Moon Knights IS~Prayer of a Rabbit Fury~外伝 境界の虹   作:アマゾンズ

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敵の動きの一部。

三騎士(ドライリッター)と異邦人の二人の交流会。

人の亜種を手助けする物質。


第四話 法皇の逆位置

シュート達の世界から逃亡してきたコードネーム『Hierophant』は今、自分の素質であった『念動力』の力を悪用し、この世界での戸籍を作らせていた。

 

彼女の前に運悪く現れてしまったのが、女性利権団体の上層幹部の一人であった。

 

催眠術により操られ『Hierophant』は戸籍と偽名というこの世界で必要な基盤を手に入れてしまった。

 

念動力は別名でサイコキネシスとも呼ばれ、超能力の一種ともされている。更には念による催眠術は掛けた本人にしか解くことは不可能だ。

 

「とりあえず、この世界の戸籍は手に入れたわ。後は後ろ盾と壁を造っておかなきゃね」

 

『Hierophant』改め『鏡山 法子』は洗脳した上層幹部の力を使い、女尊男卑が蔓延するIS委員会のアドバイザーとして紹介された。

 

「それでは鏡山さん。我々への助力・・・頼みましたよ」

 

「もちろんです。此処までして頂いたのですからご期待に応えましょう」

 

『Hierophant』は内心でほくそ笑んでいた。追撃された際に目覚めた力がこんな形で役立つとは思わなかったのだ。

 

「(フフフ、せいぜい私の駒となりなさい。この世界を私の居た世界と同じ形に作り変えてみせるわ)」

 

この世界のIS委員会は未だに男尊女卑のタカ派が支配している。平等権を主張するハト派は姿を隠しており、タカ派に追従している形で存続している。

 

謂わば、遥か昔に禁教令が敷かれたキリスト教と似た形だ。ハト派は隠れキリシタンと呼ばれていた信教者のように陰に隠れ、自分達の理想を纏めている。

 

IS委員会のメンバー達は『Hierophant』が洗脳した上層幹部によって連絡を受け、重要な事を話し合いたいとの事で緊急会合が行われた。

 

「皆様・・・お忙しい中お集まり頂き、ありがとうございます」

 

「構いませんわ、それで重要な事とは?」

 

「はい、皆様に新しいメンバーをご紹介しようと」

 

「?」

 

「初めまして『鏡山 法子』と申します」

 

「鏡山?もしや、再建を果たした鏡山コンツェルンの!?」

 

「はい、それであっています」

 

「まさか、そんな方が私達の味方になって下さるとは心強いですね」

 

鏡山コンツェルンは実在する会社であり、傾いていた経営を『Hierophant』が再建させ当主となったのだ。無論、催眠を利用したが、経営の手腕は自分が元々居た世界において発揮しており、所属していたグローリーキングダムのダミー会社の社長を務め、金銭面での手腕を発揮していた。

 

催眠を使った相手は前社長とその家族に対してだけであり、経営手腕を発揮する事で社員の信頼を勝ち取りパワハラ・モラハラを行う男女の社員は徹底的に脅迫まがいの話し合いを行って、自主退社を促しコンプライアンスを確立させ、風通しを良くしたのだ。

 

これらの行動は社員の信頼を勝ち取るためであり、仮面に過ぎず味方は多いに越したことはない。という考えから実践したものだ。

 

「IS学園において危険視しているものがあります・・・」

 

「学園の三騎士と呼ばれている男性操縦者・・・ですね?」

 

「そう、彼らこそこの社会における異物なのです!!」

 

女尊男卑が蔓延るこの社会、更には女性が扱うことの出来るIS。それを女尊男卑の象徴とし男を支配する事を目標にしている。

 

その障害となっているのが『IS学園の三騎士』と呼ばれている男性操縦者達だ。赤野政征、青葉雄輔、織斑一夏の三人が呼ばれる。

 

男性でありながらEX世代とされるIS機『ラフトクランズ』を駆り、その実力は世界レベルに迫るともされており、織斑一夏に限っては不可思議な現象を引き起こし、それが男性の希望となっていた。

 

IS委員会のハト派は臨海学校の時の映像を見て、男性も女性も関係無い。互いに寄り添える象徴であると確信を得た。

 

しかし、表立って活動できないが故にコンタクトを取ろうとしてはいるが止められてしまう。歯がゆい気持ちを抑え地下活動を続けるしかないのがハト派の現状だ。

 

「三騎士の他にもう一人の男性操縦者も居たでしょう?」

 

