Moon Knights IS~Prayer of a Rabbit Fury~外伝 境界の虹   作:アマゾンズ

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並行世界において機体開発計画をする


第三話 もう一匹の兎を守る馬車と巨人

タバネとシュートはタ=バサの計らいで、幽霊会社であるファニーラビット社の預りとなった。無論、ネット上にあるダミー会社だが、個人経営しておりそこの職員という事で申請は通っている。

 

「さて、問題は君の機体だね」

 

「俺の?」

 

「そう、今のままだと壊れるからメンテナンスしないといけない。けれど、こちらと向こうの技術は違うから協力して貰わないとメンテナンスすらも出来ないよ」

 

「うーん、なるべくなら技術流出は避けたいところだけど、背に腹は変えられないよね」

 

「その面は安心して構わないよ。私が主任として機体情報は守る」

 

タ=バサからの言葉にタバネはキョトンとして、シュートはほんの少し心臓が高鳴った。タ=バサはニッコリと微笑み、タバネの手を両手で包むと優しく握った。

 

「貴女の力を貸してくれる?彼の機体をメンテナンスする為に」

 

「う、うん」

 

二人は機体のハンガーへ向かい、シュートは置き去りにされてしまった為、男性側の三人と合流しようとラボを出て行った。

 

途中途中で会社の社員の方々に場所を聞いて目的地へと向かう中、シュートは驚きの連続だった。

 

「(この会社の人達の大半はフューリーっていう外宇宙から来た種族だって聞いてるが、地球人と何ら変わりはないんだな)」

 

三人を発見するとどうやら、ラフトクランズに関する連携の事を話し合っているようだ。視線に気付いたのか三人は手を振ってこちらへ来るよう促している。

 

「休めたか?シュート」

 

「ああ、織斑か。ちゃんと休めたさ。それと済まなかった・・・」

 

「大丈夫さ、並行世界から来たのなら勘違いしても仕方がない事だろう?謝罪は受け取っておくよ。それより」

 

一夏は政征と雄輔がいるコンピューターのモニターに案内し、連携や機体状態を見せる。シュートは自分の世界で作戦参謀のような役目も担っていた為、ラフトクランズの機体性能に関するデータを見せてもらう事にした。

 

「これが・・・ラフトクランズの機体性能」

 

「そう。正式名称は『騎士機ラフトクランズ』それにリベラ、モエニア、クラルスという名称をつけて区分けしているって訳」

 

「けど、この機体性能・・・初心者や一般クラスじゃない」

 

「この機体は名前の通り『騎士』クラスの奴じゃないと搭乗を許されない、例えそれが女性であってもな」

 

「・・・じゃあ」

 

「クラルスは・・って聞きたいのか?」

 

シュートの疑問は最もだろう。騎士として他の二人は当然としても、一夏は立場を得ていないはずだ。

 

「クラルスは騎士機として登録されていないんだ。ラフトクランズという名称しか持っていない」

 

「え?」

 

「クラルスはラフトクランズだが、地球製のレプリカなんだよ」

 

「それって、コピーって事なのか?」

 

「ああ。だが、機体性能はラフトクランズと同等だ。地球とフューリーの技術、双方が使われているハイブリッド機でもあるしな」

 

ハイブリッド機と聞いて益々、シュートの中で驚愕の感情が湧き上がる。別宇宙の機体をこの世界の地球は再現しているのだから当然だろう。

 

「じゃあ・・・」

 

「聞きたい事は大体分かる。言っておくがハイブリッドと言っても機体パーツが地球制で動力やエネルギー部分がフューリー製なだけだからな?」

 

「いや、充分凄すぎるだろ?パーツが地球製って事はISのパーツを流用出来るし、修理もしやすい」

 

「それだけじゃないけどな・・・」

 

一夏が小声で言ったのは誰にも聞こえなかった。そんな中、政征と雄輔がシュートを呼ぶように手招きしている。

 

それに応えるように近づいていくとコンピューターのディスプレイを見るよう催促され、覗き込むと彼は驚きの声を上げた。

 

「こ、これは!?」

 

「シュートの機体をこの世界で強化するプランさ。あの機体、強化改造しておかないとスクラップになるかもって、タ=バサさんが言ってたからな」

 

「だとしても、このプラン」

 

そう、それはシュート自身が考えていた強化プランと似ていたのだ。だが、その強化プランは一から作り上げるのではなく、元からある機体を修復・強化改造するというのものであった。

 

「名前はリュミエールGX。ロボットゲームからヒントを得て、そこに出てくるヒュッ○バインMk-IIとMk-IIIの中間層を目指した機体だそうだ」

 

「こちらの世界のタバネさんは本当に科学者として先を行き過ぎてるな・・・」

 

「あの人の事だからマ改造するかもな」

 

「シャレにならないっての・・・」

 

 

 

 

 

そんな会話を四人がしている頃、二人の『篠ノ之束』つまり[タバネ・アルカンシェル]と[タバ=サ・レメディウムの二人だ。資料用の[リュミエールGX]ではなく、本格的な設計図が記載されているデータを見ていた。

 

「どう?これが貴女の愛しの彼への修理を兼ねた強化プランだよ」

 

「す、すごい・・・私じゃ思いつかなかった視点だよ!それにしてもゲームから着想を得るなんて思いもしなかったな」

 

「最近のロボットゲームもバカにできないんだよ。無論、技術再現なんかやったらマズイからね、それよりも、そちらの技術でプランを練りたいんだけど?」

 

