もしも鈴木悟が少年だったら   作:パーピング

4 / 7
遅くなってしまい、申し訳ないです

ほんとは二万字ほど書いたものが2日前に完成していたのですが、PCのブルスクで消えてしまったので少しボリュームを落として投稿します、


新たなる世界

目を開けると自室のベッドで寝ていた。

薄いカーテンがベッドにかけられその先には椅子やタンスなどがとても綺麗な状態で収まっていた。

 

「…夢?…みんな……」

 

右手が痺れて動かない、見ると首から下げられた青色のクリスタルを使って作られたペンダントを強く握りしめていた。

 

とても長い夢を見ていた気がする、なぜか遠くを思うような気持がする。

 

「お目覚めになられましたか?」

 

不意に声をかけられる、目の前にはアルベドが横になっていた

 

「…うん……」

 

「おはようございます、現在は朝の7時13分です」

 

見ると左手でアルベドの手を強く握っている

 

「あ…ごめんなさい」

 

パッとアルベドの手を放し、謝罪の言葉を述べる

 

「よろしいのです、むささび様!むささび様がお求めになれば私はいつでも!この体を差し出します!」

 

「…ありがとう…でも、アルベドのその気持ちは、タブラさんが作った設定を僕が歪めちゃったからなんだよ?」

 

「構いません!それは私をむささび様が求めてくださった、そういう事ではないのですか?」

 

「・・・・・・・・」

 

「私は例え創造主、タブラ・スマラグディナ様にそうあれと作られた根幹を変えられようともかまいません!私は貴方様の為だけに!この身を!心も!全て捧げます!」

 

「…うん…ありがとう……ごめんなさい…」

 

アルベドはむささびの手を優しく包み込むと優しい声で告げる

 

「私はむささび様を愛しております、いつでも、どこでも、なんでも、何なりとお申し付けください。」

 

むささびは深く考え込む

 

「これからもよろしくお願いします。」

 

その言葉を聞くとアルベドはベッドの上で平伏し

 

「承りました、これからも忠義を尽くさせていただきます。」

 

ささびは少しやりずらくなった空気を大きめの声で霧散させる

 

「…あ、朝ごはんでも食べようか」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんなのダメです!」

 

執務室にアルベドの悲痛な声が響き渡る。

 

食事を終えたむささびは執務室へと入り、エ・ランテルで冒険者になる旨を伝えていた。

 

「アルベド、声を抑えてください、御方の前ですよ」

 

「っ!失礼しました、ですが!情報収集というのであれば!僕に行かせればよろしいではないですか!むささび様自らが行かれる必要などありません!どうか命じてください!そうすれば完璧に情報収集してきてまいります!」

 

「…で、でも、ほらナザリックに僕以上の情報収集できるのは…」

 

その言葉にアルベドは割って入る。

 

「むささび様がされなくても!ニグレドがおります!あんな人間の街一つむささび様が出られる必要はありません!」

 

むささびがどう説得したものかと悩んでいるとデミウルゴスから援護が来る。

 

「アルベド、それではむささび様をナザリックに監禁しておくつもりかね?」

 

「っ!そうじゃないわ!でも情報も不確かな人間の国にむささび様自らが赴かれ、何かあったらどうするの!」

 

「無論十分な護衛をつけるとも、むささび様、護衛はどの様にお考えですか?」

 

むささびは少し考えると答えを出す

 

「えーっと…一人は流石にだから…じゃあプレアデスから人間に変装できる人…ナーベラル辺りを…」

 

「駄目です!私をお連れください!私はナザリックにて貴方様の護衛に私以上の適任はいないと自負しております!」

 

またもデミウルゴスからの援護が来る。

 

「アルベド君は人間に変装できるのかい?」

 

「出来ないわ、でもカルネ村の時のように鎧を着れば!」

 

「それでもだよ、この世界には私たちの知らない能力がいくつかある、それは君も知っているはずだ、そんな中、鎧で隠すだけなど簡単に見破られるだろう、最低でも人間種に変身、変装できるものが望ましいだろう。」

 

「づっ!」

 

アルベドはデミウルゴスの反論に変な声を上げる

 

「むささび様、お考え直しいただけませんか?むささび様が万が一襲われた場合でも、安全に転移していただくだけの時間を稼ぎ、尚且つ人間種に変身できるもので…プレアデスよりナーベラル、ソリュシャン、ユリ辺りが適任化と」

 

その提案にアルベドが口をはさむ

 

「足りないわ!むささび様!お願いします!私を連れていけないというのであれば!せめて!せめて軍をお連れください!」

 

「アルベド!むささび様は戦争をしに行くわけではないのだよ?それに…」

 

デミウルゴスはアルベドに耳打ちする、むささびの距離からは聞き取れない

 

(いいかい?良妻は夫に常に付き従うものではなく、家で帰りを待つのだよ?)

 

(それでも!)

 

(いい加減冷静になってほしいものだね、それにプレアデスたちが三人もいれば、逃げるだけの時間稼ぎには十分だ、もし襲われた際はすぐに迎撃部隊を出し、同時に救出部隊も出す、ここまでしても不安まだかな?)

