時間が経ち、4月上旬。
「皆さん揃ってますねー。それでは
黒板の前でにこやかに微笑む1年1組副担任の山田真耶先生。
山田先生は背が低く、顔つきはやや童顔。掛けている黒縁眼鏡がなければ、おおよそ教師には見えない幼い容姿をしている。その大人っぽく見せようとしている眼鏡もなんかこう…ずれている感じがするのだ。
そんな山田先生の特徴をもう一つあげるとするならば、見た目に似合わぬ巨乳であることだろう。
「それでは皆さん、これから一年間よろしくお願いしますね!」
「はい。よろしくお願いします」
山田先生の言葉に返事をしたのは俺だけだった。おいおい、挨拶は世界の一般常識だぜ?ちゃんとやろうぜ高校生。
「は、はい!よろしくお願いしますね士道君!じゃあ自己紹介をお願いします。出席番号順で」
俺が返事したことがよっぽど嬉しかったのか、微笑みながら言う。これは山田先生、生徒になめられてるパターンだなこれ。
それにしても居心地の悪い空間だこと、女子の視線が一定数こっちに向いてるってのは。
(最初からこの調子だとこの先が心配だな。同性が一人いるのがせめてもの救いか?
いやアイツが動かさなきゃこんなことにはなっていないか…)
「
「は、はいっ!?」
「っ!?」
山田先生が大きな声を上げ、織斑一夏と呼ばれた男が、驚いたような声を上げ、ビクリと肩を跳ねさせる俺。
案の定その様子に、周りはくすくすと笑い声が聞こえ、織斑は居心地悪そうに肩をすくめた。
そう、今はこれから勉学を共にするクラスメイトに自己紹介をする時間、それすなわち…
「マジでいってる……?」
この空気の中で俺も自己紹介すんのか?そりゃあ順番が来たらやらなきゃいけないわけなんだけど、キッツいなぁこれ。
「あっ、あの、お、大声出しちゃってごめんね!?も、もしかして怒ってるかな? ゴメンね!でも、自己紹介、『あ』から始まって今『お』の織斑くんなんだよね。だからね、自己紹介してくれるかな?だ、ダメかな?」
うーん、この弱腰な所が生徒になめらているのではなかろうか?きっと新米教師なんだろうが、もう少ししっかりして欲しいものである。そんな先生に織斑は困ったように返事をしていた。
「あの、そんなに謝らなくても……ていうか、自己紹介しますから、落ち着いてください」
「ほ、本当? 本当ですか? や、約束ですよ!」
ガバッと顔を上げ、織斑くんの手を取って熱心に詰め寄る山田先生。
…先生、落ち着いてください。織斑に視線が集まってます。
織斑に向けて視線が一斉に集まりながらも、困ったように頬を掻きながら自己紹介を始めた。
「えー、えっと……織斑一夏です。よろしくお願いします」
よし、名前は言えたな。そんな自己紹介では十代女子たちが満足するわけがなかろうて。もっと喋ってオーラが半端ないじゃないか。クラスメイト達からは『えっ? もう終わり?』とか、『何か他にも喋ってよ』的な感情が込められた視線を送られるだけである。おい、もうおわりじゃないよな?
覚悟を決めたのか、織斑は深く息を吸い込んで溜めをつくり、
「以上です」
ガタタタッ!芸人並みに思わずズッコケる女子数名。なんとか踏み留まる女子数名。そして勢いよく頭を机にぶつけた俺。
もう少し自己紹介しなさいよ!期待したやろ!
