浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第百二十六話

 カードを読み取らせようとしたその時。

 

「……!」

 

 ガラスが割れる音が、科学部の部室内に響く。

 

「二号……」

「あ、あれ何系……?」

「ヴィーダ、負けたのか……」

「安心しろ、あいつはまだ生かしてある。まずはお前達を殺して、あいつを怒らせてからだ」

「二号!」

 

 一号がサック怪人に変身しつつ飛び出す。

 

「はあッ!」

 

 拳を振るったサック怪人を、剣の怪人・改が一撃で変身解除に追い込む。

 

「兄貴如きが俺を止められるわけねえだろ」

「……くっ。あああああッ!」

 

 もう一度変身し直して、突撃する。

 

「はあッ!」

 

 振るう拳は一つも当たらない。

 

「山内成音、早くしろ!」

「……。させるか!」

 

 成音に向かって、剣の光を放たれる。

 その時。

 

「うわあッ!」

 

 美咲を中心に、大爆発が巻き起こる。

 成音達は何とか剣の怪人・改の攻撃を浴びる事なく吹き飛び……一命をとりとめる。

 

「会長……会長!」

 

 爆風が収まる。

 寝台の上から、美咲の肉体が消えていた。

 

「今度こそ……完全に終わったな」

 

 剣の怪人・改が腕を組んで笑う。

 

「あら、私の能力をお忘れですの?」

 

 仮面ライダーボマー。

 紫の爆弾型の頭に、学生服を纏った不良のライダーが、剣の怪人・改の背後に姿を現した。

 

「会長!」

「美咲っち……」

 

 成音と優香が驚きの顔。

 

「美咲……」

 

 裕太は呟きながら、その姿を目にする。

 一号も表情こそ変えなかったが、どこか安心した顔になった。

 

「上手くいったのか」

 

 遥も信じられないと言いたげな顔だ。

 

「……ミサキ……」

 

 まだ屋上で地を這うヴィーダも、復活した美咲の脳波を読み取って笑う。

 

「ただいまですわ、皆さん」

 

※※※

 

「不完全とは言え、一度破壊した脳波が蘇るなんてな。面白い事もあるもんだ」

 

 剣の怪人・改が振り向いてそう告げる。

 

「私一人の力じゃありませんの。私に蘇って欲しいと思う人がこれだけいたから、私はここに帰ってこられた。それに……」

 

 美咲は目を閉じる。

 そして息を吸ってから、目を開けて呟く。

 

「私はまだ死ねませんわ。裕太さんや一号さんを泣かせたまま死ぬなんて、そんな事出来ませんのよ」

「とんだ茶番だな。そいつらの命は、もう永くないんだぞ」

「私は諦めない。死んでも絶対諦めませんわ!」

 

 ソウジが死ぬまで無理と決めないのなら、美咲は死んでも無理だとは決めない。

 死んで死んで、それでも……そこから絶対に蘇る。

 それが、自分の強さだ。

 

「面白れえな……やっぱお前は面白れえ。けど、蘇ってすぐで悪いが……今回は脳波だけじゃなく命ごと奪わせてもらうぜ」

「……そんな事させませんわ。今の私の命は皆からいただいたもの、今回ばかりは無駄にするわけにはいきませんもの」

 

 ボマーはあのカードを取り出し、スキャンドライブのボタンを押す。

 

『SCAN DRIVE』

「これが、私と……私についてきた者の力ですの!」

 

 カードを読み取る。

 

『COMPLETE ALL WEAPON DRIVE READY?』

 

 爆弾、火炎放射器、魔法の槍、騎兵、メリケンサック、そして……妖刀。

 カードに込められた全ての力が、ボマーを取り囲む。

 

「ハイパー超変身ですわ!」

 

 その声に呼応し、ボマーは青い炎に包まれる。

 武器の光がボマーに集約され、新たな姿へと変化した。

 

「……」

 

 爆弾の上の炎は赤くなり、全体的に青と白を中心とした色へと変化。

 ライダースーツの上に纏う服も、学ランから……まるで社長や政治家が着ていそうなスーツへ。

 頂点に立ちたい、そう願う美咲の理想を体現したような姿だ。

 六本のボムビットは水色に、そしてバットが金色へ。

 変わらない黄色の複眼で真っ直ぐ剣の怪人・改を見据えて言う。

 

「仮面ライダーオールウェポンボマー……それが今の私の名前ですわ」

 

 

 

 

 

 

 


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