「あ、ゴメンゴメン。武装は問題ないんだけど、彼の機体にある特殊兵装である重力装置を使って何か出来ないかな?」

 

「湾曲現象を機体周辺だけに引き起こして、レンズのように虚像を誤認識させるっていうのは?」

 

「!残像による分身ってところかな?」

 

「そこまで大げさなものじゃないけど、湾曲時にチャフを利用すればセンサーをごまかせるから」

 

「やっぱり、発想力ではそちらの勝ちだね・・・」

 

「設計に関してはそちらが上よ」

 

「お互いにね?」

 

「そうね、それとそろそろ来る頃かな」

 

「え?」

 

研究室の扉が開き、中へ入ってきた人物にタバネの方が目を見開く。その相手は最も会いたくて、最も嫌悪した相手であった。

 

「姉さん、一体何用・・・・え、えええええ!ね、姉さんが二人!?」

 

「あー、箒ちゃん?先ずは私の話を聞いてくれるかな?」

 

「あ・・・はい。眼鏡を掛けている方が私の本当の姉さんなのか?では、もう一人の姉さんは?もしや?」

 

「やっぱり、あの二人から特訓されているだけあって察しがいいね?そう、こっちの私は[並行世界]の私だよ。名前は[タバネ・アルカンシェル]」

 

「よろしく・・・ね・・・っ!?」

 

「はい、並行世界の姉さん」

 

タバネはこの世界の箒と握手した瞬間、その手の感触に内心驚いた。彼女の手の平の皮がまるで、農業を毎日やっている人間のようにシワが深く、皮が厚くなっており、たくさんの竹刀タコが出来ているのが分かった為だ。

 

これだけでもかなりの厳しい訓練をしている事が伺える。それによく観察すると、うっすら日に焼けており、切り傷や擦り傷の痕。剣道をしているだけなら到底、身に付ける事が不可能な強さに満ち溢れた目つき。

 

一つ試そうとタバネは手を離すと同時に一つ問題を出した。

 

「箒ちゃん・・・?この問題に答えてくれる?[学園の土地はあらゆる国家機関に属さず、いかなる国家や組織であろうと学園の関係者に対して一切の干渉が許されない]の項目は?」

 

「IS学園、特記事項第二十一、ですよね?生徒手帳にも書かれている事です。それが何か?並行世界の姉さん」

 

「!!う、ううん・・・答えられるならそれで良いんだよ。じゃあ・・・次は」

 

タバネは思いつく限り、ISに関する質問や時に学生の問題を口に出して箒に答えてもらった。その結果、全てに解答をもらってしまい、開いた口が塞がらなかった。この世界の箒は武だけではない、知能も鍛えられていた為だ。

 

「あの・・・つかぬ事をお聞きしますけど、並行世界の姉さんの世界に居た私は、かなり酷かったのですか?」

 

「それは・・・・」

 

「教えてください。私は平気ですから」

 

タバネはタ=バサを見た。彼女も頷いて承諾の意思を見せている。タバネは決意したかのように深呼吸し、自分の世界に居た箒に関しての話を始めた。それを聞いた箒は驚いたものの「やはりか・・・」と察した様子でもあった。

 

「あまり驚かないんだね?」

 

「並行世界の私に関しては、既に聞いている事があるので。けれど・・・並行世界の姉さんの世界の私は傲慢で、一夏のことしか考えておらず、己自身を磨こうとしないのだな・・・そんな女は好いた男に見向きもされなければ、ただの幼馴染で終わってしまうだろうに」

 

「?よく見ると箒ちゃん・・・ナチュラルメイクをしてるね?口紅も薄くだけど引いている。オシャレに気を遣ってるのかな?仄かに黒髪から椿の香りもするし」

 

「バレましたか、同級生などに聞いてケガの痕を隠すために化粧の仕方を教わっているんです。けれど私は派手な化粧よりも素材を生かすような化粧が良いと言われてしまって、薄化粧になってしまって」

 

「ふふ、心技体を鍛えるだけじゃなくて『女』としての自分も磨いてるんだね」

 

「ふ・・・私は好いた相手のために、努力を惜しみません」

 

「どう?こっちの箒ちゃんは?」

 

「正直に言って、ものすごく好感が持てちゃうよ。私の知ってる箒ちゃんとは全く違う」

 

決して出会う事のなかったタバネと箒。全くの同じ人間でも並行世界の住人、交わる事のなかった世界が繋がって姉として妹が成長し、高みを目指し続けている姿を見ることが出来たのは本当に嬉しかった。

 

「あ、今日はこの会社の方に特訓していかないか?と誘われていたので、失礼します」

 

二人は箒が出て行く姿を見送った後、再び機体開発の設計図に目をやる。タバ=サはそこでタバネにある提案を出した。

 

「タバネ、この世界での貴女の機体を開発しない?」

 

「え!?でも・・・・」

 

「大丈夫、破棄する方法なんて幾らでもあるから。それに機体データは元の世界に戻る事になれば渡すよ」

 

「うん・・・分かった」

 

「『巨人』と『白雪の女王』・・・どちらにする?」

 

「メインは『巨人』かな?一応サブとして『白雪の女王』も」開発しておきたい」

 

「OK、早速取り掛かりましょうか」

 

二人はシュートの機体の修復及び改造と並行しながら、タバネの専用機を開発する事に着手した。フューリーの技術を向こう側の技術で再現し、フューリーの技術とは異なるものを作り上げていった。




次回は敵側です。
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