SEVEN's CODE二次創作夢小説【オレンジの片割れ】第一部   作:大野 紫咲

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なんとか鉢合わせないよう努めていたムラサキだったが、ある日街中を巡回中のヨハネについに見つかってしまう。
そこへ、緊急事態を告げる端末のアラートが鳴り響き……?

思いもがけない「あの人」(うちのオリキャラ)が名前だけ登場します。


1-15 急事

第15節 急事

 

「……っつーわけで、一応シラは切っといたんだけど」

「うわちゃあ。やっぱそうか~。そりゃ怪しまれるよなぁ……」

 

 後日。ソウル達から、ヨハネがクロカゲへ調査にやって来た経緯を聞いたムラサキは、喫茶・クロカゲのテーブルで頭を抱えた。

 かくなる上は、ソウルとウルカに黙っておくわけにもいかず、ムラサキは正直に、自らのもう一つの仕事と、植能のことを打ち明ける。

 驚くべき話に、二人はただただ目を丸くするばかりだった。

 

「ごめんね、黙ってて」

「や、それはいーんだけどさ。オレ、こう見えても一応クロカゲ側の人間だし、身を守るのに植能を自分のモノにしときたいっつー気持ちはわかるから。

そうじゃなきゃ、姐さんを庇ったりしねぇよ」

「街中の人達も含めたら、違法に所持してるけど黙認されてる人って、沢山いるしね……。でも、ムラサキのそれは、私は初めて見たよ」

 

 さすがに二人を相手に使う訳にもいかないので、子宮(ウーム)の魅了の力については口頭の説明だけになってしまったが、既に何度かその力を見聞きしたソウルとウルカにとっては、それでも十分信用に値するものだったらしい。

 納得したようにうなずく二人を見て、ムラサキは手元のジュースの氷をつつきながら、ぼんやりと遠い目になる。時々変えている髪型は、今日はハーフアップではなくポニーテールになっていた。

 

「ちょっと派手に事件起こし過ぎたかなぁ。いやでも、私起こした方じゃなくて、巻き込まれそうになったのを回避しようとした側なんだけど」

「姐さん、お人好しだからな~。裏通りで絡まれてる子を助けようとして、ちょいちょい力使ってごろつきを追い払ったりしてたの、あれも姐さんだろ」

「こんなに噂になるなんて思ってなかったんだよ~~~~!」

「まあ、着物姿で、未だ未発見の植能の使い手で、しかもこの店でめちゃめちゃ美味い料理の提供者? ……目立つ要素しかねぇなー」

「反論の余地もございません……」

 

 がっくりとうなだれる様子を見せてから、けれどムラサキは、すぐに頭を上げると、ぶんぶんっとその顔を振った。

 

「でも、大丈夫。二人には迷惑掛けないようにするからさ。私、このお店辞めるし」

「え?」

「足取りが追えなくなれば、もしソウルくんとウルカちゃんが知ってることを全部喋ったとしても、SOATもそれ以上どうしようもないでしょ?」

 

 にっこり笑うムラサキに、目を丸くするソウル。

 ウルカが、わたわたと慌てて手を振った。

 

「だ、だめだよ、そんなの。ムラサキはその後どうするの?」

「だいじょーぶ! 私、今度から風俗店の方もやめて、独立営業することになったから。そっちさえ辞めちゃえば、誰も私の居場所なんてわからないし。簡単には捕まらないよ」

「けど、SOATって案外腹黒いぞ? この世界のあんたの住所くらいは、官僚特権であんたの店から聞き出すかもしんねぇし、プライバシーもクソもあるもんかって感じだ」

「大・丈・夫っ。もしそうなっても、こっちの世界の人に、私は絶対どうこうできない。最後の砦がちゃんとあるからさ」

 

 ぶいっ、とブイサインを作ってみせるムラサキに、ソウルとウルカはそれ以上何も言えなかった。

 ムラサキが、リアルどころか、時空を跨いで過去の異世界からセブンスコードにやって来ていることは、さすがにこの二人にも言っていない。別にこの二人相手に秘密にする必要もないのだが、正直に話したところで信じてもらえるかは怪しい、というところもあった。

