今日は魔王ちゃんと白ちゃんに会いにきていた。
二人とも私が知る人物の中で五指に入るレベルで強い。魔王ちゃんはステータスカンストしてたり色々とスキルを持っててこの世界基準で見れば反則レベルで強い。白ちゃんはいつか見た白い蜘蛛で、自力で神へと至った存在。それだけで既に尊敬に値するし、空間系の魔法が私よりうまかったり。何より彼女が行使する邪眼が強い。私はレジストできるけど時間稼ぎにしか使えない。彼女の分体が世界中に散らばっているらしく私自身いついかなる時も油断ができない。まぁ敵対してない。というかできない。間違いなく白ちゃんは脅威と認定できるし。私は何も知らないし、知りたくもないし、関わる気もない。と、言いつつも好き勝手やらせてもらうつもりだけどね。少なくとも白ちゃんが不利にならないようにだけど。
それでさぁ。白ちゃんがなかなか口を開いてくれないんだよ。頭の中では色々と考えてるだろうけど口下手というかコミュ障?魔王ちゃんとは普通に喋れるみたいなんだけど気のせいかな。
「この世界について色々教えて欲しい。」
と白ちゃんに聞くとしばらくして本を手渡された。
会話したくなさすぎでしょ・・・
「それで夜陰ちゃん。お願いしたいことがあってね。」
「何ー?」
「この前ユリウスっていう勇者を殺したら予定外のことが起きちゃってね。」
「ほうほう。どのような?」
「そこで勇者システム壊すつもりだったんだけど女神に邪魔されて次の勇者を決められてしまったのだよ。」
さらっととんでもないことを喋る魔王アリエルちゃん。アリエルちゃんってめちゃくちゃ響きが可愛いけどやることなすことしっかり魔王なんだよね。
「次の勇者は?」
「山田くん。シュレインくんって言った方がいいかな。」
「なるほど彼か。ということは私に監視して欲しいと?」
「理解が早くて助かるよ。そういうわけだからお願いね。」
「りょーかいでーす。それにしても白ちゃん置物みたいにうごかないなぁ」
「私も白ちゃんは制御できないからね。いつも数ヶ月たった後に事後報告されるから困ったもんだよ。」
「働かなくても気苦労はするんだね」
「うぐっ」
そう。この魔王、部下に仕事丸投げして何もしないのだ。その点白ちゃんは暗躍してる分まだ優秀。会話してくれればさらにオッケー。そんな魔王でも実力で魔王やってるから現状逆らうものはいない。
私の魔族側での立場はかなり微妙なことになっている。アリエルちゃんと白ちゃんの友人だったり魔族に味方する人族でスパイとして魔族に情報を流す諜報役だったり。白ちゃんの分体ですみそうだけど本体があれだから仕方ない。私に監視をつけようとしてる幹部もいるが黙認してる。転移すれば関係ないし。魔王にも咎めなくていいことは伝えてる。これぐらいなんてことない。不意打ちを喰らったとしても自動発動の防御魔法、私自身がカウンターしたり最悪死んでも生き返るから。不死ではないけど疑似的に不死なんだぜ私。
転移で帰宅してもらった本を読む。
うわぁ。
なんだこれ。魂が擦り切れて輪廻転生のシステムが成り立たない?
MAエネルギーとかいう奴が圧倒的に枯渇している?
そのせいで星が死ぬ、と。
そしてそうなるまで放っていたギュリエディストディエスとかいう神がいるだとかポティマスが大体悪いとかいう内容だった。
これは白ちゃんたちに味方するしかないかな。
女神は自身が崩壊しようとも人を守ることを望むが白ちゃんたちはそれを救おうとする。
面白いじゃん。私は必要がなければ表に出る気はないけどね。私の本職は暗殺。目立っちゃいけないんだよ。アリエルちゃんとか白ちゃんに言われたら表舞台に出るけど。
…よくよく考えると勇者の監視って難しくない?
