SSSS.01 X-OVER DREAM《仮面ライダー×グリッドマン》   作:ヒダリテ

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 先日、ありがたいことに読者の方から感想とお褒めの言葉をいただきました。
 クロスオーバー小説ともなると読者の対象が絞られるので、正直ネットに投稿しても注目されづらいのですが、こうしてコメントをいただけるととても励みになります。

 さて、今回から本格的にゼロワンとグリッドマンの世界が交錯し始めます。
 その中で、劇場版ゼロワンの核心を突くネタバレが出てきますのであらかじめご了承ください。

P.S. 亡さんの台詞書くの超難しい。


第02回 世界脅かすソノ正・体
#1


---side ?????---

 

 あたり一面の暗闇。

 否、そこは暗闇というほど漆黒に覆われていなかったが、禍々しいオーラが水面のようにおぼろげな床に反射して、空間を赤黒く照らしていた。

 その中で、一際黒い身体をもった異形が一体。アレクシス・ケリヴである。

 コツ、コツ、という足音にアレクシスが振り返ると、そこには人間の女の姿を模した機械人形がいた。

 頭部のモジュールを赤く光らせる、アズというそのヒューマギアが、アレクシスに語りかける。

 

「上手く逃げられてしまったみたいね。あのグリッドマンとかいう奴に」

「大方私の予想通りさ。奴があの程度の光線で命を落とすとは思っていなかったからね」

「あら、因縁の相手の割に肩を持つのね。もしかして、アイツのことが好きなの?」

 

 アレクシスを挑発するように言ったアズに、アレクシスは溜息交じりに答えた。

 

「逆だよ、アズくん。人間の破滅的な情動を依り代とする私にとって、ああいう真っ直ぐな心みたいなものを振りかざす連中は嫌悪の対象でしかない。ただ、君のように心もないくせに感情を操っているような気になっている連中が、もっと嫌いなだけさ」

 

 そう言って、あからさまに侮蔑の態度をとったアレクシスに対し、アズも口角を釣り上げながら答える。

 

「命の恩人にひどい言い草ね。まぁ、ビジネスパートナーはそれくらい正直な方がやりやすいけど」

 

 言いながら踵を返し、アズが足音を鳴らして去ってゆく。

 アズの姿が見えなくなる直前、アレクシスが問いかけた。

 

「ところで、君の服装はいったい何のつもりだい?」

 

 アズが振り向く。最初にアレクシスと出会った際は、それこそ秘書のような恰好をしていたアズだったが、今はプリーツスカートにブラウスを着込み、その上から一回り大きなサイズのパーカーを羽織って、腕のあたりまで下ろしている。

 

「貴方好みにしてみたのよ。似合うでしょう?」

 

 そう言って満足気な表情を浮かべた、アズが暗闇の中に消えてゆく。

 アレクシスは再び溜息をついて、「やはり何もわかっていないようだ」と独り言ちるのだった。

 

---side real world---

 

 悲鳴を上げて逃げ纏う人々。

 その光景はさながらゾンビ映画のようだったが、人々を追いかけるのはゾンビではなく、無数のトリロバイトトルーパー。もぬけの殻の疑似ヒューマギアであった。

 人々の前には、こういった非常時に限って、ちょっとした障壁が立ちふさがるものである。

 逃げ行く人々の先には数段ほどの階段があり、一人の幼児がつまずいて転んだ。

 そのことに気付いた母親が慌てて引き返そうとするが、人の波に押されて息子のもとから離されてしまう。

 少年も母親がどんどんと離れていくのを見て、涙を零す。

 そんな彼のもとに、無慈悲にもトリロバイトトルーパーと魔の手が伸びた、そのとき。

 

「おぉぉらぁっ!」

 

