浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第百四話

 

 倒れた美咲の身体を、彼女の自宅まで運んでから、一号は蘇我高校の科学部部室にいる遥の下へと駆け付けた。

 

「お前の顔を見てる暇などない。今の私は忙しいんだ」

 

 息を荒くして近付く一号に対して、遥は機嫌が悪そうにふるまうが、一号は構わず近付く。

 

「なんだ」

「美咲が……美咲が……」

 

 一号は伝えようとして、その場に崩れ落ちる。

 

「美咲が……死んだ。福沢裕太に、脳波を破壊された……!」

「なんだと……」

 

 遥が眼を見開く。

 そのまま急ぎ足で、部室をあとにする。

 

※※※

 

 遥以外の者にも、美咲の死が伝わるのにそう時間は掛からなかった。

 山内成音や岸本優香、ヴィーダにも伝わり、皆が美咲の死体の前で、それぞれの胸の内を見せていた。

 

「美咲っち……」

「ミサキ……」

 

 二人が泣いていた。

 成音は少し離れた場所で、泣くのを堪えながら悔しそうにしている。

 

「どうして……どうしてなのよ。あたし、まだアンタを超えられてない。アンタが死んじゃったら、あたしは誰を目標に生きれば良いのよ!」

 

 成音が叫ぶ。

 そのまま近くで見ていた一号に近付き、

 

「ねえ……教えてよ。誰がこんな事するように指示したのよ」

「残念だが……お前達には言えない」

 

 一号はそう告げる。

 だが成音は、

 

「どうしてよ……アンタは敵側の人間だったんでしょ? なら知らない筈はないわよね! こんな事を裕太にやらせた黒幕は誰!? 言いなさい!」

 

 胸倉を掴みながら言う。

 一号は冷静に返答した。

 

「俺が誰かを答えれば、お前達は俺を信じたのか?」

「……!」

「美咲だけは俺を信じてくれた。だから美咲とだけ、協力していたんだ。お前達を今以上の危険に巻き込まない為に」

「ならアンタだけで戦えば良かったじゃない。何で会長を巻き込んだのよ!」

「あいつがそういう選択をしない事は、お前達が一番よく知っている筈だ」

 

 一号の言葉に、成音は脱力する。

 

「美咲も、お前達を危険に巻き込みたくないと思っていたんだ。だから犯人の正体を美咲と遥にしか伝えていない。もしお前達が知れば、美咲と同じようにこれから狙われる事になるのだぞ」

 

 気付く事が出来なかった。

 思えば、何か隠し事をしているような感じではあった。

 今の今まで、美咲が一号と親しくしていた事を知らなかった上に、一号も救う為にと一人で背負って戦っていた事も知らなかった。

 もし気付いていたら、止められなくても協力くらいは出来たかも知れないのに。

 

「……会長」

 

 その拳が美咲の部屋の床に叩きつけられる。

 重い音が、部屋に響く。

 

 

 


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