 

「っっっ!わかったわ、むささび様行ってらっしゃいませ、私は貴方様の帰りをナザリックにて待たせていただきます!(妻として!)ですがお約束ください、私の元に、ナザリックに必ず戻られると、」

 

(よくわからないけど納得してくれた?…やっぱりアルベドにはナザリックの中にいてほしいしよかった…よね?)

 

「わかりました、ギルドにかけて誓います、ナザリックに、みんなの元に必ず戻ってきます!」

 

「ならばもうお引止めはしません、行ってらっしゃいませ!無事を祈っております!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

むささび達はエ・ランテルの街を騒がせていた。

 

「おい、あれが噂に聞くアダマンタイト級冒険者チーム、蒼の薔薇か?」

 

「美しいぃ」

 

「だけど、プレートはカッパーみたいだぞ?」

 

ざわざわとする人々の視線の先には四人の冒険者が歩いていた。

 

先頭には小柄な真っ青なフード付きのローブを羽織り、泣き顔を彷彿させる奇妙なマスクをつけたマジックキャスターが歩き、その後ろにはおよそ戦闘には不向きと思われる、眼鏡をかけ、首にはスカーフが巻かれ、両腕にガントレットを嵌めた胸の大きな絶世の美女、ユーリ。

その横を腰に剣を下げ、ポニーテールの似合う女性、ナーベ。

さらにその後ろには後ろ腰に短剣を下げたレンジャーを思わせる軽装の金髪の女性、ソーイが歩いていた。

二人もユーリに負けず劣らずの美少女だったがその雰囲気はまるで違った、

ナーベは鋭い目つきで周囲に警戒の目を張り巡らせ、強気の女性を思わせる。

ソーイは余裕の笑みを浮かべ貴族令嬢のような歩き方で歩いていた。

 

「たまに話題を作るために有名な冒険者の格好を真似する輩が現れるが、そのたぐいだろう」

 

「そんなことよりお前、どの子が好みだ?ちなみに俺は眼鏡かけてる方」

 

「んー、今年一番悩む質問だな、やっぱり俺は金髪のー」

 

そんな下劣な会話をする男たちにナーベは警戒を絶やさず、殺意の目を向けていた。

 

「ミノムシ共が…むささび様殺すご許可をいただけますか?」

 

(駄目ーっ!言ったでしょ!簡単に殺すとか言わないで!それに僕はささび!様じゃなくてさん!)

 

ミスを犯したナーベに耳打ちしながら注意していると男たちが近づいてきた

 

「やぁお嬢さん方、俺たちアイアンの冒険者なんだけど、良かったら先輩として色々教えてあげるよ」

 

そんな命知らずにもナンパを仕掛けてきた者たちをユーリが庇う

 

「申し訳ないですが、私たちこれから依頼を受けにいきますので」

 

ユーリがナンパの相手をしている後ろでソーイがナーベが剣を引き抜こうとしているのを必死に止めていた

 

(もうぉー、これじゃあ先が…)

 

「み、みんな、行くよ!」

 

そう声かけすると三人はさっと切り上げ後をついてくる

 

「冒険者組合の人が教えてくれた宿はここら辺のはずなんだけど…」

 

「あれではないですか?」

 

ユーリが指さす先には教えられた通りの看板がかかっていた

 

「あ、たぶんあれであってると思う」

 

宿屋の扉の前に近づくと、冒険者組合で言われた通りの外観だった、小汚く、一階はバーになっているようだ

 

扉を開けては入っていくと、そこには店同様に小汚い連中が集まって酒を飲んでいた

 

視線が自分たちに向けられ、下卑た笑みを浮かべ、こちらを値踏みしているが、反応せずにカウンターで皿を拭いている店主らしき男の元へと向かう。

 

カウンターはささびの身長には大きく背伸びをしてやっとカウンターの上が見られるかといった高さだ、その様子を見た後ろの冒険者から笑い声が聞こえる

 

「おいおい!お使いに来るような場所じゃねぇーぞ」「さっさとママの所に帰りな!」

 

「ゴミムシ共がッ!」

 

ナーベが腰の剣に手をかけるのを脇腹に指を差し込み静止する。

 

「ひゃんっ!」

 

驚きの表情でこちらを見るナーベに小さい声で注意する

 

(ダメって言ったでしょ!)

 

(も、申し訳ありません、ささびさーん)

 

「おいおい今の声聞いたか?ひゃんだってよ、ベッドの上でもさぞかしいい声で鳴いてくれるにちげぇねぇー」

 

「そりゃあいいや、おい!姉ちゃん!そんなさえない奴の所にいないでこっち来て一緒に酒飲もうや!」

 

(ッッッ!!!ミジンコ風情がッ!!!絶対にコロスッ!!!)

