「まったく…ようやっと終わったよ…」
結局日が暮れてから姉貴が冷静になって、その場はお開き
通算6千飛んで454回殺された、大損もいいところだ
「さて…」
俺が今いるのは戦場の端っこ、駐屯してるところからも離れたところ
ここにいるのは俺と…
「始める前に…なんの用かは聞いておくかね?」
後ろに立っている先ほどの男、器用にも俺だけに対して殺意を当てててきた男
「…お前はどちらだ?」
仁とかいう男、実に面白い力を持っている
「どちらってのはよくわからねぇな」
特別な力は感じない、が、何かしらの術を身につけてる
「目覚めているか、いないか、そう聞けばわかるか?」
気配はあるが、極端に他と同化している
超がつく一級の暗殺者の類と同じ気配の溶かし方だ
「あ~…そういう…それなら、目覚めているぜ、ばっちりとな」
そう言ってようやく後ろへと向き直る
こういったのとは殺り合った事はないが…面白い結果にはなりそうだ
「そうか…すまないな、『意』を当てて反応がなかったからな、気になった」
「ああ…下手な挑発だと思えばそういう意味かい、ありゃあ」
「下手…か、そうだな、どうにも下手くそでな、苦労してるよ」
そう言って苦笑いをする仁
「で?それだけじゃないだろう?こんなところまで来たのは」
「ああ、そうだな…単刀直入に聞こうか、お前の力は『不死』だな?」
まぁ、微妙に違うがいいか
「いえーす、その通りだ、お前さんはなんだろうかね?暗殺系だとは思うが」
アサシンクリードだとか、そこらへんだとは思うんだがね
「そのことで話に来た」
「んん?」
一気に読めなくなったな、なんだ?いきなり殺しに来るってのはもうありえないし
かと言って初対面になんか言われるほど派手に生きてはいないぞ
「同盟を…俺とお前の個人的な同盟を組んで欲しい」
「同盟ねぇ…」
「ああ、その通りだ」
こいつの説明をざっくばらんに整理すると
・転生者というのは何かしらこの世界の人間では不可能な能力を得ている
・その中には能力を無意識で使っていたりそのせいで迫害を受けている
・そういうのと会ったら保護、もしくは能力の自覚の助長をする
・同盟の条件はとある転生者の能力によって強制的に施行される
・同盟中は互いに害のあることは行わない
と、いうことなんだが
「はっきり言って旨みがねぇな」
「…だろうな、まぁ、俺としては最後のが重要であって他はどうでもいいからな」
「んー?ここには他にもいるのかい」
「ああ、だが、それらは個人的に会って話してくれ」
「誰だよ、そいつ」
「…少なくとも、劉備、あいつは転生者だ」
…あ?
「おいおい…待ってくれよ、ってぇことは」
「その通りだ、音に聞こえた武将でも転生者ということもあり得る」
ってことは姉貴や元譲もありえるってのか…やれやれ…
「だが、俺やお前のように目覚めなくては意味がないがな」
「なるほどねぇ…把握した」
「それで、同盟の方はどうする?俺と組むととりあえずだが劉備も組むと思うが」
「組む前に2つほど質問いいかい?」
「?なんだ?」
「いつ目覚めたか、お前の能力はってところだ」
こいつを聞いておかねぇとな、組む組まないの問題外だっての
「…少し、長くなるが、いいか?」
「構わんよ」
そうだな、目覚めたのは14の頃だな
お前も知っていると思うが、俺たち転生者が前世の記憶やらを思い出すのは大抵この体で形成された人格が精神的外傷を負った時、死にかけた時、そういった絶望を知った時だ
俺の場合は実に簡単、目の前で賊に親を殺された、今の世の中じゃありきたりな出来事だ
その時に俺は『目覚めた』、驚いたよ、自覚した瞬間に剣を振り下ろされそうになっていたからね
まぁ、俺の能力を使って殺したんだが…ああ、能力の話もしないとな
俺が望んだのは『七夜志貴』だ
…なんだ?別にいいだろう?キャラクターを望んでも
まぁ、手にしたのは七夜の体術だけだったみたいだ、目覚める前の俺は快楽殺人主義者だったようだがね
しばらくの間は目覚める前の精神に引っ張られて殺すのが楽しくて仕方がなかったけども…
