浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

137 / 311
第百三十六話

「……」

「なんというか、上手く話せないけど……元は敵だった自分を気遣ってくれた事が嬉しいんじゃないのか? だからそういう美咲が好きで一緒にいる。それでいいじゃないか」

「俺は……罪人だ。それに菫のしている事が悪だと思いながら、彼女の指示だからという理由だけで、お前や遥の幼馴染を……。だから、俺が美咲にそんな甘えた感情を抱くなどあってはならない」

「あってはならないんだろうけどさ、もう抱いちゃってんだからしょうがないだろ」

「……」

 

 一号は俯く。

 

「それに、お前が美咲の為に戦ってくれるんなら……こっちとしても恨んだり出来ない。今の俺もお前と、立場は似たようなもんだしな」

「……ああ」

 

 納得したように頷く一号。

 

「それに何よりよ、なんかそうやって変に距離取られると気持ち悪くて仕方ないんだよ。普段から仲良くしろとは言わないけど、仕事の時くらい協力する場面は協力しようぜ」

「……ああ」

 

 もう一度頷く一号。

 それから呟く。

 

「俺は自分の罪と向き合い、自分が奪ってきた命に対して償うと決めた。その為に協力してくれる美咲、そして一応は仲間と決めてくれた遥、そして今こうして歩み寄ろうとしているお前。俺はその人達の為に命を使う」

「一号……」

「だから戦いの時は、俺にも背中を預けてくれ。お前の為に、この命を使ってやる」

 

 一号の眼差しに、裕太は笑みを浮かべて返す。

 

「馬鹿野郎。お前にも好きな奴はいるんだろ。だったらとっとけよ。美咲の為にもよ」

 

 美咲はそれを見届けて、ゆっくり背を向けて去り始めた。

 

※※※

 

 ところが。

 

「うわっ、なんだかすごいかっこうのおねえちゃんいるよ」

「しっ、見ちゃダメよ」

「完全に見ちゃダメなもの扱いされてますわ……」

 

 それもその筈……。

 いつもの割と清楚な恰好から一転、露出の高い派手な変装をしている。

 胸の谷間なんかも見えて、男子からしたら注目の的。

 まあ裕太にバレさえしなければよかったのだが、流石にやり過ぎたか。

 

「何してんだ美咲」

「ひっ……」

 

 恐れていた事態が起きた。

 さて、どう誤魔化すか。

 

「ミサキ? ワッツ? フーイズディスネーム?」

「いやもう声でバレてるから」

 

 グラサンを取る裕太。

 

「なんだよ見に来てたのかよ」

「そ、そうですわよ。貴方達二人とも危なそうでしたし」

「そ、それは分かるんだけど普通にくれば良いだろ。なんだその恰好」

「普段の私のイメージと違うものと考えたらこれしかなかったんですのよ!」

「あれ、もしかして……裕太くんの彼女?」

「「違います!」」

 

 子供と一緒に来た母親に誤解されてしまった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。