 

殺人欲求を抑えているナーベを見ていると店主から声がかかる

 

「おい!なんの用だ、冷やかしなら帰んな!」

 

「あ、すみません、四人部屋をお願いします。」

 

「四人部屋?チッ!一日銀貨一枚、朝食は付けてやるよ」

 

いわれた通りの金額をカウンターに乗せると、店主はそれを乱暴に受け取り、カギを渡してくる

 

「部屋は三階の一番奥だ。」

 

「ありがとうございます。」

 

店主にお礼をいい立ち去ろうとすると引き留められる

 

「おい!坊主!お前仮にもリーダーなんだろ?リーダーがぽんぽん感謝の言葉なんて言ってんじゃねぇー、リーダーの評価はチームの評価だぞ、実家気分でいると、いつ全滅してもおかしくねぇーからな」

 

店主はそういうと再び皿を拭き始めた

 

何も言わずに階段の方へ歩き出すーーーそこに汚い足が道を塞いできた

 

「へへへへ」

 

小汚いスキンヘッドの男は下品な笑みでこちらの反応を伺っている

足を避けて通ろうとするが仲間が立ち上がり、道を更に塞いでくる。

 

「おいおい、つれねぇーな、ぼくちゃんは先に上で休んでていいぞぉ~、こっちの姉ちゃんたちをおいてってくれれば文句は言わねぇーからよ」

 

本当にこんなしゃべり方する奴いるんだ、などと思いながら仮面越しに睨む

 

「ほら、さっさと行きな」

 

チンピラが肩を叩いてくる、店主の顔を確認すると、こちらを見ていたが直ぐに顔を伏せる、それを見るとささびは男を掴んで投げ飛ばした。

 

「邪魔ッ!」

 

チンピラは綺麗な放物線を描きながら飛んでいきテーブルに大きな音を立てて激突する。

 

「なっ!こいつ!」「ただのガキじゃねぇ!」

 

そんなチンピラたちの驚きの声を一つの悲鳴がかき消す

 

「おっきゃあああああ!」

 

ざわついていた酒場がその悲鳴で一瞬で静まり返り、

悲鳴を上げた赤髪の女性がずんずんと足音を立て怒鳴りながら近づいてくる。

 

「ちょっと!ちょっと!あんた何してくれてんのよ!あんたのせいで私のポーショ、ンが…」

 

女性の声は投げ飛ばしてきた相手を見て勢いを失う。

 

「あんたが投げたの?」

 

「は、はい、驚かせてすみません」

 

赤髪の女性は頭を振って混乱を取り除くと弁償を要求してくる

 

「それで?あなたのせいで私の治癒のポーションが割れちゃったんだけど!どうしてくれるのよ!」

 

「そ、それは、あちらの人たちが始めたのであちらの方々に請求した方が、い、いいと思います。」

 

それを聞いたチンピラたちは青ざめた顔で苦笑いしている。

 

「金貨一枚に銀貨十枚よ?昼間っから酒飲んでるようなポンコツ冒険者に払えるわけないでしょ?」

 

赤髪の女性はささびを下から観察し始める。

 

「あんた見た目はぼろいけど、その青色のローブマジックアイテムじゃない、そんないい装備してるくらいだし、治癒のポーションぐらい持ってるんでしょ?弁償以上はなぞまないし、現物でもいいからさ」

 

(んーどうしよう、お金はそんなに持ってないし、あの人の割れちゃったポーション青色だし…しょうがない壊しちゃったのは僕だからね)

 

「う、うん、ならこれで」

 

ささびは懐から赤いユグドラシルのポーションを取り出すと赤髪の女性に手渡す。

 

「そ、それでいいですか?」

 

「赤い…まぁとりあえずは」

 

 

 

 

 

 

 

 

「はーっ!疲れたぁ~」

 

ささびは部屋につくと、部屋に魔法をかけベッドに大の字にダイブする。ナザリックのベッドとは比べ物にならないほど質が悪く、少しかび臭い。

 

部屋は四人で使うには少し狭くベッドも2つしか置かれていない、その他には貴重品を入れておくボックスと簡易的な椅子とテーブルがあるだけだった。

 

「お疲れ様です、むささび様」

 

ユーリからのねぎらいの言葉に顔をしかめる

 

「一応魔法は掛けたけど、盗聴されてる可能性もあるし、練習もかねてナザリックの外にいるときは、敬語なし!敬称は様じゃなくてさん!」

 

「「かしこまりました」」

 「わかりました」

 

どうやら効果があるのはソリュシャンだけらしい

 

「でもお金持っててよかった、全然ないけど、なかったら恥かいちゃう所だったよ」

 

ささびの安堵の声にナーベが疑問を訪ねる

 

「金貨であれば、ナザリックには大量にあると思われるのですが…」

 

その疑問にユーリが答える

 

「ユグドラシルの金貨を使ったらユグドラシルの者がいるってわかってしまうでしょ?だからあえて現地のお金を使うことでばれないようにしているのよ」

 

「…なるほど」

 

ささびは大きく伸びをすると疲れた声でいう

 

「もう今日は休もうかな」

 

「それでしたらナザリックにご帰還されますか?」

 

ナザリックに帰ったらもう一回出るときにアルベドが何か言ってきそうだ、猛反対してきたアルベドに困っていたのを、デミウルゴスが一言で納めてくれたのだ、アルベドを抑える方法を今度デミウルゴスに教えてもらおう。