 現れた作業着姿の男が、鋼鉄の身体を持つ機械兵士を素手で殴り飛ばした。

 トリロバイトトルーパーたちが一瞬ギョッと固まった隙に、男は拳銃、否、エイムズショットライザーを取り出し、乱射して群れを退けてゆく。

 男は少年のもとに母親が戻ってきたことを確認すると、「早く逃げろ」と告げてショットライザーを構え直す。

 何度も頭を下げて感謝を伝える母親の声と、少年の「おじさんありがとう!」という声を背に、「まだそんな年でもねぇよ」と文句をつけながらも男は笑みを浮かべた。

 トリロバイトトルーパーたちもまた男に銃口を突きつけ一斉に発砲したが、男は先ほど殴ったトリロバイトトルーパーの体を起こし、それを盾にして突き進む。

ショットライザーで次々に敵を打ち抜いてゆくが、死角からの狙撃を受けてショットライザーを落としてしまう。

 男は仕方なく、腰に携えていた赤色灯を引き抜き、刀代わりにして振り回し始める。

 かの有名なSF映画の主人公のように光る棒を操ってトリロバイトトルーパーを殴打していくが、ある程度のところで赤色灯が折れてしまい、とうとう拳以外の武器がなくなってしまう。

 

「くそっ…!」

 

 ここまでかと男が覚悟したとき、彼の周りに突如業火が巻き上がり、トリロバイトトルーパーたちを焼き尽くしてゆく。

 さらに、彼の横を身体が真っ二つに斬り裂かれたトリロバイトトルーパーの亡骸が飛んで行った。

 燃え盛る竜巻が収まると、その中心から赤い身体の二人の仮面ライダーが現れた。

 

「お前ら…!」

「滅たちがちょっと手を離せない状況みたいだからね。僕たちが助太刀するよ」

「おらよ。お前の落とし物だ」

 

 ピンチに駆けつけた二人の仮面ライダー、迅と雷。

 雷から手渡されたショットライザーを手にして、男も彼らと並び立つ。

 

《KAIJU NOVA!》

 

 妖しげなシステムボイスとともに、トリロバイトトルーパーが再び現れる。

 その源流をたどると、そこには雑に作られた粘土細工のような鎧を身に纏った未知のマギアの姿があった。

 

「大本のアイツを倒さないと、意味がないみたいだね」

「雑魚を倒しながら、なんとか隙を狙っていくしかねぇな」

 

 そういって、迅と雷が改めて臨戦態勢をとった。

 

「おい、俺抜きで話を進めるなよ。要は、全員ぶっ潰しゃいいんだろ?」

「…いや、違うけど、もういいよバルカンはそうしててよ」

 

 バルカンと呼ばれた男が、懐からグリップ付きのプログライズキーを取り出し、スイッチを入れる。

 

《ASALT BULLET!》

 

「だったら任せろ。ふっ!ぐぉぉぉっ、おらぁっ!」

バキッと力任せにキーをこじ開け、ショットライザーに装填して引き金を絞る。

 

「変身!」

 

《SHOT-RISE! READY GO! ASALT WOLF! No chance of surviving.》

 

 放たれた弾丸がオオカミの形をかたどり男のもとへUターンして戻ってくる。それを男が握りつぶすように掴み取ると、彼の身体がコバルトブルーの外装に纏われた。

 あるときは、A.I.M.Sの主戦力にして隊長。あるときは、飛電製作所の用心棒。そして現在は、交通整備のアルバイトで日銭を稼ぐ一匹狼、不破諫。

 彼が変身するのは、怒りに燃える闘志に呼応して生まれた、オオカミと銃撃のアビリティを宿した重戦士。仮面ライダーバルカン アサルトウルフ!

 

「はぁっ!」

「ふんっ!」

「おらぁっ!」

 

 迅はベルトのバックルからザイアスラッシュライザーを抜刀し、刺突と斬撃でトリロバイトトルーパーたちを斬り捨てる。雷は羽根を模した二刀の大太刀で、四方の敵をなぎ倒す。バルカンはアームキャノンから放たれる砲撃で、迫りくるトリロバイトトルーパーたちを蜂の巣にしてゆく。

 三人のライダーと怪人軍団の戦いの火ぶたが切って落とされた。

 

 

 時は数日ほど前に遡る。

 グールギラスマギアの出現によって明らかになった、新たな敵の存在。

 その対策を講じるため、飛電インテリジェンス本社社長室に隣接する整備室には続々と仮面ライダーが招集されつつあった。

 また一人、社長室の戸を叩くものがいた。

 

「悪い、遅れたな社長!」

 

 勢いよく入ってきた不破諫が、整備室への階段を駆け下りる。

 

