SEVEN's CODE二次創作夢小説【オレンジの片割れ】第一部 作:大野 紫咲
一ヶ月以上あまりの連載にお付き合いくださいまして、ありがとうございました!
そしてついに、一部が終了してもタイトル思いつきませんでした!すみません!←
二部は、秋~冬にかけてまたまったりペースで掲載できたらなと思います。
一応ざっくりとは考えてあるのですが、まだまだ未知数なところも多い脚本ですので、資料も収集しつつ、ヨハネさん達とまた楽しみながら書いていきたいです。
「ふうん……SOATの監視下に入ったか」
監視モニターに、ムラサキ達の姿が映っている。
その他、街中の監視カメラの映像も。
どんなに復興し、表向きは誰もが夢を叶えられる光溢れた世界に見えても、ふと見渡せばそこら中に闇は転がっている。
世間や家族から見放された人間。
馬車馬のようにこき使われ、生きる希望も何も見出だせない人間。
情に依存し、一度誰かに裏切られたら立ち直れない人間。
表の者達が見て見ぬフリをするだけで、自分には無縁と思いながら日々を生きているだけで、足元をすくうような常闇は、どこにだってすぐ傍に存在するのだ。かつてのオリジナルだった自分の、子供時代のように。
そんな彼らに手を差し伸べ、意のままに操るのは容易いことだった。行き場なく追い詰められた人間は、目の前に差し伸べられた手を神のものだと、いとも簡単に誤解するものだ。
けれど、ニレはそんな世界に粛清をしたい訳ではない。
ただただ、そんな右往左往する人間達が、利用するのに好都合だと思うだけに過ぎない。
人の心はかくも脆く、だからこそ莫大な思いもよらぬ力を生み出す価値が時にあると、ニレは考える。
(オリジナルのボクは、くだらない情を貶めているように見えて、結局のところ、自分自身が承認欲求や自己顕示欲、誰かの愛を希求する欲求に振り回され続けた。
浅はかだよ。ボクならもっと上手くやれる。感情を演算のシステムに落とし込み、神の創造物として操れる、このボクならね)
右手を動かすと、その空間に浮かんだ青色の設計図が、立体を伴って現れた。まるで恐怖を展示した博物館だ。
八尺様、雷鳥、テケテケとヤマノケ……そのそれぞれに×を順に指で描いて付けたニレは、「DATE UNCOLLECTED」と表示された培養槽の間をふわりと移動すると、ぼやけたように輝く水色の光の波間で、満足そうに笑みを漏らした。
「怪異のストックはまだまだいっぱいある……あの役立たずの部下共がエレメントを収集して来れば、このオモチャ達も動かせるようになるはず」
エレメントという、不可思議にして有用な存在。
各柱を拠点に放出されている、ハルツィナ達の残留思念たるそれは、かつての彼女たちの強い嘆きの影響を受け、バーチャル世界で人間の情動と強い親和性を持つ。
人に憑りつき、その感情を増幅させ、植物のようにますます育っていくのだ。
そしてそれを上手く利用すれば、人間を媒介にして化け物の生成も可能であると分かった。人間だけではなく、他の生物に宿るということも。
そして先日は、ついに人を介さない、「感情」と「エレメント」だけの製造物を作ることにも成功した。
「まさか、あのヤマノケすら倒すなんてね。結構、ボクの自信作だったんだけどな。
嗚呼……まったく、面白くなってきた。
当初の想定とは違うけれど、実に面白いよ」
洞穴の反響のように、笑い声が響く。
常闇のごとき裏空間は、一歩間違えれば廃棄されるデータ群や時空の裂け目に放り出され、二度と帰って来れなくなるような危険な場所だが、ニレはそこを自分の領土のように渡り歩いた。
表のバーチャル空間とは縮尺も違うので、どれだけ歩いても目的地が見えて来ないこともあれば、一歩動くだけで表で何座標分も距離を稼げることもある。
川を跨ぐようなたったの一足飛びで、セブンスコードを端から端まで移動したニレは、ある地区で見回り中のヨハネとムラサキを見つけた。
どうやら、小型のエレメントを宿した人間達の、暴走事件らしい。
ヨハネと植能を分け合ったことで、いつも以上に精を出して戦闘に参加するムラサキ。
その姿を、こっそり空間の裂け目から垣間見ながら、ニレは愛おし気に目を細める。
「せいぜい、その体を破壊されないように頑張ってね。
キミは、選ばれた主人公。エレメントの集積体をその身に宿し、弊害とも拮抗しながら生き残れる、ただ一人の
どこからも見えないその場所で安穏に身を横たえ、ニレは人知れず、そうっと口元を歪めて微笑んだ。
「……あと4つ」
ブンスコ二次創作 第一部 完 to be continued...?