浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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この話は、是非この曲と共にご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=HPjcvYaFntI


第百二十九話

 あの戦いが終わった後、他の皆が美咲の活躍と復活を嬉しそうにしていた所で、俺は隙を見て蘇我高校を去った。

 美咲は、俺を泣かせたまま死ぬなんてしたくないと言っていた。

 けど……俺は美咲に優しくしてもらう資格なんてない。

 美咲から離れなければ。

 その思考だけを離さず、俺はどこかへと歩き出そうとする。

 

「どこに行くつもりですの?」

「……」

「待ちなさいな」

 

 何も言わず、一瞥してから去ろうとした俺の腕を引っ張る。

 

「まさか、私に何も言わずどこかに消えるつもりでしたの?」

「……」

「裕太さん……、なんで私の顔を見てくれないんですの?」

 

 近付く美咲から距離を取り、顔を横に向ける。

 

「やめてくれ……美咲」

「裕太さん……」

 

 それでも諦めず歩み寄る美咲を、俺は押し返す。

 

「もうやめてくれよ! 俺はお前を殺した……。俺はお前に救われる資格も無ければ、一緒にいる資格もない。俺は感情に任せて行動したせいで、お前を殺した……。けじめだよ。だから、もう行かせてくれ……ほっといてくれよ」

 

 涙をこらえて、俺はそのまま歩こうとした。

 しかし。

 

 ――パチン!

 

 美咲はそんな俺の頬に、平手打ちをする。

 

「……」

「けじめ? これがですの?」

「美咲……?」

「私がどれだけ貴方を心配したと思ってるんですの!?」

 

 美咲が涙を堪えるような表情をしながら、そう叫ぶ。

 

「……ッ!」

「私には明人さんや蒲生さんが帰ってくる事も大事でしたわ。けど、何より貴方にここにいて欲しかったんですわ! それなのに、いなくなる事がけじめだなんて勝手に勘違いしないで欲しいですわ!」

「……」

 

 俯いた俺に、美咲が抱き着く。

 心なしか……母親の温もりにも似たようなものを感じた。

 

「美咲……?」

 

 母親の温もりを感じながらも、彼女は温もりの感じとは反対に、子供のように泣きそうになっていた。

 いつもは年上である自分にも強気な態度をとっていた彼女が……今は普通の女の子のように泣きそうになっている。

 

「私……怯えてましたの。このまま貴方が、どこかに行ってしまうんじゃないかって。まだやりたい事が、沢山あるのに……」

「……怯える事なんてないだろ。俺は別に、何も出来てない。生徒会の仕事を手伝うくらいしか、俺はしてない。お前は一人で歩ける。だから……」

「……貴方は馬鹿ですわ。もうそれ以上のものを……私は貰ってますのよ。だから、貴方を離すなんて私には出来ませんわ……」

 

 抱きしめる力が強くなる。

 

「私は……貴方といた時間を楽しいと感じていましたのよ」

「そう……なのか?」

「ええ……」

「……そう……か」

 

 嗚咽で、上手く言葉が出ない。

 俺は泣いていた。

 泣くのを我慢している女の子に抱きしめられながら。

 

「私はまだ、貴方と一緒にいたい。貴方の夢を叶えたい。貴方を、死なせたくない……誰にも、それが無理だなんて……死んでも言わせませんわ」

「……」

 

 俺は何とか、今も上手く動かない口で告げる。

 

「ありがとう……」

 

 俺は感じた。

 この後……俺がどうなるかは分からない。

 美咲の尽力のおかげで生き残れるかも知れないし、力及ばず死ぬかも知れない。

 けど……どんな結果になろうと、美咲が俺をお供に選んだ事だけは後悔しないと。

 何せ彼女は、紛れもなく……いい意味でも悪い意味でも、俺の人生を破壊した爆弾だから。

 

「一緒に帰ろう、美咲」

「当たり前ですわ……だって」

「おう」

 

「私一人じゃ、生徒会の仕事が一つも片付きませんのよ」

 

「……は?」

「さあ、また手伝ってもらいますわよ! 裕太さんがいれば、すぐに終わる気がしますわ!」

「……やっばさっきのありがとう取り消しても良いか?」

「さあ今から家に行きますわよ! ご飯もごちそうしますわ」

 

 聞いてないし……。

 さっきまでの感動を返せ……そう言いたいのは山々だが、俺はそれを口に出せなかった。

 あの涙を堪える表情が、自分に対する感情を物語っていた気がしたから。

 

「待てよ、やるなんてまだ言ってないぞ!」

 

 いつもの調子でそう返答しながら、俺は彼女の背中を追いかけた。

 

 

 

 




次回予告

初「……」
美咲「あ! 初さんがな
初「きかけたけど最後で台無しになったわ」

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