「織斑春始の事ですか?あの男は所在が分からなくなっていまして・・・」

 

「あの男を研究所に送れれば、研究は捗りますのに」

 

「ふふ、男に拘らずとも手段はありますよ。メールにてお送りした資料をご覧下さい」

 

『Hierophant』が送った資料に記載されていたのは人間を人工強化するものであった。資料を捲り、読み進めるとネット会議しているメンバーは難しい顔をしていた。

 

「これは・・・」

 

「超能力を人工的に付与させるプロジェクト・・・ですか」

 

「その通りです。力を欲する操縦者などに行えば問題ないでしょう。実験体はたくさん居ますからね」

 

「・・・」

 

資料を見る限り、これは公にされたら自分達が破滅するだろう。だが、隠匿できれば最強の兵士を手に出来る事は確実だ。

 

「では、裏側は私に任せてもらいましょう。鏡山さんには表側をお任せしたいのですが」

 

「ええ、もちろんです。資金提供も忘れません。では、実験や人材提供はお願いしますね」

 

『鏡山 法子』こと『Hierophant』はこれによって強化兵士を量産させる手はずを取った。会議を終え、提供されたセキュリティと防音対策がされているマンションへと帰宅する。

 

「ここでの準備は整ったわね・・・後は」

 

購入したパソコンに『自分の世界』から持ち出したUSBメモリをパソコンへ刺し、フォルダを開く。そのフォルダには『シュート・アルカンシェル』と『タバネ・アルカンシェル』の顔写真が入っていた。

 

「っ・・・・・!!」

 

二人の写真を見た瞬間、彼女の顔が憤怒に歪む。自分の居場所であったグローリーキングダムを壊滅させ、最高傑作となりそうであったプロジェクトすら白紙にさせた。

 

そのプロジェクトこそ、人工超能力兵士計画である。あまりにも非人道的であった為、誰にも理解はされなかったがグローリーキングダムが拾ってくれ、プロジェクトを完成間近にまでこぎつけたのだ。

 

しかし、それを阻止したのが自分の世界で驚異であった『シュート・アルカンシェル』と『タバネ・アルカンシェル』を筆頭に現れた各国の代表候補生達だったのだ。

 

結果、グローリーキングダムは壊滅し自分は巻き込まれる前に転移装置によって逃亡した。自爆装置によって転移装置を破壊したはずであったが、完全破壊が出来ずに転移可能なエネルギーが残り、残滓を潜って彼らは自分を追ってきたのだ。

 

「必ず復讐してやる・・・私の居場所を奪い取ったお前たちに必ず!!!!!」

 

カラーコピーされた二人の顔写真をズダズダに切り裂く。彼女は一度二人の顔を見るとこうやって感情を爆発させるのだ。

 

「はぁはぁ・・・それに・・・この世界にはまだまだ利用価値が有る人間が沢山いるものね」

 

そうつぶやいて落ち着きを取り戻した後にパソコンのフォルダから写真を表示する。一つは盲目である事を示すように瞼が閉じられた少女、もう一つは道着を着た少女の隠し撮りされた写真だった。

 

「この世界でも貴女を利用させてもらうわ・・・ククク」

 

 

 

 

 

『Hierophant』が次のターゲットを決めている中、三騎士はシュートとタバネとの友好会も兼ねて、タバ=サの自宅兼研究室でゲームをしていた。やっているのはレトロ格闘ゲーム『ギル○ィギアXX/slash』だ。

 

政征の持ちキャラは扱いの難しい『聖騎士団ソル』雄輔はクセのない『カイ・キスク』一夏はいなしがしやすい『御津闇慈』シュートは攻め込みが強い『ソル=バッドガイ』になっている。

 

「よし、繋がった!此処だ!」

 

『タイ!』『ラン!』『レイブッ!!』

 

「なああっ!?」

 

画面の中のキャラが相手を倒し、大剣ののような鉄塊を地面に突き刺す。そしてそのまま決着後のセリフを言い放つ。

 

『手の内は終いか・・・!』

 

『1P YOU WIN』

 

「あそこでタイランレイブに繋げてくるとは・・・やられた!」

 

「お前も一撃必殺決めてきただろ?」

 

「まぁな」

 

「なぁ?」

 

「ん?」

 

「こんな風にゲームしてて良いのか?」

 

シュートの疑問は最もだろう。こうしている間にも自分が追跡していた相手が策謀を巡らせているかもしれないのだ。

 

「シュート、不安は最もだが固く考えすぎても良くないぜ?」

 