 いくら厳粛なSOATや規則であろうと、たとえこの世界の法律であろうと、異世界人には適用できまい、と踏んでいたが故の自信で、なんとかこの二人をムラサキは安心させようと試みる。

 

「あんまり深くは突っ込まねえけど……無茶すんなよ。こっち、アオカゲみたいな怪しい組織も、最近ちょいちょい出て来てるからさ」

「うん、ほんとに……どこにも頼れないって思ったら、絶対に戻ってきてね。私たちで、何とかしてみるから」

 

 最後まで心配の色を隠さない二人と、その心遣いに感謝をいっぱいにしながら、ムラサキは軽く手を振って、喫茶・クロカゲを後にした。 

 だがしかし、運命の悪戯というものは残酷で、時に本人たちの願った方とは真逆へ物事を捻じ曲げてしまうらしい。

 ある日のこと、ソウルとウルカ(そして、恐らくは彼らに根回しされていたオージ)の口裏合わせの努力にも関わらず、ムラサキはばったりと、街中で巡回中のヨハネとミカに出くわしてしまったのである。

 

 

「ていうか、なんでミカまで『特別警備班』とやらに入ってんだよ。ボク一人で十分だって」

「ヤダ、つれないこと言わないの。アタシがいた方が、ヨハネだって面倒ごとに出くわした時に楽でしょ~お?」

「いや、戦闘に加わってくれるのはありがたいけどさ……そんなドンパチやるような騒ぎ、こんな人気の多い街中でそうそう起きないから。ゴツいミカを連れてたら、かえって悪目立ちじゃないか」

 

 ぶちぶち文句を言いつつも、いざという時に防御一辺倒に偏りがちなヨハネにとって、刀剣を振り回せるミカがいるのは助かるので、追い払いはしない。

 オネェの大男と華奢な美青年、というアンバランスなコンビで並びながら、ミカはウィンドウショッピングする人達で賑わうファッション街を、見渡しながらSOATの制服姿で歩いている。

 

「でも、ヨハネが探してるその女の子も、変わった格好してるのよねぇ?」

「ああ。一度見たら忘れられなさそうなもんだけど……あの和服って、やっぱり時空を超えてこっちに来た影響なのかな。ミカは、カシハラが言ってた時間渡航者の話、信じるか?」

「そうねぇ。いたら面白いわ、って感じじゃない? だって着物や和服が普段着なんて、アタシのママとかおばあちゃんより世代前の人なのよ!? 前に、明治っていう時代の和服と袴見せてもらったことあるわ。もう、すんごいかわいいのよ~。あんなプリーツとブーツで、アタシも花の女学生になってみたい♡ なんて。もしその子が大昔から来てたら、アタシにもその格好教えてもらえるのかしら」

「いや、どうだろうね……。にわかには信じがたいけど。そもそもそんな時代、パソコンもインターネットもないだろ。なんでこっちに渡って来て、平然と生活できてるのか気になるよ」

 

 徐々に人波が増えてきて、ヨハネは一旦ミカと別れ、雑貨店のあるあたりを見回ることにした。

 カチューシャにヘアゴム、帽子など、アクセサリーの店が、街頭にマネキンやボードを広げながら並んでいる。

 前に出逢った女の、頭のリボンが妙に印象に残っていたヨハネは、自分もその目を楽しませつつ、商品の間を見て回った。最近は被害も減ってきたが、こういう場は万引きも多い。

 

(あいつも……こういうの、付けたりするのかな)

 

 もしかしたら買いに来ることもあるかもしれない、というダメもとで、ここをパトロールの場に選んでいたのだ。

 ふと、朧げに女の顔を思い浮かべては、考える。

 和装だし、ちりめん模様のパーツが付いたヘアアクセや、簪も似合いそうだ……と考えてから、ヨハネはぶんぶんっと頭を振った。

 

(こ、これは、あくまであの格好に似合いそうなコーディネートってだけで! まるで彼女に贈り物したいみたいじゃないか。容疑者相手に何やってるんだボクは)

 

 そんなヨハネの必死の執念が奇跡を呼んだのか、ふと目の端に、見覚えのある紫色が映った気がした。

 捜して捜して、幾度となく似た色やひらひらを勘違いして振り返っては、落胆を繰り返した、あの紫色が。

 

「待っ……!」

 

