化物らしく、人間らしく   作:照坊主

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なんか変な過去話、もうちょっと上手く書けるようになりたい


泡沫の夢

私は知っている、私の弟の苦悩を

私は知らない、私の弟の性格を

 

私の弟は人と共に生きたいのだ、一人は嫌なはずなのだ

私の弟は人を殺したいのだ、一人が嫌なはずなのに

 

私の弟は努力家だ、私と言う存在を姉に持ち、それでも縋り追いつこうとした

私の弟は弱者だ、傷つくことを恐れ、私や家族から常に距離を置いていた

 

弟はいつも頑張っていた、勉学も、武術も、私の隣に立てるようにと

私はいつも叱咤していた、勉学も、武術も、私の隣に立てるようになれと

 

最愛の従兄弟達も手伝ってくれていた、時に優しく、時に厳しく

弟もそれに応えようとした、身を削りながら、顔に涙を伝わせながら

 

甘美な時間だった、幸せな時間だった、姉としては失格だったかもしれない

けど、あの子も私も、確かに幸せだった

 

 

「あなたには、才能がない」

 

 

その一言を母があの子に伝えるまでは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私が見たのは血の海だった

部屋いっぱいに赤い液体が溜まっている

 

鼻につく鉄の匂いと臓腑の匂いは今でも忘れられない

 

部屋の中央には見知った顔が一人

何かをするわけでもなく、ただ佇んでいる

 

彼がこちらへ振り返る

初めて見る表情を貼り付けて

 

悲しい時、悔しい時、怒った時、嬉しい時

様々な表情を私は見てきた、なのに

 

「春蘭…?どうしたんだい?」

 

私は初めてあの子の縋る表情を見た

どうにかしなくては、私はあの子の師匠なんだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「立華を殺しに行くわ」

 

耳を疑った、だが、覚悟した表情を持って告げられたその言葉は間違えではなかった

確かに告げられたのだ、あの子を殺しに行くと

 

主の隣には私の姉が、同じく覚悟を決めている

 

「何があったのですか」

 

聞かずにはいられなかった、同時に聞きたくもなかった

 

「屋敷にいた人間は私たちを除いてあの子に殺されたわ」

 

「だから…あの子を討たなけれないけない」

 

あの子が、殺したのか?

努力家で、強がりで、わがままで、優しいあの子が?

 

グルグルと思考が回り続ける

 

 

気づけば弓を持っていた

隣には主と姉が、正面にはあの子がいた

 

いや、あれは本当にあの子なのか?

あの子はあんな風に笑わない、もっと優しく微笑む

 

あれは、獣の笑みだ

あれは、あの子じゃない

 

あれはなんだ、なんだなんだなんだなんだなんだなんだなんだ!!??

 

気づけば私は弓を射っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたには、才能がない」

 

母親にそう言われた、知っていた、それでも努力した

いつか、姉の隣に立てるように

 

輪廻転生の輪をくぐり、常人では手にしない力を持って生まれた

前世とも呼べるべき記憶を持ち、常人よりも裕福な家に生まれた

 

それでもなお足りない、才覚を持つ者には

足りぬ分は補え、努力で、能力で

 

しかし、そのちっぽけな努力は報われず

俺の能力は発揮できぬままだ

 

「あなたは、あの子の傍には立たせられない」

 

うるさい、それを決めるのは俺だ

俺の人生だ、俺のやりたいようにやる

 

沸き立つような怒りが生まれた

目の前の女に叩きつけてやれと

 

今まで溜め込んだ、お前たちが無為にしてる命の力を

声に従い、全力を持って叩きつけた

 

 

 

 

一瞬だけ皆で食卓を囲んだことを思い出した

母と俺と姉と従兄弟達と家人とで

 

みんな楽しそうに笑っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目が覚める、朝のようだ

 

分水嶺はもはや超えた、戻ることのない、しかし戻りたいと願う夢

 

夢は泡沫のように記憶から溶けてなくなる

それでも、その夢を作り出したのは己の記憶だ

 

故に

 

「立華…待っていなさい、必ず隣に立たせてあげるから…」

 

それを戒めとするもの

 

「…そうだ、私は…師匠なんだ…!」

 

再確認するもの

 

「…どうして、変わってしまったのだ…」

 

嘆くもの

 

「んぁ~…嫌な夢見たな…殺される夢とか…勘弁して欲しいわ」

 

「勘弁して欲しいのこっちの台詞ですぜ、旦那…とっとと自分の床に帰ってくださいよ」

 

夢としか捉えないもの

 

様々な価値観の元、『夢』というものも価値を変えていく

 

それでも、夢はそこにあり続ける

夢という存在は常に待っている

 

己の存在が、現実に現れることを

 

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