そう言いながら政征と交代した一夏がキャラクターセレクトする。シュートも雄輔と交代して持ちキャラをセレクトし始めた。

 

「そうやって、先読みするなよ」

 

「今のは感知じゃなくて経験則だって」

 

一夏はプライベートにおいて少しずつニュータイプの力を制御できるようになっていた。こうした娯楽の時だけの限定だが、制御できた事には変わりはない。

 

「あの動き・・・できれば面白いよな」

 

「聖騎士団ソルの動きか?」

 

「そうそう、オルゴンの結晶爆発を利用してさ」

 

「まさか・・・『タイランレイブver.Ω』や『ドラゴンインストール:殺界』。『フレイムディストーション』を再現しようなんて考えてないよな?」

 

「(ギクッ!)そ、そんな訳あるかよ」

 

「嘘つけ!お前はやるって決めたら絶対にやるだろ!」

 

雄輔の指摘に政征は言葉が出なかった。『本来の世界』からずっと連れ添ってきた親友同士。政征の考えなんてお見通しだったのだろう。

 

「雄輔だって『スタンエッジ』や『ライド・ザ・ライトニング』を再現したいんじゃないのか?」

 

「うぐっ・・・それを言われると痛いな」

 

こうしてゲームをしていた理由は、ISの武装のヒントを探すためであった。一夏はユニコーン・システムやオルゴン・マグナムといった恩恵を受けているが、政征と雄輔は単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)を例外にすれば全てのバスカー・モードを扱う以外の恩恵は受けていない。

 

シュートに至っては『この世界』の武装に慣れる事で精一杯な状態だが、タバ=サからの恩恵は受けている。

 

「ゲームから武装のヒントを得る・・・・か。考えもしなかったな」

 

「以外とゲームも馬鹿に出来ないってタバ=サさんも言ってたしな」

 

コンボを決めているが、シュートがカウンター気味に覚醒必殺技に決めてしまった。

 

『邪魔だ!消えろぉ!!』

 

「うわ、あそこからカウンターかよ!?」

 

「少しは練習させてもらったしな」

 

『2P YOU WIN』

 

「はーい、ゲームは少し止めて休憩しよう?」

 

タ=バサが手にお盆を持ちながら現れ、タバ=サお手製のスコーンと紅茶がお盆の上に乗っている。最近のタバ=サは料理やお菓子作りに凝っているらしく、初めは倒れる程に不味かったが今やプロ顔負けの美味しさだ。

 

「はぁ、私も頑張ってるんだけどなぁ・・・」

 

「タバネは料理をなんでも甘くしようとしちゃうからダメなの」

 

タバ=サとタバネは別世界の自分自身同士という事もあり、姉妹のように仲が良くなっていた。ただ、冷静さと発想力においてはタバ=サが上であり、明るさや柔軟性においてはタバネの方が上である。

 

お互いにどちらが上だという主張はせず、足りない物を補えるパートナーとして信頼し合っている。

 

「皆よく食べるからたくさん作ったよ。マーくんはラズベリー、ユー君はチョコチップだったよね?」

 

「はい」

 

「そうです」

 

「シュートくんは分からないから好きなのをつまんでね」

 

「ありがとうございます、頂きます」

 

ティータイムとなり、スコーンを摘みつつ休息を取る。そんな中、タバ=サは思いがけない事を口にした。

 

「さっきやってた格闘ゲームの技の再現、出来なくはないよ?」

 

男性陣が一斉に紅茶を吹き出す。架空の技が再現できると言われれば、驚愕するのは当然だ。

 

「再現できるって・・・本当ですか?」

 

「うん、マーくんとユーくん、二人のラフトクランズのデータにあった単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)の使用状態データを応用すれば良いの。本物の炎や雷のようにはいかないけどね」

 

単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)を?」

 

「そう、二人のデータを改めて見たけどマーくんの単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)は味方を強化、敵に弱体化を与えるもの。ゲーム用語で言えば『バフ』と『デバフ』だね。ユーくんは防御強化と常時回復付与、装甲を常に修理されていく状態を与える。これを応用すれば少しの改修で簡単にできるよ」

 

少しの間、思考し結論に気づいた。それは単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)の力を味方へ付与させるのを自分自身へ向ければ良いということだ。

 

「マーくんが使ってたキャラの技・・・ええっと、『フレイムディストーション』だっけ?その応用は単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)ですれば簡単だし、『タイランレイブver.Ω』というのもオルゴンの結晶爆発エネルギーを利用すれば良い。ユーくんが使ってるキャラの『ライド・ザ・ライトニング』って技もオルゴン・クラウドの応用で事足りるよ?」

