Moon Knights IS~Prayer of a Rabbit Fury~外伝 境界の虹 作:アマゾンズ
異世界からの通り道によって現れた者と邂逅が戦いの始まりだった。
※この作品は雷狼輝刃さまの作品、『インフィニット・ストラトス 遥かなる虹の輝き』とのコラボ作品となっています。
雷狼輝刃さまのタイトル作品は完結されておりますが、こちらでの世界でちょっとした事件を書いていきます。
臨海学校を終え、アシュアリー・クロイツェル社の模擬戦闘用の地下アリーナにおいて、一夏は鍛錬をしつつ、ユニコーンシステムを自力で発動させる事を6回に1回は可能となっていた。これも一夏自身が訓練を怠らなかった成果だろう。だが、それ以上に自身の力が追いついていなかった。
「はぁっ!!はぁっ!!やっぱり、ユニコーン・システムを・・・持続するのが・・・難しい・・・」
そう、発動できるようになってはいるが発動後の持続時間を維持するのが困難なのだ。覚醒した直後は人間の無我の境地、スポーツ科学的な名称で言えば「ゾーン」状態で発動していた為、戦闘中の疲れや持続時間を長く継続する事が出来たのだ。
「休息をとったらどうだ?流石にクラルスも限界に来てるぞ」
「あ、ああ・・・そうする」
「しかし、ユニコーン・システム・・・束さんから聞いてるけど『無限の宇宙において自然の調和を構成する神経』か。最も一夏の感覚や機体反応速度を強化するようだけどな」
コンピューターのキーを叩きながら、雄輔はクラルスのユニコーン・モードのデータを打ち込んでおり、政征は一夏に肩を貸して休憩用のベンチに座らせた。
「ほら」
「ああ・・ありがとう」
一夏は政征から受け取ったスポーツ用飲料を受け取り、がぶ飲みしてしまう。本来ならしないことだが、よほど身体が乾いていたのだろう。
「っはぁ・・・体力はなんとかなるけど、問題は精神力だ」
「?どういう事なんだ?」
「ユニコーン・システムは俺の感覚まで研ぎ澄ましてくるんだ。相手が何処に居て、何をしてくるのか、どんな攻撃を仕掛けて、どんな回避を、どんな動きすらもわかってしまう」
「ユニコーン・システムの起動中のデータでお前の脳波が、普段以上に活性化していたのはそのせいか」
「なるほどな、簡単に言えば自分の周りの情報がまるでコンピューターの計算のように流れ込んでくるわけか」
「ああ、俺の脳がコンピューターなら、周りはアップデートやダウンロードされてくるデータだ。処理しようとしてフル稼働しているんだよ」
「クラルスを覚醒させた今のお前だからこそ、耐えられるって訳だな。そんな情報の濁流を受けたら、並みの人間や俺達でも発狂しててもおかしくない」
冷静な意見に政征は苦笑しながら頷き、雄輔はカチャカチャとコンピューターのキーを叩き続ける。
「なぁ、二人はフューリーっていう宇宙人の血筋なんだろ?シャナ=ミアさんもその皇女だって言ってたし」
「ああ、それがどうかしたか?」
「いや・・・考えてみると凄い奴らと親友になったなって」
「?」
「春始が言ってたニュータイプの感性・・ってやつ?これが発現してから俺は自分を偽らないとって考えてた。けど、俺は政征、雄輔、シャナ=ミアさん、フー=ルー先生以外のフューリーと会ってみたいんだ」
「それが新しい目標か?」
「ああ、戦いが終わった後・・・だけどな」
「良いじゃないか、外宇宙は未知の塊だしな」
そんな風に話していると、一夏は自分の頭の中に何かが入ってくる感覚を味わった。
「二人共、何か落ちてくるぞ!この方角は・・・丁度、廃墟がある場所だ!」
「なんだって!?」
「なら、すぐに急行した方が良さそうだな、急ごう!」
三人はそれぞれのラフトクランズを身に纏うと、一夏が予想した場所へと急行した。
◇
一夏達が駆けつける三十分前、其処には黒い渦のようなものが空に現れ、そこから落下した二つの物体が倒れていた。一つは空中に浮かんでおりISの操縦者で女性のようだが、すぐに退散してしまった。
「くそ・・・逃げられたか。機体損傷が激しくて・・・追跡不可能・・・か」
「ゴメン・・・私も、もう・・・」
落下の衝撃と渦の中にいた影響か、二人はそのまま意識を手放してしまい、そこから三十分後に三騎士とタバ=サが駆けつけることになる。
そして時間は駆けつけた時刻に戻る。
「あそこか、ん?これは・・・ヒュッケバイン!?いや、それをモデルにしたIS機体か」
「待ってくれ、この隣にいる人・・・束さんじゃないのか!?」
「まさか・・・!いや、ひょっとしたら次元境界線が乱れてるこの世界ならありえるか」