そんな織斑の後ろに近づく人物が一人、そして手に持った出席簿を目にも止まらぬ速度で振り下ろし織斑くんの頭を直撃した。
「げぇ、関羽!?」
「誰が三国志の英雄だ、馬鹿者」
織斑の頭に炸裂する本日2度目の出席簿アタック。出席簿から出ていい音じゃないだろそれ。
トーンの低い声。うーんあの人には逆らわないほうが良さそうだ。
「あ、織斑先生。会議はもう終わられたんですか?」
「すまなかったな、山田君。クラスへの挨拶を押し付けてしまって」
あれ?さっきまで頭を叩いてたとは思えない、とても柔らかく優しい声。
「い、いえ、副担任ですから、これくらいはしないといけませんから……」
山田先生は先生で、はにかんでいらっしゃる。
「そう言ってくれると私としても助かる。さて諸君、私が担任の織斑
なんと無茶苦茶なことだろう。これでは『教師』ではなく『鬼教官』である。
「「「キャーーーー!!」」」
「ッ!?」
クラス中の女子生徒達が一斉に黄色い声を上げた。耳が死ぬっ!!このクラスの女子は声帯に兵器でも仕込んでいるのか!?
「本物の千冬様よ!」
「ファンです!」
「わたし、お姉様に憧れてこの学園に来たんです! 北海道から!」
「きゃーー! お姉様のためなら死ねる!」
「抱いてー!」
気づきたまえ女子の皆さん。他のクラスに迷惑だし肝心の織斑先生の顔が引き攣っているぞ。
「……はぁっ。毎年毎年、よくもこれだけ馬鹿者共がたくさん集まるものだ。ある意味感心するぞ。それとも何か?私のクラスにだけ馬鹿者だけを集中させるように仕組んでいるのか?」
しかし、これだけ言われても女子達は鎮まるどころか更に騒ぎ立て始めた。
「お姉様、もっと叱って!」
「もっと罵って!」
「でも時には優しくして!」
織斑先生に会えてうれしいのはわかったから、少し声のトーンを落とそうね。何回でもいうけど迷惑だから。
「で、だ。お前は挨拶も満足にできんのか」
「千冬姉、俺は――」
本日三度目の出席簿が織斑の頭に振るわれた。
名字が一緒な時点で気になってたけど、二人は姉弟だったみたいだな。織斑一夏の驚き様からして、事前に知らされていなかったのかな。
「学園では織斑先生と呼べ」
「……はい、織斑先生」
そのやり取りが後押しになったのか、周りから次々と疑問の声が上がっていく。
「え……?ひょっとして織斑くんって、あの千冬様の弟なの……?」
「それじゃあ、世界で男で『IS』を使えるっていうのも、それが関係してるのかな?あ、でも、もう一人いるよね」
「もしかして、もう一人も家族が凄腕のIS操縦者なのかしら?」
想像を膨らませているところ悪いが、俺の家族にはISパイロットはいないんだ、企業の関係者ではあるけども。
「さて、SHRは終わりだ。と言いたいところだが、このクラスにはもう一人男性操縦者がいるんでな。最後に自己紹介をしておけ士道」
「よろしいので?」
「むしろ今言わんと休み時間が無くなるぞ」
「それもそうですね。ちなみにあの事はいってもいいでしょうか?」
「構わん」
「では、失礼して…。」
うーん。自己紹介から逃れられるかと思ったけどそう甘くはなかったか。
俺が席を立つと視線がこっちに集まる。この感覚はなれないなぁ…
「俺の名前は士道優紀といいます。偶々ISが動かせてしまったのでこのIS学園に入学しました。出身は千葉のほうです。勉強はそこそこ出来ます。趣味は読書です。一応企業所属のパイロットをやってます。これからよろしくお願いします」
そう言って俺は頭を下げる。頭を上げて着席。すると織斑先生登場時並みの爆音が教室内響く。
「もう企業にスカウト済みなの!?」
「ち、ちなみに所属企業は?」
「うちの会社『Re:RISE』だよ」
「え?え?ちょっと待って士道君『Re:RISE』ってあの!?」
「うん。あの『Re:RISE』であってると思うよ」
「『Re:RISE』って今注目のIS企業じゃん!!」
「ちょっと待って、今うちの会社って言わなかった?」
「うん。言葉の通りで俺は『Re:RISE』の御曹司ってことであってるよ」
うん。騒がしいなっ!!このクラスはっ!!俺が原因なんだけどさっ!!
この後結局質問攻めにされ、俺の休み時間は消えた。
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