 

タバ=サは簡単に言っているが、タバネからすればとんでもない応用の塊だ。機体特性をしっかり理解していなければこんな考えは出てこない。

 

それを聞いている騎士の三人もタバ=サからISに関する知識、機械工学、プログラム工学などを叩き込まれたのだろうと推測していた。

 

「ただ、マーくんの方は多数を相手にする技だし、おまけに威力がとんでもなくなりそうだから装甲強化の改修をしないと使えないね。バスカー・モードのクローの技術を使えば保護はなんとなるかも、ユーくんの方も展開に莫大な負荷をかけそうだから2機ともジェネレーターを改良しないと無理」

 

「「やっぱり・・・」」

 

「(やっぱりとか言ってるけど、当然のような表情してるのが異常だっての!!)」

 

シュートもシュートでこの世界の三騎士の異常性に気づいている。ゲームの技や機体開発のヒントを考えてしまう事が異常だ。

 

「あ、そうだ。シュート君の機体が、もうすぐ完成するからテスト運用して欲しいの」

 

「え、本当ですか?」

 

「本当だよ。こっちの世界の技術を、私達の世界の技術でブラッシュアップして完成までもう少しだよ!」

 

シュートの事になると饒舌になるタバネを見て、自分も良い人が欲しいなと思うタバ=サだが、彼女の理想は高くはない。

 

だが、彼女自身のスペックが高すぎるが故に釣り合わないと、男性が高嶺の花扱いしてしまっているのだ。

 

「(多妻制度になってくれれば良いけど・・・私個人の欲求だもね)」

 

「・・・・」

 

この中で、結婚か確立しているのが政征だ。彼はシャナ=ミアとの仲が学園内でも有名だ。恋人である事は確かだが、既に夫婦なのではと女子生徒の噂が立っており、本人達も否定していない。

 

一方の雄輔も生徒と教師という立場ではあるが、フー・ルーとの婚約を済ませている。結婚はしておらず、婚約者という形で無論、公にするのは卒業後という琴にしている。

 

「じゃあ、ゲームは終わりにしてテスト運用の手伝いをしないとな」

 

「そうだな、模擬戦の相手には事欠かないだろうし」

 

「俺も同感だ」

 

「っ・・・」

 

シュートは思う。学園の三騎士(ドライリッター)と呼ばれているこの三人は自分の常識が通用しない。異世界に関しても許容的で、更に言えば自由と城壁の騎士を名乗る二人は地球人の血筋ではなく、異星人の血筋だ。

 

この世界は異星人が地球人と共存している理想的な社会の一つ。更には人が行き着く進化の可能性の片鱗まで出てきている。

 

同時に平行世界、つまりこの世界で生まれた『織斑一夏』に関してもそうだ。目の前にいる彼は自分では想像もつかない『何か』を経験してきたのだろう。架空の概念とされる『ニュータイプ』と同じ覚醒をしており、更には自分の愛機を変身させる力、相手の心を自然に知ってしまう感性。可能性を諦めない信念、一体、どんな経験をすればここまで変わるのだろうと。

 

「(とんでもない世界に来てしまったみたいだな・・・俺は)」

 

 

 

 

 

 

時間にして半日、鏡山コンツェルンの傘下にある企業から『鏡山 法子』へと連絡が入った。それは研究していた新素材が出来上がったというものだ。

 

「ようやく完成しました!これで、例のプロジェクトを」

 

「ええ、始動出来るわ。そのまま量産体制を進めて」

 

連絡装置からの通信を切ると『鏡山 法子』は狂ったように笑い出した。それは換気の笑い声であり、自分の思惑通りに事が進んでいるのに対し、喜びを抑えきれない。

 

「フフフ・・・アーッハハハハハハハ!!これで、これで私のプロジェクトが始まったわ!後はアシュアリー・クロイツェル社の機体データを奪取できればいいわ・・・!」

 

ひとしきり笑った後、彼女は通信機器の受話器を取ると直通ボタンを押して、とある場所へ繋いだ。

 

「私よ。例のターゲットは?」

 

『確保しました、実験施設へ輸送します。それと襲撃した研究所から資料も押収しましたが・・・』

 

「なにかしら?」

 

『本当にこれを行うのですか?(人工的にクローンで兵士を作り出すなんて・・・)』

 

「当然よ。ターゲットを確保したら彼女から卵細胞を取り出してから強化しなさい。それと強化の度合いはレベル2・5でね」

 