「おーい、三人とも!」
遠くから声をかけてきたのは白衣姿の篠ノ之束こと、タバ=サ・レメディウムであった。ワームホールのエネルギー感知をしてここに駆けつけてきたのだろう。
「タバ=サさん!」
「おやおや?全身装甲のIS?それにヒュッケちゃんにソックリだね?おまけに、私・・・かな?三人とも、この二人をアシュアリー・クロイツェル社にある私のラボに運んでくれるかな?」
「分かりました」
「じゃあ、俺と雄輔は機体を纏っている方を」
「俺はもうひとりの束さんを運びます」
「頼むね」
三騎士は落下してきた二人の人物を回収するとアシュアリー・クロイツェル社へタバ=サと共に帰還していった。
◇
「信じられない・・・こんな事ってある!?」
「どうしたんですか?」
「全身装甲を纏っていた彼を見てみて!」
タバ=サは興奮した様子で三騎士にISを解除され、眠っている男性を見た。その顔に三騎士は驚愕の表情を表に出した。
「え・・!お、俺!?」
「一夏と同じ顔・・・!」
「まさか、コイツは?」
そう、その顔は隣にいる織斑一夏と全く同じ顔だったのだ。髪色や機体などから別人ではあると確信できるが、政征と雄輔は1つ気になる事をタバ=サに聞く事にした。
「タバ=サさん、この男の身分証明が出来る物ってありましたか?」
「まーくんは相変わらず抜け目がないね?あったよ、私達が知ってる人だった」
タバ=サから見せられた身分証明の物には『シュート・アルカンシェル』という名前があった。
「シュート・アルカンシェル・・・・という事は『もうひとりの束さん』の名はタバネ・アルカンシェル・・・」
「何かしらの要因でこの世界に跳ばされてきたのか・・・?」
「そうなるね・・・まさか、並行世界の私に再会する事になるなんて」
「お、おい!三人だけで納得しないでくれよ!」
「あ、ごめんね?いっくん」
一夏の不服は最もだ。何せ自分以外の全員が眠っている相手を知っているのだから。
「この二人は並行世界から来た異邦人だよ。私達も彼らの世界に跳ばされて、そこで知り合ったの」
「並行世界・・・前に2人が話してた『極めて近く、限りなく遠い世界』ってやつだっけ?要約すると『もしも・・・』の世界」
「正解だ」
話をしているとベッドに眠っている二人が、呻きながら目を覚ました。怪我はタバ=サの治療用ナノマシンとアシュアリー・クロイツェル社が贔屓にしているフューリーのドクター達によって完璧な手当がされている。
「う・・・此処は!?」
「目が覚めたか?久しぶり、という方がいいか?シュート」
「お前は・・・赤野!?」
「俺もいるぞ」
「青葉まで!?という事は此処は・・・お前たちの世界か?」
「正確には違うけどな」
「う・・う~ん」
それと同時にタバネの方も目を覚ました。天井を見ながら目をパチパチしてるが直ぐに起き上がってタバ=サを見ている。彼女の掛けているメガネで誰なのかを察した様子だ。
「あらら、意外な再会になっちゃったね?タバ=サ」
「相変わらず落ち着いてないね?タバネ」
お互いに『篠ノ之束』という存在なのだが、タバネの方はまだまだ子供っぽさを残した言動が多く、逆にタバ=サの方は落ち着きを学んだようで大人の余裕が出ている。
「ふふん、それは私だから仕方な・・・!」
「どうし・・・!?」
「なんでお前が居る!?織斑!」
「本当だよ・・・」
シュートとタバネは人が変わったように一夏に対して、友好的ではない表情を向けている。
「ま、待ってくれ!一体何の事だ!?」
「とぼけるな!!お前は!」
シュートが怒号を発しようとする前に政征と雄輔がそれを止めた。タバネはタバ=サが制していた。
「赤野、青葉!!何を!?」
「待て」
「コイツはこの世界の『織斑一夏』だ!!お前達の知る『織斑一夏』じゃない!!」
「!?」
「あ、そっか・・・並行世界の私がいるように、並行世界の織斑一夏が存在していても不思議じゃないよね」
タバネはもう一人の自分であるタバ=サの存在から、別の世界の『織斑一夏』の存在を認知した。だが、シュートは未だ納得していない様子だ。
「なら、俺と模擬戦をして欲しい。俺の機体は?」
「修理は完了してるけど、明日にした方が良いんじゃないかな?」
「確かに、コンディションが万全とは言えないものな。今日は休んで明日にしよう」
◇
そして、翌日。学園の方には機体開発のための休ませて欲しいと伝え、欠席している。そして今、アシュアリー・クロイツェル社の地下アリーナにおいて、シュートと一夏が対峙している。
「さぁ、始めようか」