「遅いぞ不破。というか、なんだその恰好は」

「刃隊長、彼は先月より交通整備員として勤務中です」

「交通…お前、それなりの大学出てるんだからもっとマシな仕事をしたらどうだ」

「うるせぇ!本職が決まるまでの繋ぎだ。あと、亡も亡でなんで知っていやがる」

「…以前もお伝えしましたが、あなたが一度私のゼツメライズキーで変身したことで我々の脳内回路は部分的に同期しているのです」

 

 と、繰り広げられる新旧A.I.M.S組の漫才を微笑み交じりに見つめながらも、「さて」と或人が仕切り直した。

 

「そろそろ始めようか。イズ」

「はい」

 

 秘書のイズが頭部のモジュールに手を当てると、整備室内に人型の立体映像が浮かび上がる。

 滅亡迅雷.netのアジトからは滅と迅、ZAIAエンタープライズ日本支社の電気室兼サウザー課室からは課長の天津垓、そして宇宙ステーションからは元・滅亡迅雷.netの雷こと宇宙野郎雷電の姿が映し出された。

 

「うおっ、なんだこりゃ」

「我が社が開発した高次元リモート会議システムです」

「へぇー。またすげぇモン作ったんだな。なぁ、社長」

 

 感嘆の声を上げた不破が或人の方を向くが、或人はどこか困ったような表情を浮かべ、唯阿と亡は呆れたと言わんばかりに溜息を吐いた。

 イズが小首を傾げて不破に言う。

 

「そもそも本日はあなたもリモートでの出席のはずでしたが」

「…は?」

「不破、やはりお前に就職は無理だ。ホウレンソウがなっていなさすぎる」

「ま、まぁまぁ!ほら、やっぱり実際来てくれて話した方が良いかもしれないし!」

 

 或人が気を利かせてフォローしたが、諫はそれなりにショックだったのか落ち込んでしまっていた。

 と、そんなやり取りをしていると、ホログラムの滅が口を開いた。

 

「飛電或人。今回の件の黒幕は、おそらくこの世界にはいないぞ」

「えっ、それってどういう…?」

 

 ようやく本題に入ったことで、皆の表情が引き締まる。

 滅の話を、横にいる迅が補足した。

 

「僕も滅も、アークと接続していた期間が長いだけあって、マギアが生まれる予兆みたいなのが少しわかるんだ。でも、今回はそれを感じなかった」

「とはいえ、マギアの出現がアークの存在を裏付けている。アークの居所は、考えられるとすれば稼働中の衛星だが…」

「その可能性は、俺が無いと断言できるからなぁ」

 

 滅と迅に続いたのは、宇宙ステーションの雷である。

 

「俺が今いるこの衛星は、開発から打ち上げ、分離に至るまで俺がずっと見守ってきたが、不正なアクセスは確認できなかったぜ」

 

 宇宙野郎雷電として飛電インテリジェンスに戻っていた雷は、新造された小型人工衛星ゼアツーのキャプテンとして活躍していた。

かつてシンクネットが世界中で大規模テロを起こした際に、事件解決のカギとなったのは各機関、各仮面ライダー間でのリアルタイム・コミュニケーションだった。

 そのことを受け、飛電インテリジェンスは非常事態において仮面ライダーたちを結ぶためのネットワークを展開し、その運用拠点として衛星ゼアツーを打ち上げたのだった。

 この会議システムもまた、ゼアツーが展開するネットワークによって構築されているものである。

 

「つまり、アークの力無しでは生成できない新種マギアが確認されたにも関わらず、この世界にアークが存在しうる環境がどこにも無いということですね」

「だから、この世界に黒幕がいない、か」

「…いや、どういうことだ?この世界にアークがいないなら、どこにいるって言うんだよ」

 

 不破が疑問を呈すると、唯阿がボソりと漏らした。

 

「…データの世界か」

 

 サウザー課室から参加中の天津も口を挟む。

 

「なるほど、見えてきましたよ。エスが婚約者の脳から楽園を作ったように、今回の黒幕はアークが存在する世界をデータ上に生み出した。そして別世界のアークからハッキングを行うことで、現実世界で衛星を介すことなくマギアを誕生させている、と」

 