 

「んーせっかくお金払って宿取ったんだし、ここで休むよ」

 

そこへナーベが大きめの声で意を唱える

 

「この様な薄汚い場所に至高の御方が、とま、るなど…申し訳ありません」

 

その声はささびの無言の視線で勢いを失う

 

そこへソリュシャンが前にでる

 

「それでしたら私は部屋の前で警戒を」

 

「だめ!普通の冒険者はそんなことしないよ!皆!今日はこの宿で休むの!」

 

(((ということは!誰かがむささび様のお隣で…)))

 

「ベッドの…内訳はどう、いたしますか?」

 

「みんなの好きにしていいよ、僕は…もう、ねる…から」

 

眠りに落ちる主人を見てプレアデスは顔を合わせと、無言のまま三人はこぶしを突き出す

 

(((じゃんけんッ!)))

 

ナーベラルは主人との添い寝を果たした。

 

 

 

 

 

 

朝早く、ささび達は冒険者組合の依頼掲示板を見ていた。

 

周りの冒険者がこちらを伺ってはひそひそと蒼の薔薇だの偽物だのと話をしているのが目につくが気にしないようにする。

 

ちらりと三人を見るが昨日言い聞かせておいただけ甲斐あって、殺気が多少漏れているが、抑えているようだ。

 

(んー看板に書かれてた文字でわかってたけど…やっぱり読めないなぁー)

 

「みんな…読める?」

 

「いえ、私はこの文字を知りません」

 

ユーリは読めないらしい二人にも顔を向けるが、首を横に振るだけだった。

 

「受付の人に聞いた方が良さそうかな」

 

受付カウンターまで歩き、背伸びしてギリギリ頭の見える受付嬢に声をかける

 

「あのー」

 

「はい、何か御用でしょうか」

 

後ろではささびのその姿を見てクスクスと声が聞こえる、むっと形のいい眉を顰めると魔法を唱える、ささびの体が薄い魔法の膜に覆われ、ふわっと体が宙に浮き、カウンターに適切な高さで停止する。

 

それを見たほかの冒険者はぎょっとした顔を見せるとすぐに目を伏せた

 

「ふふんっ♪」

 

「あ、あのー」

 

受付嬢から戸惑いの声を聴きはっと気が付き会話を再開させる。

 

「ごめんなさい、掲示板の文字が読めないんですが、どういった依頼があるか教えてもらえませんか?」

 

「えぇ?」

 

受付嬢は驚きの声を上げるとしばらく固まっている

 

「あ、ごめんなさい、僕たちは異国の人間でこの国の文字が読めなくて」

 

「な、なるほど、そういう事でしたか、それでしたらご案内させていただきますね。」

 

そういうと受付嬢はカウンターからいくつか書類を取り出す。

 

「依頼を受けるのは初めてですか?」

 

「はい」

 

「それでしたらこちらの薬草採取が最も一般的に初心者の方がこなされる依頼です」

 

「んー、僕は第四位階魔法が使えます、ナーベは第三位階、ユーリもソーイもそれに見合う実力を持ったレンジャーとモンクです、もっと難易度の高いものをさせてもらえませんか?」

 

その発言に周囲がざわつくが目の前の少年が宙に浮いている魔法はフライ、第三位階、それを小柄な少年が背が足りないという理由から使っているのを見れば、何らおかしい話ではなかった。

 

「申し訳ございませんが規則ですので、カッパープレートの方は例外なく、カッパープレートの依頼以外は受けることはできません。」

 

「そうですか…それならカッパーの依頼で最も難易度の高い仕事をお願いします。」

 

「わかりました、ただいまご用意いたしますね。」

 

(やった!誘導成功!!!)

 

思わずガッツポーズを取りそうになるのをギリギリ抑える。

 

いい終えると受付嬢はカウンターの後ろへと下がっていくそこへ後ろ声がかかる。

 

「それでしたら、私たちの仕事を手伝いませんか?」

 

見るとそこには銀級冒険者チームが立っていた。

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、お話を聞かせてください」

 

ささびがそういうとリーダーらしき声をかけてきた男が声を上げる

 

「ではまず自己紹介から、私が漆黒の剣のリーダー、ペテル・モークです、戦士をやっています。あちらがチームの目と耳である、レンジャーのルクルット・ボルブ」

 

ルクルットと紹介された男はナーベに手を振るが、相手にもされていないようだった

 

「こちらが治癒魔法や自然を操る魔法を使う、ドルイドのダイン・ウッドワンダー」

 

ダインは優しそうな笑顔でにっこりと笑うと軽く挨拶をしてくる

 

「よろしくお願いする」

 

「そして最後にマジックキャスターであり、チームの頭脳、ニニャ・ザ・スペルキャスター」

 

ニニャは少し気恥しそうに挨拶をする

 

「よろしく、しかしペテル、その恥ずかしい二つ名やめません?」

 

「いいじゃないですか」

 

「実はこいつタレント持ちなんだ」

 

(タレント…この世界の生まれついての特殊能力…だったっけ?)