安心してくれ、今はそんなことはないからな
「ふむ、やっぱりそういった時になるんだなー」
「まぁ、大体はな、うちの劉備なんかは最初からだったらしいが」
「なんだそりゃ?」
「劉備に生まれたことが絶望なんだとさ、俺にも詳しくは話していないからな」
まぁ、そういうのもあるんだろーな、どうでもいいや
「そういえば、あんたはどうなんだ?」
「ああ?俺か?…そうさなぁ」
俺の場合か…
「寄る辺が無くなったら、甘ったれのガキにとっちゃ絶望だよな?」
「…なるほどね」
「理解してくれたようでなにより、とりあえず、同盟は保留だ」
「それが賢明だろうさ、俺も後悔しているからな」
同盟とやらがしっかりと機能してるならばここに来るのはコイツだけじゃねーだろうしな
「さて、それじゃやるかね」
「ふむ、離れたほうがよさそうだな」
「ああ、離れとけ、巻き込まれてもどうなるかわからねぇからな」
そう言って仁は軍が駐屯してる天幕へと歩いていく
俺は
「…食事の時間ってな」
戦場に流れる血が、流れ落ちた血が、轟く、蠢く
まるで川のように、まるで波のように
闇夜に紛れ、赤黒い河が出来上がり、我先へと一点へと集結する
気づけ馬鹿ども、俺の力を
震えろ人間ども、化物に
見ろ、これが俺という化物だ
感じろ、俺の力を!
「…クカカカカカ!!!喰いきれるかねぇ!こいつは!!」
黄巾党10万、総被害は6万、内4万は降伏した
対する官軍は5万、それでも1万強は死んだはずだ
全部、全部ゼンブぜんぶ!!俺のだ!!!
俺の糧であり、城であり、城壁であり、兵士であり、贄である
俺が望んだ力、俺の…俺の!!
「…そうだ、俺の…!!…紛い物の力!」
紛い物だ、全ては与えられたもの、だがそれがどうした
叶う人間はこの世にはいない、俺こそが天下一
だから、だからこそ
「誰にも邪魔はさせねぇ、否定も肯定もさせねぇ」
たとえ無間地獄を歩もうとも、悪鬼羅刹と罵られようとも
全てに拒絶されても、全てに否定されても
「俺は俺だ、本当の名前を忘れようと、もはやこの世の人間でなかろうと」
最後の最後まで生き延びて哂ってやる、ざまぁみろ、と
「ふわぁ~すごいねぇ~」
呑気に大口を開けながら、一人の男に血が集うのを見守る少女
「何が、すごいね~、だ、一人だけ死地に向かわせやがって」
傍らには悪態をつく青年が一人
「え~?仁だったら戦いになってもどうにか出来たでしょ?」
「無茶を言うなよ…お前のように使い勝手のいい能力じゃないんだ」
「私のも使い勝手がいいわけじゃないけどな~」
会話をしているうちにも血の河が男へと集っていく
「私の能力は、ちょっと動かす程度の能力だよ?あんなのをどうこうできるわけないよ」
「『動かせれば』なんでもだろ?空であれ大地であれ…人の心さえも動かせる」
少女は男から視線を外し、少年へと向ける
「それでも無理だよ」
「あれは城壁、あれは城、あれは兵士、あれは国そのもの
あれをどうにかするには、敵国の玉座までたどり着くのと同じくらい難しい」
そして少女は男の方へと向き直り
「しかも、暗殺とか策謀とか全く無しで、力尽くで行くしない、無理無理」
と半笑いを浮かべる
「…勝てないか?」
「勝つよ、勝たなくてはならない」
二人は男の所業を見つめている
「あんなものに負けてはならない、少なくとも私は屈してはならない」
少女はそれから視線を切り、後ろへと振り向きそのまま歩む
「お供しますよ、お姫様」
少年はそれに続く
「うん、最後までついてきてね?絶対に勝ってみせるから」
――劉備に生まれた私の存在意義をしめす為にも、ね
「うっぷ…食いすぎた、気持ち悪い…キモイ…うぇ…」
転生者とは自身の解釈では「前世の記憶を知識として持つ」その世界の人間だと思っております。
ただ、知識を持つにあたって必要不可欠なものは経験、経験を積んでこそ人格の形成が成り立つものだと思っております。
なので、劉備の性格が違ったとしても、知識に基づいた経験がそうさせているのであって私は何も悪くない!