 天津がろくろを回しながら決め顔で答える。

 すると、会議室に僅かな沈黙が生まれた。

 

「何かおかしいか?私の推理は1000%当たっていると思うが」

「えっ、あぁ、うん。俺らもそう思ったけど」

「一番黒幕っぽいお前が言うと、どうもな…」

「なんでだろ。サウザーが言った途端に違うような気がしてきた」

 

 と、各機関のライダーから散々に言われ、天津は「ふむ…」と言って目をそらした。

 彼への信頼の置けなさが改めて露呈してしまったそのとき、ホログラムには映っていない彼の愛犬型ロボットのさうざーの鳴き声が「くぅん…」と悲しく響いた。

 亡が話を戻す。

 

「しかし、別世界のアークを倒す方法などあるのでしょうか」

「うん、それが問題なんだよね。シンクネットの事件のときは、僕らはデータ世界に行って戦ったわけじゃなかったし」

「この中でデータ世界に飛んだのは、お前だけだな。飛電或人」

 

 滅に言われ、或人がゼロワンドライバーを掲げて答える。

 

「あぁ。ちょっとの間だったけど、朱音さんに会えた。ベルトを着けていたおかげで、ゼアが意識を運んでくれてたみたいだ」

 

 遠野朱音は、かつて人工知能の暴走によって命を落とした、シンクネットの管理者エスの婚約者だった女性である。

 エスは、彼女の脳から作り出したデータ世界に、シンクネット信者以外の人類の生体データを転送することで、悪意に満ちた人類がいない楽園で朱音を生かそうとしていた。

 しかし、戦いの中で朱音の世界を訪れていた或人によって、楽園創造ではなくエスとの再会を望む朱音の思いを知らされたことで、エスは朱音の世界に入りシンクネット壊滅に一役買うことになったのだった。

 繰り広げられる会議の中で、先ほどから難しい顔をしていた不破が発言する。

 

「別世界のアークを直接ぶっ潰しにいける手段はある、って考えていいんだよな」

「理論上はね。でも、簡単にはいかない」

「まずは二つの世界にアークを繋いでいる仲介者を見つけ出す。相応の時間はかかるが、今後の戦いには不可欠だ」

 

 滅の下した結論によって、対策会議はひとまずお開きとなった。

 

 

「では社長、私はゼアと交信し、今後のプランを再検討します」

「あぁ、よろしく頼むよ。イズ」

 

 会議終了後、不破たちを帰し、社長室には或人とイズの二人のみが残っていた。

 イズもまた、ゼアとの接続のためスリープモードに移行したため、或人は少し休憩しようかと社長室を出る。

 すぐそばのベンダールームに入り、小銭を出すべく財布を覗き込んでいると、或人の目の前に缶コーヒーが飛んできた。

 

「うおっ、びっくりした。あれ、刃さんまだいたの?」

「…一息入れようかと思ってな」

 

 そう言って、唯阿が手に持っていたコーヒーに口をつける。

 或人は「あっ、これ」と唯阿に代金を支払おうとしたが、唯阿にハンドサインで制止されたため「どうも」と告げて缶を開ける。

 或人もコーヒーを一口あおると、唯阿が小さく言った。

 

「なぁ、社長…傷ついてはいないか?」

「ん?えっと、俺が?」

「イズと話しているのを聞いたが、あのメイドのヒューマギア、バックアップが無くなっていたそうだな」

 

 グールギラスマギアに変身していたメイドヒューマギアは、或人たちの前で機能を停止した後、バックアップデータに基づいて復元される予定だった。

 しかし、会社に戻ってイズが調べたところ、該当するバックアップデータが抹消されていたのである。

 これもまた敵の隠蔽工作であることは明白だったが、ヒューマギアが復元不可能となったということは、すなわちそのヒューマギアの実質的な死を意味していた。

 そして、事件の黒幕を探し出すことに時間を要する以上、或人は今後も社員であるヒューマギアの死を覚悟しなくてはならないのだ。

 

「…まぁね。でも、起きたことはしょうがないし、みんな頑張ってくれてるから、俺も頑張って受け入れて」

 

 と、或人が言い切る前に。

 唯阿がそっと、片手を或人の肩に乗せた。

 突然のことに或人が振り返ると、唯阿は或人を憐憫の表情で見つめていた。

 