 

「魔法適正とかいうタレントで確か習熟に8年かかる魔法が4年で済むんだっけ?」

 

「すごい、半分しかかからないんですね!」

 

「この能力を持って生まれたのは幸運でした、夢に踏み出す第一歩が踏み出せたのですから」

 

「なにはともあれ有名なタレント持ちという事です」

 

「まぁこの街には私よりも有名な方がいらっしゃいますけどね」

 

「バレアレ氏であるな」

 

「バレアレさん?」

 

「なるほど彼のことをご存じなかったんですね、彼はあらゆるマジックアイテムを使用可能というタレントを持っていまして…」

 

それを聞くとナーベが漆黒の剣に聞こえないように耳打ちしてくる

 

(その人間、危険かと)

 

(うん、わかってるよ、大丈夫)

 

「この街で名の知れた薬師の孫にあたる人物で高品質なポーションなどを手に入れたい際は彼の所に行くのがもっと信頼できますね」

 

頷いて返すと、本題に入っていく

 

「それで今回手伝っていただきたい仕事の話なのですが、実は依頼というわけではないんです。」

 

「どういうことですか?」

 

「モンスターを倒すと、街から組合を通して報奨金が出るんですが、それを目当てにトブの大森林あたりの草原でモンスターを狩ろう、と考えています。」

 

「モンスター討伐…ですか?」

 

「はい、という前にチームと相談させてもらってもいいですか?」

 

「もちろんです」

 

了承を得ると三人の方へ向くが・・・

 

「私はささびさーん、が決めたことに従います」

 

「私も異論ございません。」

 

「私もですわ」

 

「・・・・・・・」

 

漆黒の剣に向き直る

 

「大丈夫みたいです」

 

漆黒の剣は苦笑いしていた。

 

 

 

 

 

話も一通り終わり冒険者組合の階段を下りていた。

 

「それじゃあ準備したい事などありますか?」

 

「いえ、特にありません」

 

「それでしたらすぐにでも出発しましょう」

 

そこへ受付嬢から声がかかる。

 

「あ、ささびさん、ご指名の依頼が入っておりますが…」

 

その言葉に一行は足を止める。

 

「…は、はい、どなたでしょうか……」

 

「ンフィーレア・バレアレさんです。」

 

受付嬢から聞かされた言葉にプレアデスたちを除いた面々が驚きの声を上げる

 

「「「えぇ?」」」

 

面々が驚いていると階段の影から新たな人物が顔を出す。

 

「どうも、僕が依頼させていただきました、ンフィーレア・バレアレです」

 

ナーベが腰の剣に手をかけ、ささびの前に出ようとするのをすかさず脇腹に指をさし止める

 

「ひゃんっ!」

 

(もう!勝手な行動しないで!警戒しすぎると僕たちが警戒されちゃうよ!)

 

ナーベは頭を下げて脇に戻る

 

「ごめんなさい、僕たちは既にほかの依頼を受けたので、お断りさせてもらいます。」

 

その言葉にペテルが反応する

 

「え?せっかくの指名の依頼ですよ?」

 

「え、でも先に漆黒の剣さんたちから依頼受けてるし、それに高額な依頼が飛び込んできたからってそっちに行くのはちょっと…」

 

「でも!せっかくの指名ですし」

 

(なんで自分たちが断られるのにこんなに言ってくるんだろう…僕たちが嫌になったとか?やっぱりプレアデスたちかなぁ…)

 

「じゃ、じゃあ、バレアレさんの依頼を聞いてから決めるという事で…」

 

 

  

 

 

 

 

「僕はンフィーレア・バレアレ、この街で薬師をしています。今回、薬草採取の為にカルネ村近くの森まで行くつもりです。それで、そこまでの護衛と薬草採取の手伝いを依頼したいのですが…」

 

ささびは少し俯き、話始める

 

「それは構いません。ですがどうして僕たちなんでしょうか、僕たちは昨日この街に来て、知り合いと呼べる人たちはたった今できた、漆黒の剣の人たちぐらいです。そんな中どうして僕たちへの指名なんですか?」

 

「それは…宿屋の一件を聞いたからです。」

 

「宿屋の一件ですか?」

 

「はい、お店に来た人たちが話していたのですが、イビルアイさんにそっくりな格好をした子供のマジックキャスターがアイアンのプレートを付けた大人を投げ飛ばしたって、ちょうど今まで依頼をしていた人たちが他の街に行かれたので、新しい人を探す目的と、カッパーの人たちならお安いかなって思いまして…」

 

(…もう正体がバレちゃったのかな?それにイビルアイって誰なんだろう…それに漆黒の剣の人たちの依頼もあるし…ここは……)

 

「漆黒の剣の皆さんよかったら一緒に依頼を受けませんか?」

 

「はい、それは構いませんが…」

 

ペテルはちらっとンフィーレアの方を見る、やはりカッパーとは言え2パーティーを雇うとなれば話は変わってくるはずだ

 

「行きはンフィーレアさんの護衛に専念してカルネ村まで行き、薬草採取をして、帰りは積極的にモンスターを狩り、組合からの報奨金をもらう、どうでしょう?それに薬草採取ではダインさんのドルイドの力は役立つと思います」