『・・・了解です』

 

「それと、もう一方のターゲットは?」

 

『そちらはIS学園から完全に警護されていて、ダメでした』

 

「そう、プランAは破棄してプランBで作戦を続けなさい」

 

『はっ』

 

「さて、次の段階へ行かなければね」

 

『鏡山 法子』は予定表を見ながら「現場で働く社長」の姿を演じながら、裏での生産プロジェクトの準備を進めていく。

 

 

 

 

 

その数日後、タバ=サは机を叩いて自分の上司であり会長でもあるエ=セルダに抗議をしていた。

 

「我が社の機体データとユニコーン・システムの基本データを提供しろだなんて、どういう事ですか!?」

 

「すまない、タバ=サくん。私も機体データだけはと交渉したのだが・・・相手方がシステムの可動データも条件に出してきてだな」

 

「その相手方って、何処ですか?」

 

「『ミラー・エレクトロニクス』だ」

 

「!!」

 

その名は、タバ=サも噂には聞いていた企業だ。農業と電気工業をメインに急成長を遂げてきた会社である。その会社が何故、アシュアリー・クロイツェル社に取引を持ちかけてきたのか?同時に滅多な交渉事では負けないはずのエ=セルダが根負けしてしまった点も気になる。

 

「実は向こう側から、このような物が交換条件に送られてきたのだ」

 

「?」

 

タバ=サはエ=セルダから手渡された資料を手にして読み始めると、目を見開いた。

 

「こ、これは!?」

 

「『サイコ・メタル』というものだそうだ・・・これを機械などに組み込めばISも宇宙空間での作業に耐えられるとの事だ。悔しいだろうが宇宙用の強化技術をこの会社が先に開発してしまったようだ」

 

「っ・・・(いっくんの為にニュータイプ用の脳波コントロールシステムを開発する予定が、先を超されたなんて!!)」

 

「我が社へこの『サイコ・メタル』の試料を提供する代わりに機体データとユニコーン・システムの基盤をよこせ・・・か。悔しいな」

 

「君には辛い決断をさせる事になってしまったな・・・」

 

「大丈夫です・・・・」

 

後日、タバ=サはユニコーン・システムの簡易版のデータとヴォルレントのデータを手に『ミラー・エレクトロニクス』の営業担当者との打ち合わせに赴く。

 

交渉はお互いにスムーズに運び『サイコ・メタル』と『簡易ユニコーン・システム』と『ヴォルレント』の機体データのサンプルをお互いに手にし、交渉は終えた。

 

タバ=サは『サイコ・メタル』を急遽、解析しラフトクランズ・クラルスへ組み込む為の研究を始めた。

 

「やっぱり・・・これは私が開発、研究しようとしていたサイコフレーム(・・・・・・・)のデッドコピーだ。機体の研究で疎かにしていた自分を恨むよ」

 

タバ=サ自身も同じ理論で脳波コントロールシステムを開発しようとしていた。だが、三騎士(ドライリッター)の機体整備と研究、更には異世界から来たシュートの機体開発なども重なり、開発を疎かにしていたのだ。

 

この事に関してシュート達が来なければと思わない事はなかった。タバ=サ自身も一人の人間であり、自分の計画通りに事を動かしたいと考えるのは当然の事。

 

だが、彼らを恨んではいない。開発以上に異世界からの驚異がやって来てしまったのだから。秘蔵しておきたかったユニコーン・システム、実力者専用訓練機であるヴォルレントの機体データ、これらを渡すハメになってしまったのは自分の落ち度だ。

 

「私もこの基礎理論は完成していたからね!デッドコピーとは言え形になっているんだから、私が完全なサイコフレーム(・・・・・・・)を完成させてみせる!!」

 

タバ=サは三騎士(ドライリッター)が臨海学校において起こした奇跡の姿の写真へ視線を向けた後に、『サイコ・メタル』の研究を始めるのだった。




『サイコ・メタル』

敵側の軍事会社が開発した新素材。タバ=サ自身も同じ基礎理論は完成させていたが、開発できずにいた。

ガンダム世界のサイコフレームのデッドコピーであり、本物であるサイコフレームと比べて武装に対する機動条件と危機感知力を引き上げるだけのものであり、強度も重さも劣る。

先に開発理論はあっても開発されてしまいました(例の騒動とは関係ありません)

この小説の事件は本編(Moon Knights IS~Prayer of a Rabbit Fury~)ともリンクしますのであしからず。
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