「…無理するな」

 

 心に訴えかけるような声色に、或人は思わず息を呑む。

 唯阿が肩から手を放して、独白するように言う。

 

「私はこの一年色々とあったが、今となっては後悔していない。結果がどうなっても、私はその時々の最善を尽くしてきたつもりだからだ」

 

 或人の頭にも、この一年での唯阿の様々な姿が思い浮かんだ。

 共闘することもあったA.I.M.Sで技術顧問を務めていた頃、ZAIAに戻って天津の尖兵となっていた頃、滅亡迅雷.netと一時的に協力した頃や、A.I.M.Sに隊長として返り咲いた現在の姿だ。

 

「…だが一つ後悔しているとすれば、イズが滅に破壊されたとき、何も声をかけてやれなかったことだ」

 

 或人の表情が強張る。どうしても忘れがたい、イズが目の前で爆裂するあの光景がフラッシュバックしたからだ。

 

「そんなの、いいのに」

「もちろん私が何か言って結果が変わったとは思えない。だが、拠り所を失う悲しみを知っておきながら、何もしてやれなかったのが悔しくてな」

 

 唯阿が、空き缶をゴミ箱に入れるとともに、或人に振り返って言う。

 

「社長、あんたが仲間想いなのはわかってる。だが、自分を押し殺すことが必ずしも仲間のためになるわけじゃない」

 

 自身の自己犠牲性は、或人も自覚している部分だった。

 その結果溜め込んだ悪意を利用され、アークに魂を売ることになったこともあった。

 

「せっかくゼアツーの連携システムまで作ったんだ。仲間はちゃんと使え。それもトップに立つ人間の仕事だろ?」

 

 凛とした表情で言う唯阿に、或人は思わず笑みをこぼす。

 或人の反応に疑問符を浮かべた唯阿に「いや、ごめんごめん」と続ける。

 

「やっぱり、ちゃんと隊長のお仕事をしている人は凄いなぁって」

「というより、私の周囲の男どもがワンマンで動きすぎるんだ。本当に世話が焼ける…」

「あぁ、それ全然言い訳できないな…」

 

 苦笑いする或人に、唯阿がクスリと笑った。

 

「でも、おかげですっきりしたよ。ありがとう」

「礼には及ばない」

 

 こうして唯阿はA.I.M.Sへと戻っていった。

 或人も、肩に僅かに残った体温を感じつつ、仕事場へ戻るのだった。

 

 

「不破様のもとに迅、雷が到着。不破様もバルカンに変身し、戦闘中です」

 

 時は現在。イズの報告を受けて、或人が答える。

 

「あの三人なら任せても大丈夫かな。俺たちは俺たちの仕事をしよう」

「はい。目的地まで、あと320mです。」

 

 飛電インテリジェンスでの会議以降、未知の生物を模した新種マギアやトリロバイトトルーパーは相次いで現れてきたが、その度仮面ライダーたちによって被害は最小限に抑えられている。

 今回の戦闘はバルカンたちに任せ、或人とイズは事件解決のカギを握るであろう人物のもとへ向かうことにした。

 ライズフォンやZAIAスペックといった機器の利用情報を滅亡迅雷.netに提供し、捜査させたところ、一件の不審な世帯が発見された。滅曰く、一般家庭で用いられるインターネット回線と、頻繁に接続と遮断が繰り返されているとのことだった。

 そして、新種マギアの出現時には必ず回線が遮断されているという点から、アークを中継する際にこの世界には存在しない別のネットワークと接続しているのだと推察できる。

 一連の事件の黒幕がいる可能性はかなり高いといえるのだ。しかし滅は「利用者の情報を見る限り、アークを使って世界を脅かすような人間には思えないが」と話していた。

 或人が滅から受け取ったデータをライズフォンで確認すると、そこには一人の大人しそうな女子高生の姿があった。

 また、滅はただの偶然だろうと言っていたが、或人は彼女の名前になんとなく因果的なものを感じていた。

 

「…よし、行くか」

「はい」

 

 目的地である一軒家に辿り着き、インターフォンを押す。

 

 或人が握るライズフォンに映し出される利用者データ。

そこには、新条朱音という名前が記載されていた。

 

 

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