浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー 作:門矢心夜
ソウジの家は、家族経営の工場だ。
従業員は彼の両親のみで、他の社員は皆辞めていった。
ソウジはまだ十三歳の時から、殆ど学校を休んでまで工場を手伝っていたのだ。
「随分ボロい工場だな」
ついて来た美咲の第一印象。
「そう見えるよな。でもいつかは、ここをでっかくしてやりたい」
「は? 無理だろ」
「無理か……何度も同じ事を親に言われたさ。だから俺が正しいと証明する為に、ここで親父やお袋を手伝ってる」
「……」
「取り敢えず、中に入ろうぜ」
ソウジにそう言われて、美咲は二人で工場内へ。
夜遅くまで、何かの作業をしていた二人が、ソウジの姿を見る。
「ただいま」
「おかえりソウジ。あら、その子は?」
「ああ……俺のお供。今日からここの世話になるから」
「だからまだ決めてねえっての」
「あらあら、そうなの?」
ソウジの母親が笑いながら言う。
しかし父親は。
「ソウジ……何度言えば分かるんだ。もうこの工場に誰が来ようと、すぐ辞めていく。ましてや女子中学生だ? そんなの連れてきた所で、どうなるんだよ」
「やってみなきゃ分からないだろ親父」
「またそれか……勝手にしろ。くれぐれも怪我だけはさせるなよ」
「分かってるよ」
ソウジはそう言ってから振り向く。
「二人の許可も貰えた所で、今日からよろしくな」
「あ……ああ」
半ば強制的に、美咲はソウジのお供となった。
※※※
それからは毎日疲れる日々が始まった。
学校が終わってはソウジの家に立ち寄り、終業時間まで仕事を手伝い、そのままソウジと共に何かしら運動をする日々が続く。
その日はランニングだった。
「はあ……はあ……」
「もうへばったのか、早いな」
「うるせえ、仕事終わった後にこの距離走るとかあり得ねえんだよそもそも」
「無理じゃない事を証明しろって言ったのはそっちだろ? ならやるしかないよな?」
「あーもうわーったよ!」
ぐちぐち言いながらも、美咲はソウジについていく。
そこからも長い距離を走り、取り敢えず工場前までたどり着いた。
「はあ……」
「やれば出来るじゃないか」
「そうみてえだな」
美咲はサムズアップする。
汗はかきまくっているが、ちょっとずつ身体が軽くなっていくのを感じていた。
「よし、もう一走りいくぞ」
「はあ?」
「流石に冗談だ」
「お、お前なあ……」
※※※
仮面ライダーが好きになったのも、その辺りだった。
時々ソウジの部屋にあがっては、一緒に見ていた。
「ヒーローってのはやっぱすげえな……。無理かも知れなくても、最後まで諦めずに立ち向かえるんだから」
美咲は思わずそう呟く。
「この世で一番強くなれるのは、無理かも知れないなんていう考えを捨てられた奴だけだ」
「……」
「別に迷っても良い。迷わずに強くなれる奴なんていないからな。けど、無理なんて考えに至る奴はいつまでたってもそのままだ」
「そうだな」
美咲は笑いながらそう言う。
「んじゃ、特訓行くぞ」
「お、もうそんな時間か」
「結構絞れてきたからな。今日からまた厳しめで行くぞ!」
「お、お手柔らかにな」
気付けば、これが美咲の日常になっていた。