浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第百三話

 

 戦いが始まって数分。

 脳波破壊も交えながら、ムラマサはサック怪人をゆっくり追い詰めていく。

 

「……ッ」

 

 サック怪人は変身前に負ったダメージもあり、満身創痍の状態。

 ムラマサは追って攻撃し続ける。

 

「頼むよ。死んでくれよ……何故死んでくれない!」

 

 泣きそうな声を上げながら、ムラマサは攻撃を続ける。

 

「早く死ねって言ってんだよ!」

 

 もう一太刀が命中。

 

「……!」

 

 美咲の足が動きかける。

 しかしサック怪人は尚も止めた。

 

「手出し無用だ……美咲!」

「……!」

 

 美咲を見ていたサック怪人の腕に、刀が突き刺さる。

 

「くうっ……」

「……」

 

 サック怪人の変身が解ける。

 ダイレクトに刺さった刀が、一号の体力を奪い、その場に崩れ落ちた。

 

※※※

 

 俺は自分で追いつめた一号を目にして、喜びを禁じえなかった。

 

「これで……俺の復讐が果たせる」

 

 こいつの脳波を破壊して、こいつの身体がぐちゃぐちゃになるまで、刀で突きさしてやりたい。

 自分が狂い始めている事に気付きつつも、俺の頭は、一号を殺す事で一杯になっていた。

 それ以外の事が眼に入らない程。

 

「終わりだ一号……」

「……ッ」

「消えろ!」

 

 俺は渾身の脳波破壊を、右手から放つ。

 動けない一号へ、真っ直ぐと。

 

「……」

 

 これでひとまず、一号の命は終わりだ。

 そう思っていた。

 だから……見えていなかった。

 一号の前に現れる、美咲の姿が。

 

「……ッ!」

 

 気付いた時には遅かった。

 俺の放った脳波破壊は、美咲の身体へとダイレクトに命中し。

 

 ――彼女の脳波を……破壊した。

 

「……」

 

 自分にも、はっきりと伝わった。

 何か大事なものを壊してしまった……そんな手ごたえが。

 最早人間の魂と言っていい脳波を破壊された美咲が、力なくその場に倒れ、二度と動かなくなった。

 

「美咲……美咲!」

 

 一号が刀を腕から何とか引き抜き、倒れた美咲へ声を掛ける。

 

「あ……あぁ……」

 

 俺が……殺した。

 大事な仲間を……自分の手で。

 

『あーあ、これでお前も人殺しだな』

 

 二号が他人事のように、俺の頭の中で呟く。

 

『まあ良いや。さっと一号を……っておい聞いてんのか』

 

 人殺し……その言葉が、俺の心を乱す。

 

「っ……あああああああああああッ!!」

 

 俺のせいで美咲が……美咲が死んだ。

 

「あああ……ああああッ!」

『おい』

 

 二号が呼ぶ声すら、俺の耳には入らない。

 

「……ッ! うわああああああああああああああああッ!」

 

 俺の叫び声が、他に誰もいない公園一帯に響く。

 一号がすぐに美咲を担いでその場をあとにしていたが、その姿が俺の瞳に映る事はなかった。

 

 




初「お、おい嘘だろ……」

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