 

ンフィーレアは特に考える素振りも見せずokを出す

 

「わかりました、それで構いません」

 

(やっぱり…銀級、銅級冒険者チームを雇うんだったら、もうちょっと上の冒険者チームをやっとった方がいいだろうし、それに帰りにモンスターを狩るってことは危険度も上がるし、下手をしたら積み荷を、せっかく採取した薬草を捨てて…なんてことになっちゃったら大変だもん、やっぱり他に目的があるんじゃあ…)

 

「どうされました?」

 

ンフィーレアに声を掛けられ、深くかんがえこんでいたことに気づく

 

「い、いえ、何でもないです、じゃあ、準備とかどうしますか?僕たちと漆黒の剣の皆さんは準備は終わってますけど…」

 

「それならすぐに出発しましょう!」

 

 

 

 

 

ささび達はエ・ランテルを出て、既にそれなりの距離を進んでいた。

 

「ささびさん、この先の小川があります、そこで馬を休ませたいのですがよろしいですか?」

 

「はい、大丈夫です」

 

小川に到着すると馬を休ませ、漆黒の剣やみんなもある程度警戒しながら腰を下ろし休憩している。

 

ささびはユーリに近づくと耳打ちする

 

(さっき魔法でちょっと調べたんだけど、やっぱりあのンフィーレアって人、僕たちに何か目的があるらしいんだ)

 

(それは…私たちの正体がバレた、もしくは怪しんでいるという事でしょうか?)

 

(わからないけど、普通の依頼じゃないって事だけはわかったから注意してね…もうカルネ村までのルートは調べたけど、待ち伏せとかそういう人はいなかったから大丈夫だとは思うけど…)

 

(かしこまりました、注意しておきます。)

 

そんなやり取りをしているとルクルットが近づいてくる

 

「ナーベさんは恋人とかっているんですか?」

 

「いません」

 

ナーベは冷たく言い放つがルクルットには全く効果が…というより逆効果だったらしい

 

「惚れました付き合ってください!」

 

「黙れナメクジ、引っ込まないと喉をつぶしますよ?」

 

ナーベの人へと向ける態度に冷や汗をかきながら注意する

 

「な、ナーベさん!そんなこと言ったらだめです!」

 

そこへペテルが援軍に来る

 

「こらっ!ふざけてないで警戒しろ!」

 

「いてっ!殴ることないだろ!どうせここにはゴブリンやオーガぐらいしか出ないんだからよ」

 

そこへニニャも話に入ってくる

 

「そんなことはありませんよ、昔の文献にはフロストドラゴンがアゼルリシア山脈から飛んでくるって話もあるんですから」

 

ささびは話題を変えるためにその話に乗っかる。

 

「フロストドラゴン…他にこの辺りに出る強いモンスターの情報はありますか?」

 

その疑問にはンフィーレアが答える。

 

「トブの大森林のちょうどカルネ村側は森の賢王という魔獣の縄張りになっています、なんでも数百年生きている強大な魔獣で、蛇の尻尾を持つ大型の四足獣と伝えられてます。」

 

「え?確か薬草採取には森に入るんじゃ…」

 

「はい、ですが僕のおばあちゃんが若いころからずっと通っているスポットでして、魔獣がたまに出るぐらいで、森の賢王には遭遇したことはないそうです。」

 

「そうなんですね」

 

 

 

 

 

 

 

ささび達は既に休憩を終え、カルネ村へと向かっていた

 

「これからトブの大森林沿いの道に出ます、ちょっとした危険地帯なので警戒をお願いします」

 

依頼主からの要請にささび達一行も警戒を一段階引き上げる、無論ソーイやささびの魔法の探知から逃れられる物がいないことは既に確認済だが、対面上そうした方がいいだろう。

 

「ナーベちゃんっていつも余裕の態度だよなぁやっぱり俺の目と耳を信じてるから?」

 

そんな余裕の態度を感知したルクルットが軽口を叩きながら近づいてくる

 

「違います、ささびさーんがいるからです」

 

ルクルットは悲しそうな顔をすると爆弾を投下してくる。

 

「もしかして、ささびさんとナーベちゃんって恋仲だったりするの?」

 

「なっ!何を言うのですか!ささび様にはアルベド様という方が!」

 

ナーベに爆弾がクリティカルヒットし、更に爆弾が追加される。

 

「あ、なっ、ナーベ、言っちゃダメ!!」

 

「あ、あぁ」

 

ナーベは失言を自覚し、自分の口を押えている

 

「あちゃ~」

 

ルクルットは苦笑いしながら答える

 

「そ、そっかささびさんには決まった相手がいるんだ」

 

そんなルクルットをペテルが後ろから殴りつける

 

「こら!仲間がすみません、詮索はご法度だというのに…」

 

ささびは深くため息をつくと言葉を返す

 

「い、いえ、こちらこそ、気をつけてくれれば問題ないです…」

 

やりにくくなった空気をやりにくくした張本人が変えに掛かる

 

「ささびさん、さっき周囲警戒してるって言ってたけど、ささびさんってマジックキャスターだろ?」

 

