浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第百十七話

 

 ソウジの家は、家族経営の工場だ。

 従業員は彼の両親のみで、他の社員は皆辞めていった。

 ソウジはまだ十三歳の時から、殆ど学校を休んでまで工場を手伝っていたのだ。

 

「随分ボロい工場だな」

 

 ついて来た美咲の第一印象。

 

「そう見えるよな。でもいつかは、ここをでっかくしてやりたい」

「は? 無理だろ」

「無理か……何度も同じ事を親に言われたさ。だから俺が正しいと証明する為に、ここで親父やお袋を手伝ってる」

「……」

「取り敢えず、中に入ろうぜ」

 

 ソウジにそう言われて、美咲は二人で工場内へ。

 夜遅くまで、何かの作業をしていた二人が、ソウジの姿を見る。

 

「ただいま」

「おかえりソウジ。あら、その子は?」

「ああ……俺のお供。今日からここの世話になるから」

「だからまだ決めてねえっての」

「あらあら、そうなの?」

 

 ソウジの母親が笑いながら言う。

 しかし父親は。

 

「ソウジ……何度言えば分かるんだ。もうこの工場に誰が来ようと、すぐ辞めていく。ましてや女子中学生だ? そんなの連れてきた所で、どうなるんだよ」

「やってみなきゃ分からないだろ親父」

「またそれか……勝手にしろ。くれぐれも怪我だけはさせるなよ」

「分かってるよ」

 

 ソウジはそう言ってから振り向く。

 

「二人の許可も貰えた所で、今日からよろしくな」

「あ……ああ」

 

 半ば強制的に、美咲はソウジのお供となった。

 

※※※

 

 それからは毎日疲れる日々が始まった。

 学校が終わってはソウジの家に立ち寄り、終業時間まで仕事を手伝い、そのままソウジと共に何かしら運動をする日々が続く。

 その日はランニングだった。

 

「はあ……はあ……」

「もうへばったのか、早いな」

「うるせえ、仕事終わった後にこの距離走るとかあり得ねえんだよそもそも」

「無理じゃない事を証明しろって言ったのはそっちだろ? ならやるしかないよな?」

「あーもうわーったよ!」

 

 ぐちぐち言いながらも、美咲はソウジについていく。

 そこからも長い距離を走り、取り敢えず工場前までたどり着いた。

 

「はあ……」

「やれば出来るじゃないか」

「そうみてえだな」

 

 美咲はサムズアップする。

 汗はかきまくっているが、ちょっとずつ身体が軽くなっていくのを感じていた。

 

「よし、もう一走りいくぞ」

「はあ?」

「流石に冗談だ」

「お、お前なあ……」

 

※※※

 

 仮面ライダーが好きになったのも、その辺りだった。

 時々ソウジの部屋にあがっては、一緒に見ていた。

 

「ヒーローってのはやっぱすげえな……。無理かも知れなくても、最後まで諦めずに立ち向かえるんだから」

 

 美咲は思わずそう呟く。

 

「この世で一番強くなれるのは、無理かも知れないなんていう考えを捨てられた奴だけだ」

「……」

「別に迷っても良い。迷わずに強くなれる奴なんていないからな。けど、無理なんて考えに至る奴はいつまでたってもそのままだ」

「そうだな」

 

 美咲は笑いながらそう言う。

 

「んじゃ、特訓行くぞ」

「お、もうそんな時間か」

「結構絞れてきたからな。今日からまた厳しめで行くぞ!」

「お、お手柔らかにな」

 

 気付けば、これが美咲の日常になっていた。

 

 

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