「私がやろう。」
そう言ったのは、豊川さんだった。
「あ、あんた…なんで。」
「私は、君から…君たちから多くのことを学ばせてもらったよ。君たちなら、負けたくない想いの分強くなれるから。」
豊川さんの言葉を聞いて、みんなと一緒に涙を流してしまった。豊川さんの優しさと、みんなへの希望の詰まった言葉であった。
「マネージャー君。君は、宮路のことを。この16人全員のことをどう思っているんだい。」
時間の流れが止まったような感覚だった。この空間だけが、静かになり、再びみんなとの出来事を頭の中で流れてきた。
春に曲の収録をしたこと。beautiful tomorrowの収録だ。今、大きな声で叫びたい。誰かにきっと届くと信じたい。この手に残る温もりは消えない。この温もりは、心にも伝わってくる。
俺は、みんなの夢が聞きたい。そして、俺の夢もみんなに伝えたい。
憧れた空を、見つめて……。
「俺は、みんなのことを。真咲社長のことを、りおさんのことを、みんなのことを、大切に思っています。俺は、ここにいる全員が……大好きです…………。」
「よく言った。私も、マネージャー君のことが好きだ。そして、このオーディションで、このエールブルーの16人のことを知れた。私に、ここに入る場所はない。だが、ひとつ入るところがある。」
ベットで寝転がる俺の胸を豊川さんは指でつついた。
「私をここに入れればいい。離れていても、共鳴できる。同じマネージャーだからな。」
微笑む豊川さんは、どこか嬉しそうで、どこか悲しそうで。涙を流すことしか出来なかった。泣くことで精一杯だった。
豊川さんの臓器を貰うことが決まった。
4月30日。
今日が手術日。私は、マネージャー君に体を捧げる。追いかけて、追いかけてきた。このエールブルーがどんな色に染まるか楽しみだ。
「じゃ……また会おうね。みんな。また会えたら、嬉しい。それじゃ、ばいばい。」
病院に向かう花道で、後ろにいる16人に放った。みんなの顔を見て、涙がひとつひとつ零れていく。空には、虹がある。今思うと、虹には色々な色があるな。この、16人のように。
本当はこんなことになるはずじゃなかったのにな…。だが、仕方ない。
宮路が駆け寄ってくる。
「あんた、本当にいいの?」
「ここで私が行かなければ、宮路のマネージャーがいなくなるが、それでいいのか?宮路は本当にそれでいいのか?」
「……ダメ。マネージャーがいなくなるのはダメ。でも…………あんたと仕事を出来て、よかった。ありがとう。」
「宮路からやっと感謝の言葉を聞けたよ。こちらこそ、ありがとう。」
病院に向かう後ろから、ひとつの歌が聞こえた。
『手のひらにこぼれた小さな光
君と僕が一緒に過ごした証
時が経つのは早すぎるけど
きらり きらり 光 心に刻もう
終わりなんてない この青い空で
つながっているから
1人じゃ生きてゆけない僕らは
それぞれの道歩きながら
ねぇいつだって違う場所で
思い出して笑っていて
たとえ雲が光遮る日にも
乾いた心だけ感じてるよ
だからきっとね 前を向いてね
だってだって僕らはずっと…
Forever Friends』
ふふ、Forever Friendsか……。
これは、良い曲だな。ぜひ、死んでもずっと聞かせてもらうよ。そして、君たちの色を見させてもらうよ。マネージャー君の中でね。
「あんた……すごく、楽しかったよ。
まほろと一緒に居てくれてありがとう。」
まほろの口からこぼれた言葉はしっかり耳に届いた。でも、私は立ち止まらなかった。マネージャー君が待っているし、みんなが必ず迎えてくれるはずだからな、マネージャー君を。
☆ ☆ ☆
「マネージャーさん、ありがとうございます。マネージャーさんがいてくれたから、ここまで来れました。」
「いやいや、陽菜たちが頑張ってくれたのもあるよ。でも、みんなの映像がここで流れるとはね。俺達もここまで来れたんだねって実感出来るよ。」
俺と陽菜は、目の前の大きな画面で流れる映像を眺めていた。
太陽の光が、陽菜を照らしていた。
「マネージャーさん、これからもよろしくお願いしますね!」
CUE!は、必ず色んな人を楽しませてくれました。マネージャーたちを笑わせてくれました。俺たちに思い出をつくってくれました。