 思わず、扉の外側に立つ客を飛び退かせたのにも構わずに、店の外へ出る。

 今日はセールでもやっているらしく、相変わらずの人ごみだが、行き交う革靴やヒールの合間に、するりと袴の裾の端が見えた。

 一度視界に捉えてしまえば、さすがに全身が見えなくても、あの特徴的な衣装は見逃さない。

 右へ、左へとゆらゆら動く、腰から下の袴から絶対に目を離さないようにしながら、ヨハネは彼女を追い続けた。やがて、ファッションビルが並んだスクランブル交差点の手前へ差し掛かり、彼女が道を渡ってしまう、と思ったヨハネは焦った。

 目の前にはまだ数多の人達が、押し合いへし合いしながら歩いていて、これを飛び越えながら今すぐ彼女の元へ駆けつける事など出来そうにない。ええい、と苛立つ一心で、埋もれてしまいそうなほど小さい頭のてっぺんに咲いた花飾りに呼び掛けるように、ヨハネは思い切って首を伸ばし、後方から声を張り上げた。

 

「おおい、そこの女!」

「……? 私のこと?」

 

 幸いなことに、背広姿の男の背に遮られながら、不思議そうに立ち止まった彼女が、あたりを見回す気配がした。

 間違いない。聞き覚えのある声だ。

 高鳴る胸の内には無自覚なままで、そちらの方へ人波を泳ぎながら、ヨハネが叫ぶ。

 

「他に誰がいる!」

「いや、だってナンパするなら、私より可愛い顔した子がごまんと転がってるのに、なんで私かなって」

「ナンパって……誰がナンパだ! おい、止まれ! そこを動くなよ!」

 

 突如現れたSOATの隊員に、不思議そうに通行人が道を空けるが、横断歩道の手前で立ち止まっていた彼女は、声を掛けられた時点でヨハネのことを分かっていたのか、慌てることもなく、ちょっとだけ驚いた目を見開いて、そこに立っていた。

 わざわざ荷物を持ち歩きたがらないセブンスコードの住人には珍しく、猫柄の黒い手提げ鞄を、両手で持っている。

 

「あんた、あの……」

「えーと……またお会いできて光栄です、ヨハネ隊長?」

 

 躊躇いつつ声を掛けようとするヨハネに、同じく困った顔で首を傾げる彼女。今日は薔薇の花飾りで、頭の毛をハーフアップに纏めている。

 少し呼吸を整えて、ようやくいつもの調子を取り戻したヨハネが、勢いよく喋り出した。

 

「ずっと探してたんだよ! とりあえず、SOATまで事情聴取に来てもらおうか」

「いやちょっと待って、私なんかした!? この間助けたのなんかマズかった!?」

「あれはあれで感謝してるけど、あんたが使った変な能力の方が問題なんだよ! 例の紋様の事件との関係性が分かんない以上、あんたを捕まえざるを得ない。あんたは……」

 

 そこまで話して、名前すら知らずに「あんた」を連発していた事に気付いたヨハネは、一瞬だけバツの悪そうな顔になって、言葉を飲み込む。

 

「……ボクの事は知ってるんだよね。えっと、名前」

「あ。私、ムラサキ。大野(オオノ)紫咲(ムラサキ)。よろしくね」

 

 案外あっさりと名乗ったムラサキの無邪気な笑顔に釣られ、思わず差し出された手を握り返す。

 その途端、ムラサキが姿を消す直前に感じた、あのふわりとした感覚と、淡い匂いを感じた。ぶわっと、顔に血がのぼって熱くなる。

 

「……って、前回と同じ手は食わないからねッ! 言ったそばからボクの事を惑わしてんじゃないよっ!」

「あ、いや、ごめんごめん……私、植能のコントロール効かなくってさ。うれしくなっちゃうと、つい」

「……? な、何それ……ボクに捕まりかけてるのに嬉しいの……? っていうか植能って何さ、こんな作用のある主要植能なんて、SOAT内でも聞いたことないんだけど! やっぱこいつ怪しい!」

 

 逃がしたくはないが触りたくもないヨハネと、そんなヨハネを見てテンパりつつも面白そうな顔になっているムラサキの元へ、もう一人の人物が合流しながら声を掛けた。

 

