SEVEN's CODE二次創作夢小説【オレンジの片割れ】第一部   作:大野 紫咲

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イサク達の発見により、事件はとある進展を見せる。
被疑者として捕らえられた者たちに現れたという、謎の紋様とは一体……?
そして、それを見て重大な事実に気付いたヨハネは、とある場所へと走り出す。


1-13 発見

第13節 発見

 

 あの後訪ねようとしたのだが、結局オージは捕まらないまま、ボクは巡視を終えて仲間と共にSOATへ帰投していた。

 人手不足とかで、マネージャー業も兼任しているオージは、次のヴァイスのライブに向けて、今はスポンサー達との交渉に難儀しているらしい。リアルの体を持たない分、関係者との信頼を築くのに尽力してくれているのだと、久しぶりに会ったメンバー達が言っていた。

 ていうか、マネージャーっていえば、「捕縛」の時にボクと四苦八苦して奔走した、小杉の奴はどこ行ったんだ。自分で「クヌギさんがPなら、ワタシはさしずめマネージャーといったところですね」とか言っていたけれど。まさか、アイドルを使った社会実験は終了したから、とか言って、オージに仕事だけ押し付けて消えたんじゃないだろうね。あいつならやりかねない。

 ……何にせよ、大変だよなぁ、Pって。

 と、かつて彼女らのプロデューサーだったボクが、まるで他人事のようにそう思いながら、机で資料の整理をしていたところへ、緊急のアラートが響き渡る。

 出動要請ではなく、会議室への招集だった。

 

 既に上級職員を始めとする隊員たちが揃っていて、カシハラが目で合図するなり、イサクがスライドへパソコン画面を表示させながら、口を開いた。今回みんなを集めたのは、彼だったみたいだ。

 

「聞いてくれ! 街を騒がせている例の事件について、被疑者たちにある共通項があることがわかった!」

 

 どよっと、にわかに会議室がざわめく。

 捕まえた事件の被疑者たちは、皆一様に「記憶がない」とか「操られていたようだった」と証言する者ばかりで、留置しても暴れ出すことはなく、憑き物が落ちたかのように大人しかった、という調書ばかりで、一定期間後に釈放せざるを得ない現状に、SOAT内外からも賛否の声が集まっていたから、期待が高まるのも無理はない。

 ボクも、手袋の手を思わずきつく握り締めながら、スライドの表示される画面を見上げた。

 

「これだ。体の一部……特に背中が多かったんだが、事件直後の被疑者たちの体に、奇妙な紋様が浮かび上がっている」

 

 並んだ写真を、隊員たちが食い入るように見つめる。

 うっすらとはしているが、痣のような何か……色も形もさまざまなそれが、肌の上に現れていた。背中、手首、脚など。どうやら種類があるようで、類似度別に対比された表を、ボク達は眺めていた。

 一人の隊員が、はいっと威勢よく手を上げた。

 

「これらの跡は、最近撮影されたものですよね。今までの……事件発生当初には、確認できなかったんでしょうか」

「ああ。オレらが注目し始めてから分かったことなんだが、どうもこの跡、発生からごく短時間で消えちまうらしい。

あまりに消えるスピードが速い上に、まさか捕まえた奴らを、衣服を引っ剥がして身体検査するわけにもいかなかったからな。つい最近まで、明らかにならなかった」

「それを、青柳隊員が気付かれたので?」

「たまたま捕まえた中に、上半身の服装が薄いやつがいたんだよ。最初は入れ墨かと思ったんだが、なんか光ってやがるし、時間が経ったらなくなってるしで、妙に思って聞いたら、そいつも入れ墨なんか入れた覚えはねえって言う。

そいで、次からは捕まえた直後の奴らに、任意で身体検査をさせてもらった。この写真は、そいつらに撮らせてもらったものだ」

「女性の被疑者については、私とミライ隊長が担当してます」

 

 質問が出る前に、リアちゃんが立ち上がって答えるのが聞こえた。

 一応、素肌を撮らせてもらう調査だから、配慮はしているみたいだ。

 頷いて、カシハラが集まって全員に促した。

 