「あ、いえ、感知系の魔法を使っているので」

 

「なぁーニニャ、第四位階魔法の習得ってどれくらいすごいんだ?」

 

ルクルットは後ろを歩く中性的な顔立ちの少女に疑問をかける

 

「凄いなんて話じゃないですよ、常人の限界が第三位階までとされてますからね、それを超える第四位階は、才能を持った人が更に努力を重ねてやっと習得できる領域です、ちなみに第四位階まで使える人は平均で50歳ぐらいですよ」

 

「さ、ささびさんって何歳なの?」

 

「ぼ、僕は13歳です」

 

ニニャがその言葉に驚きの声を上げる

 

「ほんとですか!?13歳で第四位階まで習得なんて…」

 

(やっぱりナーベと同じ第三位階までにしといたほうがよかったかな…)

 

「ささびさんはどこで魔法を学ばれたんですか?」

 

「ぼ、僕はー、その、仲間たちと、独学で…」

 

その言葉は更にニニャを驚かせる

 

「独学で、その速さでそこまで?!」

 

その言葉にダインも同意する

 

「まさに英雄であるな」

 

ささびはその言葉を返す前に、自分の探知系魔法に反応があったのに気が付く

 

「…来ました、森のあちら側、オーガ6体、ゴブリン32体」

 

少し先に見えるまだ何も見えない森を指さす

 

「正確な数までわかるんですか?」

 

「あ、は、はい」

 

「ゴブリンの群れにしては大所帯だな、どうする?」

 

「僕たちは問題ないですよ」

 

その言葉を最後に全員が戦闘態勢に入る。

 

「ンフィーレアさんは後ろへ!采配はどうしますか?」

 

「僕たちが前衛をやります、漆黒の剣の皆さんは横から挟撃してください。」

 

「わかりました、よしみんな!戦闘準備!」

 

「でもこのまま戦闘をすると森に逃げられる可能性があるけど…」

 

「なら、いつも通りの手で行こうぜ?」

 

「そうだな、ささびさん、相手を出来るだけ引き付けてください、残らず殲滅しましょう!」

 

「わかりました。敵の突撃はユーリとソリュシャンがブロックします、抜けてきたゴブリンたちは僕とナーベが撃ちますから、漆黒の剣の皆さんは、前衛の衝突と同時に側面に回って攻撃してください。」

 

「了解です、ダイン、私と一緒に突撃、敵を混乱させる、ルクルットは一歩後ろでニニャの護衛と乱戦の指示、ニニャは防御魔法を張り終わったら攻撃魔法で各所の援護に」

 

「「「了解」」」

 

「奴ら見えてきたぜー!」

 

「それじゃあみんな説明した通りにお願い」

 

「「「わかりました」」」

 

(んー敬語もちょっとは柔らかくなったし…いいの、かな?)

 

そんなことを考えていると、ゴブリンたちはどんどんと近づいてくる。

 

そしてユーリとソーイが先頭を走ってくるオーガたちを薙ぎ払う。

 

ユーリはオーガが振り下ろした棍棒を軽くよけ、懐に入り込むとオーガの腹に一発だけ独特な構えから発勁を繰り出す。

美しい細い腕がオーガの腹に当たるとオーガの腹は殴られた方とは反対側から内臓をぶちまける。

 

「グォオオオオオ!!」

 

後ろから更に突撃しようとしていたオーガたちに内臓をぶちまけ残りのオーガは驚き、足を止める。

 

その隙をソーイは見逃さない、アサシンのクラスを取得している彼女はユーリとは対照的にユーリに気を取られているオーガの首を静かに切り裂いていく。

 

最初の一体のオーガが倒れるまでに更に2体のオーガの首を掻き切り、最初の激突で既に4体のオーガが倒れていた。

 

「す、すげぇー!!」

 

「あれじゃあ、オリハルコンいや、アダマンタイト級じゃないか」

 

「私たちもいくぞ!」

 

漆黒の剣は激突を確認すると、ユーリ達に気を取られているゴブリンたちの側面に回る。

 

「はぁっ!」「ふんっ!」

 

ペテルとダインが横から突撃し、ゴブリンたちを倒していく、横や背後に回ろうとすれば、ルクルットやニニャから攻撃が飛び乱戦に持ち込ませない形だ。

 

ささびとナーベはそれを上空から確認すると、攻撃魔法を放つ。

 

「ファイヤーボール!」「ライトニング!」

 

更に二体のオーガが倒れ、一番の脅威が全滅する。

 

自分たちだけになったゴブリンは不利を察して逃走を試みる

 

「くっそ!待て!」

 

残りのゴブリンも森から離され開けた場所で逃げ場なく殲滅されるだけであった。

 

 

 

 

 

 

戦闘が終わり、辺りも暗くなり始め、一行は野営を始め、食事を取っていた

 

焚火にを囲み、暖かいお肉入りのスープはあまりいい味ではなかったが、疲れた体にはちょうど良かった。

 

「いやー凄かったな!」

 

漆黒の剣のメンバーは各々関心の声を上げる。

 

