浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第百二十二話

 美咲はあの日、確かにそう祈った。

 けど結局、美咲の心からの祈りが叶う事はなく。

 美咲の高校進学が決まり、卒業式を迎えてから、ソウジは美咲に呼ばれて学校の桜の木の下……ではなく、一年半以上も世話になった工場に呼び出された。

 

「……」

 

 美咲は進学する予定の女子高の制服姿。

 ソウジは、結局一度も着る事が無かった中学の制服姿。

 彼は卒業式すら出席する事なく、初めて美咲に会った時の姿で、自分と向き合っていた。

 まず彼は、少しばかり悲しげな眼をして自分の名を呼ぶ。

 

「美咲」

 

 それも、あの時告白を断った時よりも辛そうに。

 

「今日で、お前は俺の彼女も……お供も卒業だ」

 

 自分に別れを切り出した。

 

「……!」

 

 美咲にも、言われた理由は何となく理解出来た。

 彼は自分を嫌ってなどいない事は、彼の眼を見れば明らかだ。

 理由は違う所にあった。

 

「……」

 

 ソウジと美咲の近くを、何人もの人が出入りするのが見える。

 工場の中にある工具や機械……ソウジやソウジの家族と同じくらい、美咲が触れ合った代物を運び出していた。

 ソウジの父親の判断で、工場は売られる事になった。

 夢に描いていた、工場を再興する夢は散り、ソウジは職を探さなければならなくなったのだ。

 

「嫌だ。お前が行く場所なら私も行く! 私を置いてって行くなんて許さねえぞ!」

 

 ソウジは頭を横に振る。

 

「これ以上、お前から未来を奪えない。それに、今の俺がお前を手にする資格なんてない。お前には、俺より良い人に巡り合って欲しいんだ」

 

 そう言って、ソウジが美咲に一つのものを手渡す。

 ソウジが好きな、仮面ライダーカブトのストラップ。

 ソウジが、いつも肌身離さず持っていたものだ。

 

「俺は多分、もうお前に会う事は出来ない筈だ。だけど、たまにはこれを握って俺の事を思い出して欲しい」

 

 笑顔でそう頼むソウジ。

 けど、美咲は受け取りつつも一度俯いて呟く。

 

「……言うんじゃねえよ」

「美咲?」

「もう会えねえなんて言うんじゃねえよ! 私にお前より上の男なんていねえよ! もし今手に出来ねえってんなら、私が頂点に立ってお前もそこに連れてってやるよ! それなら文句ねえだろ! お前、それまで別の女に私と同じ事するんじゃねえぞ! 浮気なんかしてたら、私が許さねえからな!?」

 

 涙と鼻水が、自分の中から止まらなかった。

 

「頂点に立つんなら、そんなくしゃくしゃな顔じゃ出来ないぞ。もっと笑顔で、胸を張って言えよ」

 

 そう優しく告げるソウジの顔も、泣きそうなのを堪えているものだった。

 

 しばらくして……美咲は手を振るソウジに見送られて、思い出深い工場をあとにした。

 最後に、ソウジの声が聞こえた気がした。

 

『行ってくれ……美咲。頂点へ。お前は俺の……最高のお供なんだから』

 

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