「ああ、この戦いでお前を納得させてみせる」
シュートは愛機である『リュミエール』を展開する。全身装甲化しているがその姿は正にヒュッケバインそのものであり、歴戦の戦士である事を告げている。
「シュート、お前の世界の『俺』は余程、女誑しだったようだな?」
「ッ!?」
「それに、自分の考えこそが唯一無二で正しいと思い込んでたのか。とことん救えない奴だな」
「なっ!?」
シュートは目の前にいる『一夏』に対して一瞬だけ、不気味に感じた。自分の中にある『織斑一夏』に対する印象を初対面であるにも関わらず、見抜かれた為だ。
更には自分の世界の『織斑一夏』を目の前の『一夏』は首を横に振って拒絶し、否定してきた。
「次は俺の機体を展開する番だな・・・!来い、クラルス!!」
その声に応えるように純白に近くとも灰色の要素を持った騎士の機体。ラフトクランズ・クラルスを展開した。その威風堂々とも言える姿にシュートは息を飲む。
自分の世界の『織斑一夏』が『凡愚』だとすれば、自分の目の前にいる『織斑一夏』は『騎士』そのものだ。己を鍛えてきた事を伺える体つき、実戦を経験した事を伺える瞳、そして、戦略や知能を蓄えてきた自信。
「(間違いなく、油断したらやられる!)それが、お前の機体か?」
「そうだ、政征と雄輔・・・そしてタバ=サさんが俺の為に授けてくれた剣!これが清浄の騎士の証、ラフトクランズ・クラルスだ!」
「ラフトクランズ・クラルス・・・だと!」
◇
別の場所で見ているタバネも驚きを隠せなかった。無論、三騎士のうちの二人とタバ=サは全く驚くことはない。
「ど、どうして!?どうして、アイツが・・・二人と同じ騎士の機体であるラフトクランズを!?」
「私が作り上げたの。だけど、あの機体はそこに居る二人のラフトクランズのデータを見せてもらって、再現した機体よ」
「それって、レプリカって事?」
「そう、だけどオリジナルのラフトクランズの武装と武器の威力や出力、その全てが同等だよ。それを今の彼は機体を使いこなせる領域まで来てる」
「嘘!?」
「始まったようだし、見ていればわかるよ」
◇
「行くぞ!」
「来い!」
ラフトクランズ・クラルスを身に纏った一夏はソードライフルを手にすると、ライフルモードからの単発モードに切り替え、僅かに推進力を使って上昇し制動をかけ突撃すると今まで出来なかったオルゴンライフルを牽制を2発単発モードで撃ち、最後にガンスピンをした後、3発目をシュートへ向けて放った。
「!!!」
方向性を見抜くことでシュートは急上昇し回避したが、その回避を予測していたかのようにオルゴンクローが迫ってくる。あのクローに掴まれたらマズイ!一瞬にしてそう判断したシュートはギリギリの所で急降下する事で回避を成功させた。
「(織斑が射撃だと!?しかもかなりの精度だ、並みのスナイプ技術なんか目じゃない!間違いない、この世界の織斑は俺の世界で言う所のモンド・グロッソに出場出来る技量を持っている!!)」
「どんな相手でも・・・俺は容赦しない。清浄なる世界なんてものは本来、無い。破壊して破壊して間違いに気づいて立て直すしかない。清浄の騎士という称号を持っていても所詮は矛盾しているんだ」
「え?」
「だから、俺の機体色は純白じゃなく、僅かに黒を交えた灰色に近い白なんだ。一見、正しくても他からすれば間違っていると言われる。だから、俺は自分で正しいと思った事を後悔はしない!」
「オルゴン・マテリアライゼーション!!」
ソードライフルをソードモードに切り替えると同時に刃を出現させ、騎士の礼節をしたと同時にツインアイが輝き突撃する。シュートはロシュセイバーを手に、一夏のオルゴンソードを受け止めるが僅かに押されてしまう。
「ぐっ!?剣が、剣が重い!?」
「俺は騎士の誓いと大切な人を守る為なら、自分の手を汚す事を厭わない!」
闇雲に振るっている様で、一撃一撃が的確な斬撃を繰り出してくる事に再びシュートは驚く。自分が如何に『織斑一夏』という存在を自分の世界と同等であるだろうと甘く考えていた事を恥じる。だが、そんなシュートを容赦なく一夏は攻撃する。
「オルゴンキャノン!広域モード!!」
両肩にある砲口と胸部部分の砲口が展開され、シュートを完全に狙っている。その三つの砲口からチャージされた広域エネルギーが容赦なく向かってくる。
「俺は、負けられない!G・テリトリー!起動!!」
重力による防壁を出現させ、最大の防御をしたシュート。それでも一夏の攻めはとどまることを知らなかった。
次回は戦いの途中から始まります。