学園にいるうちはどうにかなるけど、妹のスーちゃんが壁になる。山田くんさぁ。何であんな風になるまで放っておいたのさ。兄離れできないでしょ絶対。婚約とかしても婚約者殺してお兄様に会いに行くに違いない。
[どう動こうか。へーちゃん]
[今のところ普通に監視しておけばいいんじゃないですかね。魔力でマーキングはしてるわけですし場所はこちらに筒抜けなので見失うことはないです。懸念があるとすれば誰かに殺されるかもしれないということですね。]
[魔族側はアリエルちゃんと白ちゃんが見張ってくれてるだろうからいいとして、人間側、具体的にはユーゴーこと夏目が脅威か。]
[あとはエルフのポティマス、ですね。]
[最大の懸念はソイツなんだよね。]
[ええ。エルフ側の戦力もいまいち把握できていないですし隠し玉もわからない。人と魔族(白さんを除く)は敵に回ってもたいした脅威にはなりませんね。]
[アリエルちゃんはともかく白ちゃんがね…動きが読めないから、うーんどうしたものか]
そうやって考え事をしていると部屋の中で空間に歪みが生じて、黒いのが出てきた。
「ああ、君がヘタレの管理者くんみたいだね。」
「君にヘタレと言われる覚えはないのだが…」
「アリエルと白って言ったらわかるかな?」
「もうすでに接触していたのか。であれば説明を省いても問題ないな?部外者。」
「おうおう。大きく出たなぁ、管理者。」
[どっちが悪役なんですかねぇ…いえ、どちらも悪というわけではないのですが。]
力の総量は向こうのほうが大きいだろうけどいまいち迫力を感じない。
「部外者、君がその本を読んでどう思ったのかは想像がつく。」
「私にそちら側につけと?」
「いや、そういうわけではないがその言い方だとすでに決まっているようだな。まあいい。私が君にお願いしたいのは手を出さずに傍観していてほしいということだけだ。」
「それは無理な話だねぇ。私は“自由”がモットーでね、縛られるのは好きじゃないんだ。私がやりたいようにやる、今までもそうだったしこれからもそれを貫く。」
「交渉決裂か。」
「なに?やる?」
「今はまだやめておこう。いずれ敵対するだろうが、そのときに」
そう言うと帰っていった。
「私を警戒する前に白ちゃんを警戒するべきなんだよね…。」
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ある時を境にシュレインくんは学校に来なくなった。
おそらく勇者になった結果、戦闘訓練や勇者としての仕事を行っているんだと思う。マーキング用の魔力があちこちに移動してるから色んな場所に行っていることがわかる。学校生活にも飽きて来たから追いかけて見るのもありかもしれない。んー、よし、そうしよう。学長には退学届を出しておいて、ちゃんとこれから関わることはないと伝えておかないとね。今もまだ私が家族の命握ってるからね。お疲れさまでしたー。アリエルちゃんにも伝えておこう。
「会いに来たよアリエルちゃん。」
「おおーいつもいつも突然来るから心臓に悪いよ。」
「それで、学校やめて山田くんおっかけるからね。」
「んーわかった。まぁそれくらいだったらいわなくてもいいよ。夜陰ちゃんは。」
隣にいた白ちゃんがなぜ私は駄目なんだ?と言いたそうな雰囲気だ。それを感じ取ったのかアリエルちゃんは『白ちゃんは前科ありありだからねー。むしろ前科しかないよねー。』と言った。白ちゃんは落ち込んだような雰囲気をまとっていた。
「魔王、仕事しない。」
「うっ…なんで今その話するかな!」
「私は、仕事してる。」
「でも白ちゃんだって部下に丸投げしてるじゃん。」
「色々裏で動いてる。」
「え…?まさか自分で…?」
「うん。」
「まけ、た…?」
聞いたところによると、二人はつながりをたどれば親子の関係らしくて驚いたよ。それにしても仲いいよなぁこの二人。
「魔王が直々に暗躍してたらそれはそれで問題だから、書類仕事を少しでも手伝ってみたら?バルトくん喜ぶと思うよ。」
あ、いや、泣くか。
今まで何もしてこなかった魔王が急に手伝おっかなんて言ったら。
「う…こ、今度言ってみる。」
「それじゃ頑張ってねー。」
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〜後日〜
「ねぇバルト。」
「どうされましたか。魔王様。」
「その書類の山の3分の1くらいやってもいい?」
今までにないその言葉にバルトは、今までにないほど目を見開いた。
「…………失礼を承知で申し上げますが、頭おかしくなったんですか?」
「な!?せ、せっかくやる気出してやろうと思ったのに!」
「す、すみません。では、こちらをお願いします。」
「まっかせてー!」
バルトはかつてないほどに困惑していた。
今まで自分に何もかもを任せて何もしてこなかった魔王様が急に自ら仕事をするといいだしたからだ。なぜ、今になってという気持ちのせいか魔王がどれくらいで処理するのかを眺めていた。
「んー、これはこうだからこれで…。こっちはこうだね。」
そして驚愕した。
バルト自身とほぼ同等のスピードで処理していくではないか。いつもやってくれれば楽になるのにと思わざるを得なかったバルトだった。
「本日の仕事は終了したので帰らせていただきます。お疲れ様でした。」
「うん。お疲れ。」
そう言って部屋を出ていったバルト。
「夜陰ちゃんが言っていたみたいに喜んでくれたかな?どうなんだろ。んーまぁでもいつもよりは顔色が良かったから楽にはなったかな?」
喜んでいたのか、その後泣いたのかは誰も知らない。
ちなみに。
一週間だけ、続いた。
一週間だけ。
話が進まなかった。
それにしても魔王可愛くね?
追記
先に言っておきます。もし原作(web版、というかなろう版?)で魔王が死んだら、この作品は救済ルート入ります。まぁ都合のいい魔法使うだけになりそうですけどね。だってへーちゃんがいればだいたい何でもできちゃうんで。死者蘇生はできません、というかしませんけどね。ある程度筋道は立てますよ。…多分。