浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第十一話

 

 二日後の月曜日。

 美咲は無人の生徒会室に足を運んでいた。

 

「……やはり、誰もいませんわね」

 

 いつもなら、たまに残った書類を片付けるメンバーもいるが、それすらいない。

 あの時のノリではなく、彼女達は本当に辞めたのだ。

 

「……」

 

 美咲はここまで、頂点に立つ為に色んな事を努力してきた。

 勝てない勝負もあったが、それだって勝つ為に全力を尽くした。

 でも他の人は、そんな美咲についてこれなくなった……。

 

「ソウジ……どうしたらいいですの?」

 

 美咲が昔、彼氏と一緒に撮った写真が入ったロケットを見て呟く。

 自分が弱くなってしまうと、ついやってしまう。

 でも決まって、すぐに我に返る。

 

「いけませんわ!」

 

 美咲は約束した。

 頂点に立って、美咲に見合う者と一生を送って欲しいというソウジの願いを叶える事を。

 そしてもう一度会った時、美咲にはソウジしかありえないとちゃんと伝えたい。

 だから今は泣かない。

 ソウジとの約束を果たす為にも。

 

「……ホントに迷惑っすよ」

 

 後ろから聞こえた声。

 副生徒会長のものだ。

 

「会長のせいで、こんなものをまた受け取らなきゃいけないんすからね」

 

 睨みつけながら、副生徒会長は果たし状を置いていく。

 

「もういい加減、やめたらどうすか?」

「……私はやりますわよ。いずれ頂点に立つ者として、売られた喧嘩は全て買いますの」

「勝手にするっす。じゃあ、今度こそさいなら」

 

 副会長が手を振って去っていく。

 美咲は果たし状の中身を見る。

 

「これは……」

 

 そこに書かれていた内容は……。

 

※※※

 

 玩具屋の店員として働き始めて二日目。

 

「いらっしゃいませ!」

 

 初日は少し大変だったが、何とか慣れてきていた。

 他の先輩達も優しいし、何より自分に暴力を振るう生徒達もいないし。

 

「働くって良いな……」

 

 あの学校で働いていたら、一生出てこなかった台詞だろう。

 

「俺は幸せだ!」

「ようフク! 何が幸せだって?」

「は……」

 

 その呼び方……まさか。

 

「科学部から泥棒した上、無断で辞めたらしいじゃんよ。んで? 何盗んだんだ? 言ってみろよ」

「え、えーっと……」

「黙ってたらどうなるかわかってんだろうな?」

 

 まずいまずいまずい……殴られる殴られる殴られる……。

 

「盗品ならここにありますわよ」

「?」

「美咲!」

 

 美咲がベルトをした状態で、蘇我高生に告げる。

 

「何盗んだのかと思えば、変身ベルトか。丁度いい、面白そうだから俺にくれよ」

「貴方に渡すわけにはいきませんわね」

 

 バットすら構えず、素手で立ち向かう。

 

「上等だ!」

 

 大きく振りかぶって、拳を突き出す蘇我高生。

 だが美咲は軽く受け止める。

 

「この程度ですの?」

 

 攻撃を受け止めた美咲が、相手の腹に拳を叩きつける。

 蘇我高生は嘘のように大きく吹っ飛ばされ、地面に激突して気絶した。

 

「まったく……ベルトすら使わない蘇我高生なんて大した事ありませんわね」

 

 それ言えるのは君くらいだと思うけどね。

 

「と、取り敢えずありがとう……どうしてここに?」

「貴方の仕事ぶりを見に来たのと、これを読んで欲しいですの」

 

 美咲は果たし状を手渡した。

 

 


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