ブライアンを契約を結んで数日、怪我の腫れも徐々に引いていきおそらく完治した。体調も戻りこの前見た以上の本来の末脚を見て俺は可能性をとても感じていた。
「ブライアン、少しいいか?」
「なんだ、トレーナー?どこかおかしい点でもあったか?」
「いや、状態は完璧に近い。ただ、狭山さん……ミホノブルボンのトレーナーと話したんだ。ウマ娘を育てる以上、ウマ娘の意思を尊重すべきと言われた。俺はブライアンに三冠ウマ娘になって欲しい。だが、それはあくまで俺の意思だ。理由も身勝手なものだ。だからブライアン、君にはそれを強要しない。ブライアンはどういうウマ娘になりたい?」
「私は……三冠ウマ娘になりたい。そして姉さんと有馬記念で戦いたい!」
「なら俺はそれを全力サポートする。早速だが、今週末の選抜レースに出走するぞ。距離は芝の2000m、戦術はブライアンの末脚を最大限活かすために差しで行くぞ。あのレース以来だが足の調子は大丈夫だな?」
「ああ、足の違和感は完全に無くなった」
「次にGⅡかGⅢの重賞レースを一度取ってから、皐月賞を狙うぞ」
「分かった、今日は明後日に向けて調整するメニューか?」
「いや、今日はライブの練習をしたいからカラオケに行くぞ」
「か、カラオケか?歌ならそんなに下手ではないが……」
「一応、どのレベルか確認しておきたい。まあ、俺が偉そうなことを言える立場じゃないけどな」
「わ、分かった、少し準備をしてくる。トレーナーは寮の前で待っていてくれ」
そう言ってブライアンは寮の方へ足早に入っていく。しばらくして学校の制服に着替えたブライアンが現れた。だが、少し様子がおかしくどこか恥ずかしそうにしている。
「なあブライアン、その、カラオケが恥ずかしいなら断っても良いんだぞ」
「いや、は、恥ずかしい訳では無いのだが……」
ブライアンはらしくなくそのままモジモジしたまま声が細くなっている。そのままどこか気まずいまま、カラオケボックスまで足を運ぶ。
「好きな曲を歌ってくれ、まずは声質を確認したい。俺も一応、ライブに関して最低限の知識はあるからな」
「わ、分かった……」
そう言ってブライアンはウマ娘のライブで一般的に歌われている曲を選曲して歌う。ひとしきり聞いていると予想通り、普通のウマ娘なら可愛い雰囲気に聞こえる曲もブライアンの歌声は普段の一匹狼的な態度に相応しく、格好よく聞こえる。休憩を挟みながら数曲、ダンスも見るがそこまで致命的な弱点はない。なんなら、格好良さがこんなところでも滲み出ている。
「特に問題点は見つからないな、最後にそうだな……うまぴょい伝説でも歌ってくれないか?」
「う、うまぴょい伝説か?か、構わないが……ほ、本当にいいんだな?」
「?あ、ああ。言い出したの俺だし」
そう言って気まずそうに機械に曲を入れる。そして曲を歌い始める、のだが声に違和感を覚える。特に枯れているとかではなく、今まで見たことないレベルで歌い方が可愛さに振っているのだ。というか、そんな声が出るのかと思い、終始フリーズしていた。
「と、トレーナー!どうした!?」
「いや、ブライアンもあんな声が出せるんだなって思ったから」
「へ、変だったか?」
「とても可愛かっ……いや、なんでもない」
「そ、そうか……」
「「…………………」」
気まずい時間が二人の間に流れる。しばらく黙っているとブライアンが口を開いた。
「か、帰らないか?」
「そ、そうだな、さっきの曲が最後って言っていたからな。この様子ならライブは問題無さそうだな。明日は、最終調整とレースに向けて確認事項を抑えることだけだ」
「分かった、ひとついいか?」
「なんだ?」
「最後の曲のことは黙っていてくれないか?特に他のウマ娘には絶対言わないでくれ、頼む!」
「それはそうだな。分かった、黙っておく。二人だけの秘密だ」
カラオケボックスを出て二人で歩きながら、ふとブライアンの横顔を見ると、明後日のレースを期待する年相応の顔をしていた。
「ん?どうしたトレーナー?」
「いや、なんでもない」
「そうか」
三冠ウマ娘までの道のりは長いが彼女ならきっと成し遂げると思いながら、トレセン学園への帰途に着いた。
中の人の声が交代してるけど、ナリタブライアンの歌声は意外と可愛いと思ったのが第一印象です。