「あ、いたいたヨハネ~! もう、どこまで行っちゃったかと思ったわよ。……あら? その子ってもしかして……」

 

 たったか走って来て、不思議そうに首を捻った大男はミカだ。その姿を呆然と見上げ、口元に手を当てながらムラサキが目を輝かせた。

 

「わ、うそ……ミカちゃん……? どうしよ、かっこいい、強そう……本物初めて見た……」

「……ねぇヨハネ、本当にこの子であってるの? こ~んなにかわいくていい子が、アンタの追っ掛けてる被疑者ってわけ?」

「ミカも! ほだされてんじゃないよッ! ていうか可愛いは関係ないだろ! ほらミカ! 手錠!」

「えぇ~~……なんか可哀そうよぉ、用心し過ぎじゃなぁい? こんないたいけな女のコに。ヨハネみたいな邪でケバ~い子ならともかく」

「ボ・ク・を、引き合いに出すなッ! どーいう意味だよッ!」

 

 ぎゃあぎゃあと半狂乱で喚くヨハネに肩を竦め、一応は手錠をかしゃんと嵌めるミカ。

 大人しく抵抗もしなかったので、意外そうに瞬きをしながら、ムラサキの顔を見た。

 

「あらアンタ、暴れないのねぇ。ヨハネから、結構な手練れだって聞いてたけど?」

「いや、捕まりたくはないけど、ここまでして来られたらさすがにね……。リバー持ってるミカちゃんの前で、無駄な抵抗する勇気はないし」

 

 諦念を浮かべながらため息をつくムラサキだが、ミカは己の知名度に喜んだようだ。

 

「あら~♡ ヨハネのことだけじゃなくて、アタシのこともいっぱい知ってくれてるのね♡ ……ん? なんか今、すれ違った人からいい香りが……やだイケメンっ! ちょっと待って、このあたりイケメンパラダイスじゃないのぉ! なんでアタシったら、今まで気付かなかったのかしら!」

「うわぁ……オカマの人に効くのかどうかは知らなかったけど、ちゃんと効くんだね」

「わっ、まさかさっき手錠掛けたせいで……! おいミカ、不用意に近づくなっ、こいつ変な技使うんだから!」  

 

 しっしっ、と犬を追い払うようにミカを遠ざけてから、ヨハネは不機嫌そうにムラサキを睨む。

 

「えっと……オオノさん、でいいんだっけ?」

「やだもう、硬いなぁ。普通にムラサキって呼び捨てでいいよ〜。ヴァイスちゃん達のことは、最初っから全員名前で呼んでたくせに」

「なっ……! なんでそのことを……!?」

「そりゃもう、知ってるよ。ヨハネさんのことなら、なんだって」

 

 得意げに胸を反らすムラサキに、あら、と驚いた顔をするミカの横で、ヨハネは更なる驚愕の表情だ。

 捕縛の時、ハルツィナヴァイスのメンバー達と、ハルツィナを破ってセブンスコードの主導権を奪い返そうと奮闘していたことは、内密にしか知られていないはずで、それを知っているとなると、やはり只者ではないに違いない、と警戒の色を露わにするヨハネ。

 

「ま、まさか、あんた……」

 

 ヨハネの目が、何かに思い当たったように、一瞬差した陽光を浴びて光る。

 期待にきらきらっと目を輝かせたムラサキの前で、ヨハネは呆然としたまま、言葉を紡いだ。

 

「じゅ、重度の、ストーカー……」

「おいっっっ! ちょっとっっ! さっきまで時間渡航者云々の話しといて、なんでその結論になるかな!? ここは普通、せめてタイムトラベラーって結論になるでしょ!?」

「あ、そうか……ていうか、なんで密航者が何かってことまで知ってんだよ!? やっぱストーカーじゃないかっ!」

「いや、さっきミカちゃんと立ち話してるの聞いただけだし、あんな大声で話してたら誰だって気付くでしょ。もうちょっと機密事項に気を付けた方がいいよ……? ていうか、『密航者』って呼ばれてるんだね、私たちみたいな人って」

「私『たち』?」

 

 複数形にヨハネが引っ掛かって問い直すと、ムラサキは意味深長に微笑んでみせる。

 

