浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第百五話

 気付いた時には、俺は戸間菫と名乗る女性の拠点にいた。

 恐らく、一号や俺の中にいる二号を作った者がいる拠点。

 その拠点は、美咲達の通う学校だ。

 

「……」

 

 あの後、俺は涙が枯れるまで泣き続けた……と思う。

 どこかで勝手に身体が動かなくなり、痺れを切らした二号が入れ替わって、ここまで移動したのだろう。

 気付けば、菫と名乗る女性の前にいた。

 

「久しぶりだね……いや、君の記憶では僕と今回初めて会った事になるのかな? 福沢裕太」

「……」

 

 こいつは一号に俺を殺させた者。

 本来なら一号と同じように、殺して然るべき人間なのだろうが、今の俺にそんな元気はなかった。

 自分自身を殺されたという事実に対する怒りで回りが見えなくなり、俺は自分の手で美咲を殺した。

 俺のせいで、俺は大事な仲間を……。

 

「その顔はもしかして……六角美咲でも倒したか?」

「……」

「よくやってくれた。一号を逃したらしいが、君にしては大したものだ」

 

 わざとらしく笑って、肩に手を乗せる。

 が、それを俺は払いのけた。

 

「俺に触るな……!」

「可愛げがないねえ。あの一号でさえ、僕にデレデレで甘いのに」

 

 椅子に座りながら、なんかのスイッチを取り出す。

 そしてボタンを押した瞬間……。

 

「ぐっ……」

 

 頭が痛みだす。

 

「一応言っておくけど、僕は君の脳波もある程度改造してあるんだ。だから僕が望めば、君の脳波はいつでも改良出来る」

「……っ」

「そう怒らないでくれよ。僕は君の為に、ご褒美を用意しているんだ」

「ご褒美……」

 

 俺は頭を押さえながら菫を睨む。

 

「これだ」

 

 菫が近くにある培養器のベールを取る。

 その中にあるのは……。

 

「俺……」

 

 俺だ。

 髪は白くなっているが、顔は俺そのものだ。

 

「君に似せた、三号の身体だ。一号や二号の寿命の弱点をある程度克服し、尚且つある程度の突然変異体の能力を使いこなせる。そして……このベルトもね」

 

 黒いボマードライバーを手にしながら言う。

 

『おいおいお袋、そいつは俺のもんだろ?』

「……」

『はいはい』

 

 菫の圧に押された二号が、やれやれと両手を広げる。

 

「一号を殺せば、君にこの身体をやろう」

「……」

 

 もう今の俺に、そんな選択をする余裕も無かった。

 あんな事をした俺が、仲間の所に戻る事など出来ない。

 なら、もういっそ死んだ方が良いのだろう。

 

「躊躇う理由があるのかい? 君は教師になりたかったんだろう?」

「……」

「選択をしないのは勝手だが、自分の為に何が一番最善かを考えた方が良い。君に時間は残されていないのだから」

 

 菫が耳元で囁く。

 


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