浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第百十九話

 

 あの後。

 雨の降る空き地で、傘もささずに美咲は空を見上げていた。

 

「……」

 

 さっきのソウジの態度を思い出して、美咲は胸の内に悔しさを募らせていた。

 あれだけ彼が要求するレベルに近付こうとして必死に努力したというのに、彼はまだ……自分ではあの巨体の男一人倒す事すら出来ないと判断して助太刀した。

 この時の美咲は、自分の薄っぺらなプライドを傷つけられた事をうじうじと気にする事しか出来ない。

 

「はあ……」

 

 結局、自分は努力しても……誰かに舐められる運命は変わらない。

 そう決めつけて、美咲は立ち上がって歩こうとした。

 その時。

 

「……ほら」

 

 ソウジが現れて、美咲に傘を差しだす。

 美咲はプイっと顔を背けて言う。

 

「何の用だよ」

「何の用って……お前馬鹿なのに風邪引く気か」

「馬鹿って……やっぱり私の事なめてんだろ!」

「反論する余地もない程馬鹿だろお前は」

 

 ソウジの冷静な返しに、美咲も頬を膨らませながらも何も言葉が出なかった。

 

「俺にも俺の責任ってもんがあんだよ」

「……」

「お前は俺のお供だ。選んだ俺には、選んだ奴なりの義務がある。俺はお前を守る。絶対に」

「は……なにそれ」

 

 美咲自身、嬉しいとも思っていた。

 けど、この時は素直にそう答えられず。

 

「またそうやって、弱い奴扱いするのかよ」

「……強くなりたいんなら、まず自分のいる位置を理解する事も大事だ」

「……」

「自分の強さ、弱さ。それを理解した上で、人はようやく強くなる事が出来る。それすらせずに戦って、もし死にでもしたらどうする? お前はお前の欲しいものを、お前自身のせいで逃す事になるんだぞ」

 

 全部……間違ってない。

 この言葉は、今の美咲にも受け継がれて、今の美咲自身の生き方に繋がっている。

 けど、美咲自身にも……自分なりの考えがあった。

 ソウジと共に過ごし、自分で見つけた今やりたい事。

 

「なら、私はどんな無茶でも生きて帰ってやる」

「……は?」

「お前前に言ったよな? 無理なんて言葉は死ぬ前に言えって」

「……」

「だったら私は死ぬ前に立たされようが、そこを振り切って生き残ってやる。例え絶対死が避けられないとしても、それを乗り越えて先に進む。お前の言った言葉を超えてやる。お前に助けて貰わなくても、解決出来るくらいに強くなる」

「美咲……」

「だから次同じ事があっても、二度と助けるな。私のプライドが傷付く」

「……ふふ……ははは」

 

 ソウジが笑う。

 

「何がおかしいんだよ!」

「いやあ、こんな大口叩く奴と、前まで無理無理言ってた奴と同一人物とは思えなくてさ」

「お前のせいだろ!」

「でも、そういうからには……これからは俺の特訓にへばらずついてこれるんだよな?」

「お、おう。勿論だ」

 

 ソウジが告げる。

 

「決まりだ。また今日からいつもより厳しく行くぞ」

「おいおい今日雨だろ!」

「大丈夫だ。俺もお前も馬鹿だ。風邪なんて引かない!」

「さっきと言ってる事ちげえぞ!」

「知らんな! 工場まで競争だ!」

「待てよ!」

 


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