ホラー作家の一団みたいに悪趣味な奴らだ。
時空管理局空想科学部門を説明するのにこれほど適した言葉はないだろう。
彼らの拠点は陸にも海にもないし、そもそも現実にあるのかも不明だ。
個室トイレ、シャワールーム、レジアスの執務室、最高評議会・・・。
少なくとも、入り口が色々な場所にあるというのはわかっていた。
「よお、変態ドクター、失礼するぞ」
「どうして私の研究室に入り口を設置した?」
ジェイル・スカリエッティのアジトに現れた管理局員・・・。
彼はPortalに登場するポータルガンによく似た武器を持っていた。
「今度は何の用だ?アンゲルス」
「これを読んでくれ」
彼が渡したファイルにはSCP-2237と書かれていた。
スカリエッティはそれで嫌な予感を覚えた。
たいていの場合、これは協力要請だ。
ヒュームやらアキヴァとかいったトンデモ技術が関わるタイプの。
そうして作らされたものは、ほとんどがろくでもない代物だ。
「・・・こいつの内容を要約してくれ」
SCP報告書は悪趣味すぎて、あまり見たくないのだ。
「現実改変で先住民を消し去る移民宇宙船」
やはり悪趣味であった。スカリエッティですらドン引きするほどだ。
「君たちは・・・正気かい?」
「正気だと思うか?空科にいる時点で」
「・・・それもそうだったな。それで、どこの次元世界に植民するつもりだ?」
アンゲルスはふっと笑った。
「ドクター、そんなのは本局に任せておきゃいいじゃねえか」
「じゃあ、惑星・・・は陸の管轄だからな。
・・・ああ、そういうことか。君たちは本当にクソ野郎だな。
植民するのは、別の物語層の宇宙のどれかだろ?」
「ご名答!上層部は史上最大の作戦を立案した。
上から下まで、誰もが幸せになれる計画。
その名も・・・プロジェクト・リゾート!
惑星一個分の、空科による空科のためだけの休養地だ」
「上から下まで、本当にクソ野郎しかいないんだな」
「買いかぶりすぎだって」
「けなしてるんだよ、この野郎」
「残念、俺達には誉め言葉なんだ」
「そうだった・・・ちくしょう。
それで、君たち空科は私に大虐殺の片棒を担げと?」
「そういうことだ。さあ、早くSCP記事を読んでくれ。
今回ばかりは読んでくれないと、話が進まねえんだ。
別に俺たちだけでもできるが、お前が協力してくれたらもっと早く終わるんだ」
ファイルを開けると、ぶっそうな内容の記事が出てきた。
「今回も心臓に悪いな。びっしりと殺さないでって書いてあるとは」
「・・・は?そんな内容じゃなかったはずだぞ」
スカリエッティはアンゲルスに記事を見せた。
すると、彼の言う通り、上から下までびっしりと殺さないでの海だった。
ご丁寧なことに、字の色は血のような赤だった。
「・・・リゾート予定地の誰かが第四の壁を破りやがったな」
それから数秒後、報告書はあっという間に炭化した。
「最悪だ、博士。この物語層にまで物質的な干渉ができるらしい。
・・・まだ非生物にしか手を出せないようなのが救いだな」
「まだ、ということはこれからか」
「そういうことになるな」
それから、スカリエッティは虚空に向かって言った。
「私は関係ないぞ」
だが、博士の白衣の裾は炭化した。
「私も同罪ってことか」
「ご愁傷様、博士」
「お前らのせいだぞ。一緒に地獄に落ちてもらうからな」