「多分、私だけじゃないんでしょ? ヨハネはもう一人、なんかこいつ同じ時代の人間にしては妙だな、って子に会ったことがあるんじゃない? ヨハネによく似た、色白ボブカットの女の子」

「……」

 

 言葉に詰まったのは、そんな奴会ってたらとっくに調べてる、と言い返そうとして、不意に記憶がそれを遮ったからだ。

 明らかに示唆してはいなかったが――確かに、会ったことがある。「捕縛」の後からめっきり見かけなくなったので、完全に忘れていた。

 その前は賭場でバカ騒ぎして夜まで飲んだり、服を交換して街に繰り出したり、しょっちゅう遊んでいたのに。

 皮肉気な笑みを浮かべた、けれど自分より遥かに年上の割にはやたら幼く見える、その顔を思い浮かべつつ、ヨハネは唇を開く。

 

「まさかあんた、アイリの知り合い……?」

「んふ。知り合いっていうか、並々ならぬ関係……? んふふ」

 

 思いもがけない新たな関連性に頭を巡らせるヨハネへ、ムラサキは下から見上げるように尋ねた。

 

「それで? 本当に私を捕まえるの?」

「だから、さっきからそう言ってるだろ」

「あぁ……うーん……ヨハネさんに会えたのは嬉しいけど、捕まったら捕まったでちょっと困っちゃうっていうか……」

「ほら、やっぱり! なんか後ろ暗いところがあるからだろ! もう大人しく逮捕されろ!」

 

 再び勢いを取り戻すヨハネに、唇を尖らせるムラサキ。

 

「だって未発見の植能があるって分かったら、絶対私のことモルモットみたいにするでしょ!?」

「ふん。どういう経緯か知らないけど、ボクはまだ植能のことも密航者のことも、半信半疑だからね。あんたが巧妙な嘘つきって方に賭ける。いくらボクが可愛いからって、こんな……ううっ、ストーカー容疑が決まったら、SOATで徹底的にあんたの化けの皮を剥がしてやる!」

「いやなんか私の容疑変わってない!? それはいいの!?」

「うるさい! 絶対身ぐるみ剥いで証拠調べてやるから覚悟しなよ!」

「やだやめて、お嫁に行けない体にされちゃう! もう行ってるけど!」

「バカ言ってんじゃな……はァ!? あんた既婚者なの!? ダメだ、もう情報多くて頭痛くなってきた……」

「お二人とも。仲良く漫才やってるところ悪いけど、出動要請よ」

 

 ぎゃんぎゃん喧嘩をしているところへ、珍しく真面目なミカの声が響き、ムラサキとヨハネはそちらを振り返った。

 ミカの手に巻き付けられた小型端末が光り、異常事態を知らせている。

 同様に手元の端末がアラートを鳴らしていることに、ようやく気付いたヨハネは、物凄く気まずそうにごほんと一つ咳払いをしてから、ぴっと端末のボタンを押した。

 

「あー……こちら、NZ区特別警護班班長」

『こちらFZ区巡回班! 巨大な青い女が、街中に現れて危害を加えている模様!近隣の巡回班及び詰所隊員が戦闘中!

至急戦闘と緊急避難に加勢されたし! 繰り返す! 巨大な青い女が……っ、があぁっ』

 

 不穏な叫びを残し、ぶつり、と無線が切れる。

 思わず不安げな様子で首を傾げるムラサキの隣で、ミカとヨハネは顔を見合わせる。

 

「あたしらも、すぐに行った方が良さそうね」

「ああ、そうだな。一旦SOATに戻りたいところだけど……事態は一刻を争うみたいだし」

 

 ちらり、とこちらを眺めるヨハネの視線に、ムラサキは嫌な予感が汗となって背筋を下っていくのを感じた。

 

「あの……もしかして変なこと考えてない? 私なら、ここに置いてってもらって全然大丈夫なので……」

「バカ。そんなことしたら逃げるに決まってるだろ。あんたは連れて行く。絶対に傍を離れるなよ」

「ムラサキちゃんっ、このまま三人で飛ぶから、しっかり捕まっててねぇっ」

 

 端末同士を合わせて、大人数用のワープホールを使うヨハネ達。

 

「なんでこうなるのおぉぉぉ!」

 

 ムラサキの断末魔の叫びは、空中に消えるワープホールの奥へと吸い込まれた。

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