浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第百二十五話

「俺はお前にそんな泣き言を言わせる為に、そう言ったわけじゃない」

「けど……」

「それどころか、お前は死すら振り切って進むって言った。今が、その時じゃないのか?」

「……」

 

 ソウジの口調は、やはり厳しくも優しかった。

 だけど……今はそれが、美咲にとっては少し重圧に感じてしまう。

 

「でも……じゃあどうすりゃいいんだよ! 例えここで生き返れたとして、私に何が出来るって言うんだよ! 一号さんと遥さんを和解させる事も、裕太さんの心を救ってやる事も出来ねえ! 私が何を言っても、皆その言葉に重さを感じちまう。それじゃあ意味がねえだろ!」

「本当に、皆がそうだったのか?」

「え……?」

「見てみろよ」

 

 ソウジが、外の様子を見せる。

 いや……実際には、今の覚醒しかかっている美咲が感じ取っているものなのだろう。

 成音と優香が自分を目覚めさせようと奮闘し、一号も目を閉じて祈る。

 遥も、それと一緒に。

 裕太だけは……まだ罪悪感に満ちた表情で何も出来ずにいた。

 

「皆……私を待っているのか? けど、裕太さん……」

「お前に救えなかったものは確かにあるかも知れない。でも、自分が救ったものの事を考え、それを誇りに思う権利はお前にはある。そして、自分が選んだお供は……どんな事があっても守り通さなきゃいけない。あんな辛そうな顔したお供放置して死ぬのは、俺ならしないし出来ない」

「……」

「一つ教えてやる。お前は俺みたいにはなれない。それは事実だ。だが俺以上になる事は出来る。俺は自分の夢が死んで、お前の手を離さざるを得なかった。それでもお前は、最後の最後……いや今も俺の手を掴もうと戦ってくれている。お前のお供がお前から手を離そうってんなら、お前はその根性で、お供の手を掴んでみろよ」

「ソウジ……」

 

 ソウジが笑みを浮かべる。

 美咲はそこで、ようやく気付く。

 

「私、ソウジと同じ事が出来なきゃ……誰も救えないってそう思い込んでた。私、馬鹿だ。馬鹿ですわ……」

「けど、それがお前の良いところだ。俺も、お前の馬鹿さに救われた一人だ」

「……」

「美咲、お前はその馬鹿のままで良い。馬鹿のまま永遠に進化しろ。そして、また会えた時に俺を驚かせてくれ」

 

 涙を拭って、美咲は返す。

 

「馬鹿馬鹿うるさいですわね……」

「馬鹿は馬鹿だろ。これは褒めてんだよ」

「そう聞こえませんわよ」

「はは……」

「あははは……」

 

 久しぶりに、二人で笑う。

 そして決意は、固まった。

 

「ソウジ、私やりますわ。必ず裕太さんの手を掴み取る。だって、彼は私のお供ですから」

「それでこそ、俺のお供だ。行け、美咲。その手で、未来を掴み続けるんだ」

 

 美咲は、一筋の光に手を伸ばし……そして拳を握る。

 白い光に包まれ、ソウジも、自分の身体も、何もかもが見えなくなった。

 最後に、消えていくソウジに美咲は言う。

 

「いつか、貴方の手も掴んでみせますわ。必ず……!」


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