「おそらくだが、一般人にこの紋様が発現することによって、無意識に何かしらの現象を操ったり、それらを暴走させたりしている可能性が高い。

これらに、何か心当たりがある者はいないか? もしくは、これを見て気付くことがあれば教えて欲しい。何でもいい」

 

 再び場がざわめく。

 規則性が分からない以上、紋様の出る場所や大きさはランダムで、あまり何かを分析出来そうにはなかったけれど、まずは普通に見て何に似ているかを、ボクは考えることにした。

 色。形。それらを合わせた時のイメージ。

 イサクから話だけ聞いた時より、実際に目の前で、起こった現象を図案にしたものを見ると、より頭に浮かび上がってくるものがあるような気がする。

 なんとなくの先入観でしかなかったけれど、ボクが口にした言葉は、他の大多数の隊員たちが連想したことと、同じだったらしい。

 

「強いて言うなら……その赤い色のは炎、黄色が雷で……青は竜巻、オレンジっぽいのが岩……に見えるような」

「やはりな。やはりそれらの要素の象徴、ということなのか」

 

 ボクの答えに、カシハラが顎を引いて頷いていた。

 口に出しながら、ボクはついこの間イサクと会話していた時に頭に過った「どこかで見たことある」感覚が、どんどん強まっていくのを感じる。

 ボクはこれを最近すぐ近くで――しかも、「捕縛」の時にしょっちゅう見ていたような――

 

(なんだ……? この……今は四種類しかないけど、自然界の元素を象ったみたいな何か……と、赤・橙・黄・青……これじゃまるで、虹の七色……七いろ……7?)

 

 その数字が。

 強烈な爆撃みたいに、ボクの頭に轟音を鳴り響かせ、イメージを呼び起こす。

 思い出した!!!!!

 

 バンッ、と席を立って、駆け出そうとするボクの後ろから、慌てたようなカシハラの声が追い掛けてくる。

 居ても経ってもいられない気持ちになりながら、ボクは振り返って会議室の面々越しに叫んだ。

 

「おい、ヨハネ!? どうした!? どこへ行くんだ!」

「今すぐ、隊長たちを全員ヴァイスドームに集めて! コニとろこ、はるか達も一緒に!」

 

 

 

 ハルツィナドーム改め、ヴァイスドームのバックヤード。

 ここは、普段はライブホールでありながら、裏方には設備を兼ね揃えた、いざという時の研究施設と化している。

 

「コニ、わかるか?」

「……ううん、解析不能」

 

 護衛も込みで他のメンバーに付き添われてやって来たユイトの問い掛けに、元ハルツィナメンバーの一人、コニは首を振って答える。

 コンピュータに表示された波形を前に、コニは尚も首を傾げた。

 

「確かに、捕縛の時に私たちに憑いてた悪魔と似た気配を感じる……でも、完全には同じじゃない。能力の残滓が小さすぎてよく分からないけど。

それに、私たちに憑いていた悪魔はあなたが退けた……もう力も存在も残っていないはず」

「そうだよな……」

 

 少女時代のウルカから、大人の姿に戻ったコニは、モニターに過去の仲間たちの姿を映しながら、その歌声と、ユイトらに頼まれて解析していた例の紋様を、波形に変換して照らし合わせた。

 かつて、その歌声と存在で、捕縛時に世界を熱狂と混乱に陥れていたアイドルグループ・ハルツィナ。

 七人のメンバーのうち、コニを覗く六人全員は既に故人であり、ニレが計画を遂行するべく、アウロラの記憶を使って思い出の中から再現させた、幻の人格に過ぎなかった。

 それぞれのメンバーには、七つの大罪に値する「悪魔」を宿らせて「審判」の執行者とさせる。そして、「審判」を通してユイトにアウロラの記憶――友情の獲得と喪失を追体験させ、〝もう一人のアウロラ〟を作り出し、不老不死の存在を無限に複製させる、というのがニレの計画だったのだ。

