「私は……ナリタブライアンだ」
そのウマ娘はそう答えた。
「ナリタブライアン、いい名前だ。改めてスカウトさせてくれないか?」
「私は無名だし2着だぞ、いいのか?」
「ブライアン、本調子ではないだろ、その証拠に体調が悪いのを隠して出走してないか?後、足もどこか痛めてないか?」
「な、なんで、それを!」
「見れば分かる、走り終えた後とは言え、異常なまでの汗の多さ、低すぎる前傾姿勢は元からかもしれないが、その割には走り方が不自然過ぎるだろ。とりあえず保健室に行くぞ、話の続きはそこでする」
「はは、そこまで見抜かれていたとはな。分かった、まずは保健室に行くか」
そう言って応急的に肩を貸しながらブライアンを保健室に連れていく。途中、桐生院トレーナーが心配してきた。
「宮代さん!どうかしましたか、その娘!肩を借りて歩いていますけど……」
「彼女は今、体調不良なんで保健室に連れていきます。桐生院さんはとりあえずあそこで心配そうにこちらを見ている芦毛のウマ娘に保健室に来るよう言ってください」
保健室に着くと彼女はベッドに転がり、途中で買ったスポドリを手渡すとゴクゴクとかなりの量を飲んでいた。
「ブライアンは大丈夫なのか?」
ブライアンの体調を気にするメガネをかけたウマ娘はブライアンの姉のビワハヤヒデだ。
「医者ではないから詳しくは分からないが、多分風邪と軽度の脱水症状だろう、足は恐らく足首を軽く捻っているから、とりあえず冷やすのが今できる最大限のことだ。ここから先は専門家に任せよう」
「すまない、私の妹が迷惑をかけたな」
「大丈夫だ、元から俺はブライアンをスカウトするつもりだからな」
「!変わっているな、1着でもないウマ娘をデビュー前からスカウトするなんて」
「その話だがどうだブライアン?君は三冠ウマ娘になれる素質がある。ここまで満身創痍の身体であの末脚だ。俺は君の走りを最大限に引き出すことができるつもりだ。だから俺の担当ウマ娘になってくれないか?」
「……そんなに言われたら、断れないな。これからよろしく頼む、トレーナー」
「ああ、こちらこそ!」
「ブライアンのこと、よろしく頼んだ」
その後、正式に書類を書いて専属トレーナー契約が成立した。ブライアンの病状はただの風邪で足首の捻挫も数日の安静で回復するとのことで俺はビワハヤヒデに看病を任せ俺は、トレーナー室に向かう。トレーナー室に着くと俺は、急いで契約書類を提出しトレーニングメニューを考案する。しかし、ただのトレーニングメニューでは三冠ウマ娘は狙えない。個人的には有馬記念も勝ちたいので人気者になる必要が高い。だが、彼女は一匹狼気質な所がある。これを矯正するのではなくいい方向に人気を持っていけたらいいのだが、それも考慮してトレーニングメニューを考える。トレーナー室で夜遅くまで頭を唸らせていると、30代前半の女性トレーナーに話しかける。
「君が最近、よく話題に上がる宮代くんかしら?」
「えっとあなたは……?」
「あ、名乗ってなかったわね。私は狭山侑香、この前のレースで1着だったミホノブルボンのトレーナーよ。まだなったばかりだけど」
「ミホノブルボンのトレーナーが俺に何か用がありますか?」
「貴方よね?あのレースでミホノブルボンをハナ差まで追い上げたウマ娘の担当トレーナーは?」
「そうですよ、ナリタブライアンと言ってあの末脚は三冠も狙える足ですよ」
「さすが裕美さんの子供ね。まさかノーマークのウマ娘にあんな末脚を持った子がいるなんてね。目の付け所が違うわね」
「そんなことないですよ、俺は母さんを何一つ超えていない。でも、彼女は……ブライアンは……それを超えられるかもしれないんです!すごいのは彼女なんです!俺は母さんの七光りでトレーナーになれたみたいなものなんで」
「そんなことないわよ。あなたしっかり裕美さんのDNAを受け継いだトレーナーになっているわ。うちのミホノブルボンは、スプリンタータイプなのに三冠を目指す、菊花賞で勝つって言ってるのよ。私は彼女の言うことを最優先にするから、止めるつもりはないけど、周りの声が中々酷いのよね。まあ、私はあの末脚を見せた彼女のトレーナーは誰か気になっただけだから。まさか裕美さんの息子とは思わなかったけど。お互い担当ウマ娘の三冠制覇を目指して頑張りましょう」
そう言って狭山さんは去っていった。この日、俺は改めて彼女を三冠、いや最強ウマ娘にしようと心の中で誓った。
ナリタブライアンって最近作者の中ですごい株上がっているんですよね。