浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー 作:門矢心夜
倒れた美咲の身体を、彼女の自宅まで運んでから、一号は蘇我高校の科学部部室にいる遥の下へと駆け付けた。
「お前の顔を見てる暇などない。今の私は忙しいんだ」
息を荒くして近付く一号に対して、遥は機嫌が悪そうにふるまうが、一号は構わず近付く。
「なんだ」
「美咲が……美咲が……」
一号は伝えようとして、その場に崩れ落ちる。
「美咲が……死んだ。福沢裕太に、脳波を破壊された……!」
「なんだと……」
遥が眼を見開く。
そのまま急ぎ足で、部室をあとにする。
※※※
遥以外の者にも、美咲の死が伝わるのにそう時間は掛からなかった。
山内成音や岸本優香、ヴィーダにも伝わり、皆が美咲の死体の前で、それぞれの胸の内を見せていた。
「美咲っち……」
「ミサキ……」
二人が泣いていた。
成音は少し離れた場所で、泣くのを堪えながら悔しそうにしている。
「どうして……どうしてなのよ。あたし、まだアンタを超えられてない。アンタが死んじゃったら、あたしは誰を目標に生きれば良いのよ!」
成音が叫ぶ。
そのまま近くで見ていた一号に近付き、
「ねえ……教えてよ。誰がこんな事するように指示したのよ」
「残念だが……お前達には言えない」
一号はそう告げる。
だが成音は、
「どうしてよ……アンタは敵側の人間だったんでしょ? なら知らない筈はないわよね! こんな事を裕太にやらせた黒幕は誰!? 言いなさい!」
胸倉を掴みながら言う。
一号は冷静に返答した。
「俺が誰かを答えれば、お前達は俺を信じたのか?」
「……!」
「美咲だけは俺を信じてくれた。だから美咲とだけ、協力していたんだ。お前達を今以上の危険に巻き込まない為に」
「ならアンタだけで戦えば良かったじゃない。何で会長を巻き込んだのよ!」
「あいつがそういう選択をしない事は、お前達が一番よく知っている筈だ」
一号の言葉に、成音は脱力する。
「美咲も、お前達を危険に巻き込みたくないと思っていたんだ。だから犯人の正体を美咲と遥にしか伝えていない。もしお前達が知れば、美咲と同じようにこれから狙われる事になるのだぞ」
気付く事が出来なかった。
思えば、何か隠し事をしているような感じではあった。
今の今まで、美咲が一号と親しくしていた事を知らなかった上に、一号も救う為にと一人で背負って戦っていた事も知らなかった。
もし気付いていたら、止められなくても協力くらいは出来たかも知れないのに。
「……会長」
その拳が美咲の部屋の床に叩きつけられる。
重い音が、部屋に響く。