「えぇ、ユーリさんたちの能力もすごかったですが、ささびさんとナーベさんの上空からの支援はとてもありがたかったですね」

 

「うむ、オーガの腹を貫いた拳、お見事である!」

 

「まさに英雄の戦いって感じだったなー、ナーベちゃんも下から見てたけど、かっこよかったぜ!」

 

「・・・・・」

 

「い、いえ僕たちもまだまだですよ…」

 

漆黒の剣は顔を見合わせると、苦笑いをする。

 

「みなさんも、いい連携でした、お互いの能力をちゃんと把握していないとできない、いい動きでした。」

 

「まっ、俺たちには共通の目的があるからな!」

 

ルクルットがそういうと、漆黒の剣の全員が懐から黒い短剣を取り出し話始める。

 

「俺たちはのチーム名、漆黒の剣って名前も十三英雄の黒騎士から取ったものなんだ、これを見つけるのが俺たちの目標なんだ」

 

「本物が手に入るまでの間、これが私たちの印なんです」

 

「やっぱり、みんなで一つの目標があると違いますよね」

 

「ささびさんは羨ましいよぉおー、そんな美女に囲まれて冒険できるんだからなぁーうちのチームは男だけだから」

 

「ささびさんの冒険の話も聞きたいです!」

 

ニニャがそういうとほかの面々も聞いてくる

 

「そうですね、そこまで強くなれた理由も聞いてみたですね!」

 

「じ、実はこのパーティーは結成して間もなくて、前はもっと大きな場所に所属してたんです」

 

漆黒の剣に促され、ささびは輝ける記憶の始まりを話し始める。

 

「僕がとっても弱かったころ、僕を助けてくれたのは純銀の聖騎士でした。

一人ぼっちだった僕を助けてくれて、暖かく迎え入れてくれたんです、そして数年間一緒に冒険をして、みんなと過ごした時は、思い出は、絶対に忘れられない、本当に大切な宝物なんです。」

 

これまで話に興味がなさそうにしていたプレアデスたちも真剣な面持ちでささびの話を聞いていた。

 

「いつの日か、その人たちに匹敵する仲間ができますよ!」

 

「そんな日は絶対にこない!」

 

ささびはとっさに出してしまった言葉にはっとするとすぐに謝罪する。

 

「ごめんなさい、少し風にあったって来ます…」

 

ささびがその場を立ち去るとプレアデスたちもついてくる。

 

 

 

 

 

少し重い空気が流れ、ぱちぱちと薪の音だけが夜の草原に響いていた。

 

「悪い事を言っちゃったみたいですね」

 

「うむ、何かあったみたいだろうな」

 

「ささびさん普段は大人しそうだったのに、あんなに…」

 

「全滅ってところじゃないかな…仲間を戦闘で全員失った人はあんな感じの雰囲気を見せるよ」

 

「全滅…か、あの年で、きついだろうな…」

 

普段は軽口ばかりを叩いているルクルットすらも、妙な面持ちで俯いていた

 

「発した言葉は元には戻らないのである、故に、それを塗り替えるだけの何かをかの御仁に抱かせるしかないのである。」

 

「…そうします」

 

(奪われる辛さは知っていたはずなのに、どうして考えが至らなかったんだろう…)

 

 

 

 

 

 

ささびは夜風の冷たさを肌で感じながら、夜空を見上げていた。

 

「ささび様大丈夫ですか?」

 

ユーリが後ろから近づき声をかけてくる

 

「あの人間に不快感を?」

 

ナーベは殺意を持って質問してくる。

 

「私であれば命じてくだされば、病気に見せかけて殺すことも」

 

ソーイも怒りを覚えているようだ。

 

「みんな…敬語…」

 

「…はい」

 

何故か胸が苦しい、締め付けられているような、体が内側から冷やされているような気持になる

 

「んっ…ぐすっ……」

 

「ささび様、やはり今日はもうお休みになられた方が…」

 

「…っ…ふ…う、うん……」

 

漆黒の剣の人たちや依頼主に聞こえぬよう必死に押し殺すが、それでも涙が溢れてくる。

 

「…ささび様…」

 

ユーリが近くに来て背中をさすってくれる。

思わずユーリに抱き着きその涙を必死にこらえるのだった。

 

 

 

 

 

 

ささびとユーリをテントに見送ったソーイは皆が食事を取っていた場所まで戻っていた。

 

「あ、ソーイさん」

 

「ささびさんは先にテントでお休みになられました、夜の警戒は私とナーベで交代で行いますから、皆さんはもう休んでください、それでは」

 

早々と立ち去ろうとするソーイをニニャが引き留める。

 

「ソーイさん、さっきほどはもうしわありませんでした!」

 

ニニャは頭を下げて謝るがソーイは素っ気なく返す

 

「それであれば直接ささびさんに謝るのがよろしいかと、それでは」

 

ソーイは冷たく言い放つと足早にその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

ささびが寝静まったころ、エ・ランテルの墓地では不穏な影が動いているのだった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いかがだったでしょうか、シャルティア戦までは原作に遵守することにしました。

次回もちょっと長くなってしまいそうです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。