 その時、各ハルツィナに憑いた悪魔――各大罪の悪魔たちが操る力こそ、火・土・雷・木・水・風・氷の力だった。各地で起こっている謎の事件に伴う超常現象と、同じように。

 

 コニの様子を見守っていたヨハネが、腕を組みながら傍の屋台骨に寄り掛かった。

 

「てことは、やっぱりあの時の審判や悪魔とは、関係がなかったのか……?」

「でも、事件の時に起こった火花や雷みたいな現象と、犯人の体に見つかってる紋様から考えて、無関係とはやっぱり思えないよ。もう少し、私達で詳しく解析してみる」

 

 そう言って、コニが振り返った先には、二人の少女たちがいる。

 コニと同じく、アイドル風の衣装を纏った二人。柔らかな銀色のツインテールを揺らして、微笑んだ少女は、ろここと湖東(ことう)絽子(ろこ)。斜めに前髪で左目を隠した、紺色のショートヘアで力強く親指を立てた少女が、はるかこと御手洗(みたらい)(はるか)

 二人は、現在ハルツィナに代わって人気沸騰中のアイドルグループ・ハルツィナWeiβ(ヴァイス)のメンバーであるが、有能な元SOATの隊員で、杉浦やヨハネの部下でもあった少女たちだ。

 こうして不可解な事件が起きた際は、ヨハネが個人的に声を掛けて、相談したり手伝ってもらったりしていた。

 

「悪いね。ろことはるかにまで手伝わせて」

「ぜ、全然ですっ。アイドルであれSOATのお仕事であれ、セブンスコードを救うのが、私達の使命ですからっ……!」

「せっかくクヌギさん達の取り戻した世界に、危険が迫ってるかもしれないなんて聞いて、放っておけませんよ」

「そんな大げさな。まだ危険って決まったわけじゃないんだし……」

 

 ヨハネが苦笑いするも、慎重派のはるかは、はや真剣な顔でキーボードを叩きまくっている。大げさと言いつつ、ヨハネも看過は出来ないといった様子で、ユイトに問い掛けた。

 

「何だろう。植能とはまた別のモノっぽいよね」

「ああ。ひとまずは、イサクの言っていた呼称を借りて、元素(エレメント)と呼ぶことにするか」

 

 共通認識を確認しながら、ユイトは集まった面々に話を進めた。

 

「イサク達調査班のおかげで今我々に発見されているものを、それらの特性から仮に火紋、雷紋、風紋、土紋とすると……ヨハネの仮説が正しければ、あと三つ、あると思って警戒に当たるべきだな」

「ええ。木紋、水紋、氷紋の出現も、いずれどこかであると思います」

「防ぐ手段がない手前、我々が鎮圧にあたる他あるまい」

 

 傍で話を聞いていたリアとミライが、機材の前に陣取りながらうなずく。

 ユイトは仲間たちを見回して、役割を割り振った。

 

「リアとミライは、お前達二人で、新たに出現すると思われる三つの紋に関わる現象がないか、引き続きパトロールで調査に当たってくれ。

ボクとイサク、ミカとヨハネで、火・雷・風・土についての紋様と、それによって引き起こされる現象の解析を進める。

事例は、起こってすぐの段階でしか分析できないことも多い。わずかな兆候も見逃さずにかかってくれ」

「了解ッ!」

 

 全員が揃った声を上げ、リーダーである体調を中心に各自の分担を決めつつ、他の隊員とともに散っていく。

 その様子を見守りながら、ユイトはヨハネの肩を叩いて囁いた。

 

「ヨハネ。例の彼女も……もしかすると、紋様の持ち主である可能性が高い」

「わかってる。早めに身柄が確保できるよう努めるから。……ほんと、IDがあるくせにログイン記録が残らない『幽霊』って、骨が折れるよね」

 

 そう舌打ちで返事をしながらも、ヨハネはいささかの気の重さが、胸にのしかかることを認めざるを得なかった。

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