浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第百四十九話

「……」

 

 通話が終わってから、優香は珍しく……少し落ち込んだ顔になる。

 さっき美咲に言われた言葉が、少しだけ気になっているのだ。

 戦えないのに、何故ついてこられるのか。

 答えはさっきも言った通り、美咲を支える為。

 けど……実際彼女にそれは必要なかった。

 彼女には、守りたいと思う者がいて、それが必然的に彼女の心の支えとなっている。

 何度折れても、自分の力なしに立ち上がっていた。

 

「……っ」

 

 少しばかり声を出しながら、横に転がり……机の上に置かれているものを見る。

 ホースドライバー。

 美咲の復活の為に、前田から借りたものだ。

 返却するかどうかも彼女に聞いたが、どちらでもいいと言われ、少し迷っている。

 

「あれを使えば、ウチも戦える系?」

 

 それが一番、直接的に彼女を支えられる手段だ。

 もうこれ以上の戦力が必要かは分からないが、少ないよりかは多い方が戦いを有利に進められる筈。

 お世辞にも頭が良くない優香に出来る事と言ったら、それくらい……。

 

「ウチには、無理系」

 

 少しだけ手を伸ばそうとしてから、それに気付いて項垂れる。

 美咲達の戦いの過酷さは、見ている自分も分かっているつもりだ。

 最悪美咲のように、命を落とす事だってある。

 もしかしたら、間違って自分が命を奪ってしまう事も。

 友達の為とはいえ、そこまでの覚悟を背負って戦う事など……自分に出来ないだろう。

 

「……どうしたら良い系?」

 

 優香は迷い続け……朝まで眠りにつけなかった。

 

※※※

 

 次の日の朝。

 

「うー……」

 

 美咲と成音、そして優香の三人で登校していたが……優香は眠そうにしていた。

 

「どうしましたの?」

「ん? 実はあの後眠れなくて……」

 

 優香は眠い目をこすって歩く。

 

「貴女も悩み事ですの?」

「んーまあそんなとこ」

「優香でも悩む事あるんだ」

「成音っち中々酷い事言う系……」

「今日は全校集会ですのよ。色々な事があって今更知りましたけど」

「大丈夫大丈夫、寝れば良い系……」

「そういう問題じゃありませんのよ?」

 

 三人で話しながら歩いていたその時。

 一人の女子生徒が立ち塞がる。

 

「ん?」

「貴女は……」

「平井(ひらい)?」

 

 

 美咲と成音が呟く。

 生徒会のメンバーの一人で、成音の同級生。

 しかし……様子がおかしい。

 瞳に光がなく、操られているかのように生気を失っている。

 そして右半身の筋肉が不自然な動きをしていた。

 あの時の蒲生のように。

 

「六角美咲に山内成音、貴女二人を排除します」

 

 そう言って、アークソードドライバーを取り出す平井。

 

『アークソードドライバー!』

 

 腰に取り付けてから端末を取り出し、操作して端末を閉じた。

 

『ARC SWORD DRIVE READY?』

「変身……」

『ARC COMPLETE』

 

 禍々しい光が平井を包み、上空から同じく禍々しい輝きの剣が現れる。

 それを掴むと同時、平井の身体が剣の怪人・改へと変化した。

 

「私がやりますわ」

 

 二人に下がるように指示し、美咲はボマードライバーを取り出す。

 端末を操作し、閉じて構える。

 

『BOMER DRIVE READY?』

「変身!」

 

 そう叫んでから、端末をベルトに取り付けた。

 上から紫色の爆弾が降り、それを握り潰して爆風を生み出す。

 その爆風の中から、一人の戦士が現れる。

 仮面ライダーボマー。

 

「キバって行きますわ!」

 

 

 

 


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