今から行われるオーディションは、選抜制。3次のオーディションまであり、計8人がこのオーディションで選ばれる。このエールブルーからはもちろん、全員が参加する予定だ。
16人全員が受かって欲しい気持ちもあるが、今回は8人まで。そして、もうひとつのチームは豊川さんの指導によってレッスンをしていた。
元々大きい事務所のマネージャーということもあり、少し自分がしっかり追いつけるか、心配だった。でも、自分のできる限り…桐香先生のをよく見ていたから、そこからも参考にすることにしていた。
志穂と莉子の姿を見送ってから、俺も会場に向かうことにした。
と…その前に、喉が乾いたから少しコンビニでも寄るか。
赤の信号が青の信号に変わった時に、歩き始めた。ポケットに入れた携帯が鳴り出す。
「……なんか今日は多いな。」
ポケットから携帯を取り出し、通知に書かれている文章を見た。
【マネージャー!右!車!】
右と言われた方向から、大きな車の音がする。後ろにいる人達の声が咆哮のように聞こえた。
どんどんこちらに車が来る。時がすごく遅くなっているように見えた。
頭の中で、今までマネージャーとして過ごした記憶が流れ込んできた。
陽菜と初めて会った時のこと。りおさんに着いて行ってスカウトもしたこと。チームが各々決まってみんなの、16人のマネージャーになって、楽しいことばかりだった。Windのみんなにドッキリをしかけたり、みんなの真剣な表情を見てきた。
車のフロントガラスの反射で、みんなの……16人の顔が何故か見えた。
もし、と思って後ろを振り向いた。完全に後ろを見れたかと言われても確実に間に合わない。でも、もしそこに居ればと思った。
みんなが手を差し出して、俺のことを掴もうとしている。泣いた姿が心に突き刺さる。
その直後に強い衝撃が身体中を走る。
痺れのような感覚に襲われ、周りの風景がものすごい速さで駆け巡る。いや、周りが動いていない。俺が動いているだけだ。なにが起きたかも、理解が出来なかった。追いつかなかった。
地面に叩きつけられ、ようやく止まる。目の前の風景がぼやけていく。
誰かはわからないが、多くの人たちが駆け寄ってくる。聞いたことある声も多数ある。大きく泣きじゃくる声、語りかけてくる声、心配の声、不の声ばかり聞こえてくる。でも…当然か。
目の前のぼやけが、赤く染っていく。
赤く染まると同時に、意識が薄れていく。なにか最後に言う体力も残っていなかった。
☆ ☆ ☆
「まほろさん、自信あるっすか?」
「ん〜どうかな。まほろはマネージャーから教わったけど、この作品は受かるの難しいからね…。」
「そうすっよね〜。自分も全然自信ないっすよ。」
「誰もが必ず自信があるってわけじゃない。まほろだって失敗はするし、いつも不安。子役だったから、なんでも出来ると思われてるけど、まほろにだって絶対に失敗がないってわけじゃないから。」
舞花と一緒に会場に歩いていると、目の前に志穂と莉子の姿が見えた。
「あ…あれって志穂と莉子さんっすよね?」
頷き、なにか悪寒を感じ、周囲を見渡した。見渡していると、信号前にマネージャーがいた。
マネージャーの方に行こうとすると、青信号になり、マネージャーは渡っていく。そして、右側の車道から車が信号を無視して飛び込んでくる。
その目の前にはマネージャーがいた。
声では届かないと思い、即座に携帯でマネージャーにメールを送った。
気づいてくれたけど、さすがに遅かった。車がマネージャーに寄っていく。
そして、マネージャーはこちらを見ながら吹き飛んで行った。
それを目の前で目の当たりにしてしまって、膝から崩れ落ちてしまった。
「マネージャー……そんな…なんで、マネージャー…。」
携帯を思い切り握りしめて、涙を流す。顔を上げると、血のついた携帯が目の前にあった。さっき送ったメールの画面が表示されていた。携帯を拾い上げ、メールのページを消そうとすると、隣のページにあるメモがかかれてあった。
【今回のオーディションでの目標!
まず、みんなが3次オーディションまでいけること!豊川さんとチームを分けてしまったけど、全員がいい結果になることを願う!自分も同様に、精一杯頑張る。このオーディションで誰か受かったらみんなでお祝いパーティーでもしようかな。それまではみんなに秘密にしておこう!やっぱり秘密にしてた方が驚くし、喜ぶよね!
みんなが受かること、そして俺はみんなが大好きだ。頑張ってね。心の中でずっと応援してるから!】
「そういうのは、もっと早く言いなさいよ……。」
涙がマネージャーの携帯の画面の上に乗る。マネージャーの携帯のホーム画面に移ると、みんなと撮った集合写真があった。
これって…あの時の。上で撮ったときの写真。まだ衣装も来てなくて、いつもの私服で撮った時の……。
これ、大事にしてくれてたんだ…。
「マネージャー…生きて……。」
まだ、マネージャーの様子を見ていないのに、何故かこの言葉が口に出た。
でも、あれを見て確実に生きていると確証を持てる方がおかしい。
だから、お願い。マネージャー、生きていて。
☆ ☆ ☆
気づけば俺は天井を見つめていた。
静かに周囲を見る。隣には真咲社長、りおさん、豊川さんがいた。
「起きたわね。先生!起きました!」
社長は先生を呼びに1度この部屋を出ていく。
「まさかこんなことになるなんてな…
君とまた戦いたい、宮路のことを君なら任せられると思ったんだがな。」
「豊川さん……俺は、出来ればもっと生きたいです。今、自分がどんな状況か分かりませんが、生きたいです。死にたくないです……。」
「……みんな、オーディションを辞退したよ。これから来ると思うよ。」
「はい…りおさんもありがとう…ございます。」
また天井を見つめ直す。しばらくして、社長と医者が来てくれた。
「今の状況的になんですが、恐らく2ヶ月ほどかと…。」
「はい…もう、それくらいなんだな…」
「ですが、逆にあの衝突で生きられることもすごいです。入院をすれば、直せる確率もあります。」
「医療費などは、私から出させてもらうわ。マネージャーをまだ死なせたくないもの。みんなも悲しんでしまうでしょうし。」
外から足音が多く聞こえてくる。ドアが開き、こちらに寄ってくる。
ベットに横たわって見えた景色は、みんなが泣いている姿。
「マネージャー…これ、携帯……。
ほんと、こういうことは早く言いなさいよ…。」
「あはは、見られちゃったか…。オーディション終わってから見せたかったんだけどな……。」
「マネージャー!お願いだから生きて!余命とかないよね!?」
「……………2ヶ月。」
これを言って周りが静まり返った。
「2ヶ月って言われた。今のところは。入院して、手術を受ければ、なんとかなるかもしれないって。」
俺の言葉に続けて、社長が話した。
「先程、先生から聞いたのだけど、臓器とかに問題があるらしいわ。ドナーを探して見つけたら可能性はあるらしいわ。」
まほろが即座に口を開いた。
「なら、まほろが!!」
それを聞いて、謎の感情が込み上げてきた。思い切り声をあげてしまった。
「ダメだ!!まほろ。ダメだ!みんなもドナーとして参加しちゃだめだ!俺は、みんなに、犠牲にはなってほしくない!みんなが…死ぬのは、俺が止める。だから___」
「私がやろう。」
みんなにはまだ死んで欲しくない。みんなが死ぬなら代わりに俺が死ぬ。