荒々しく社長が机に水を置く。
「そろそろ来るわね。」
社長の言葉の意味がわからなかった。
すると、外から前に聞いたことある声とまほろの声が聞こえた。
「なんであんたがいんのよ。」
「あはは、相変わらずツンケンしてるなぁ。私にもここに呼ばれたのはわからない。宮路の事務所の社長さんに呼ばれたんだ。」
コンコンと外から扉が叩かれる。
「失礼します」という声と同時に扉が開かれる。
「おや、宮路のマネージャーじゃないか。君も呼ばれていたんだね。」
「なぜ豊川さんまで…」
「主役が揃ったわね。これから、次の仕事について話すわ。」
まほろの前のマネージャーの豊川さんとまほろ、そしてりおさんに社長。
なぜこのメンバーで集まるんだ。
「それじゃあ、まずは私りおから話させていただきまーす。今回の仕事は、あの超有名なアニメのオーディション。それを2人のマネージャーで、8人で分けてレッスンしていってほしいんだ。」
「ほう…だが、それはそちらには不利ではないか?私は大手事務所の元マネージャーだ。もちろん、レッスンなども可能だ。だから____」
豊川さんの言葉を遮るようにまほろが口を開ける。
「マネージャー、まほろたちのこと分かってるよね。」
「う…うん。もちろん。」
長い時間みんなのマネージャーやってきたんだ。生半可な気持ちでやってない。必ず成功させる。
「2人ともやるということでいいわね?」
「「あぁ。」」
豊川さんと声が被る。
そして、りおさんからどのように分けられるかメンバーを聞いた。
「まず、豊川チームは、FlowerとBird。そして、君はWindとMoom。」
「では、頑張ろうではないか。」
手を差し伸べる豊川さんの手をギュッと握り、頷く。
2チームの命運。
各々の想い。