浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第百二十三話

「お願い……お願い……! 帰ってきてよ……!」

『ERROR』

 

 成音が何度も読み取らせるが、何度も失敗する。

 無慈悲に失敗した時の音声が鳴るが、成音はそれでも続けた。

 何回も続けた後、近くで見ていた優香があるものの存在に気付く。

 

「ちょっ。これ……何系?」

 

 美咲の制服のポケットから、仮面ライダーのストラップが出てくる。

 赤い外観に、青い瞳のカブト虫の仮面ライダー。

 紐も本体も、そこそこ汚れているが、欠けている個所は一つもない。

 昔のものではあるが、相当大事にされていたのが分かる外観だ。

 

「ストラップ?」

 

 美咲が大切にしていたと思われるストラップ。

 成音はそれを、美咲の手に握らせてから端末にカードを読み取らせる。

 

『SCAN DRIVE』

「お願い……!」

 

 成音は目を閉じて、強く祈る。

 

※※※

 

 通常形態ではやはり歯が立たず、グングニルは満身創痍だった。

 相手はまだ余裕の状態で、グングニルは何とか最後の力を振り絞って必殺技を発動する。

 

「コレデキメル!」

『GUNGNIR FINAL DRIVE!』

 

 空に大量の魔法陣を出現させる。

 剣の怪人・改も、端末を操作してボタンを押す。

 

『FINAL DRIVE!』

 

 剣の怪人・改は禍々しい光を纏いながら消える。

 通常の剣の怪人なら相手の前に出現し、目にも止まらぬ連続攻撃だが。

 

「……!」

 

 何十にも分身した剣の怪人・改が、一斉にグングニルへ斬りかかる。

 魔法陣から槍が放たれる前にキャンセルされ、グングニルが剣の怪人・改に吹き飛ばされた。

 

「グアッ!」

 

 鉄柵に叩きつけられ、変身が解けてしまうヴィーダ。

 そんな彼女相手に剣の怪人・改が振り向き、告げる。

 

「腕を上げてると思いきや、とんだ期待外れだな」

「……」

 

 ヴィーダは立ち上がれない。

 もう、手足を動かす程の体力すら残っていない。

 

「どうやらもう動けねえみてえだし、少し待ってやるよ」

「ナニヲ……スルキ?」

 

 剣の怪人・改が怪人の顔の下で笑う。

 

「そこで大人しく待っていろ。お前の友達や母親が、殺される所でも想像してな。キレれば嫌でも、無理に動くんじゃねえか?」

「……!」

 

 ヴィーダは瞳を見開いて、身体を何とか動かそうとする。

 だが……無理だ。

 ヴィーダにそう告げた剣の怪人・改が、その場から飛び降りた。

 

「マテ!」

 

 ヴィーダの言葉は届かない。

 出来るのは、動かない身体に無理矢理力を込めようとする事のみ……。

 

「ヴィーダ、トモダチヤママ……マモリタイ……!」

 

 まだ間に合う。

 そう信じて、ヴィーダは少しずつ動こうとする。

 

 

 


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