浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第百六十話

 

 明人が再び眠ってから、美咲は裕太を見て言う。

 

「それにしても……目の隈が凄いですわね裕太さん」

「ま、まあ寝ずに監視してたからな……」

 

 歩こうとしていていたがよろけている。

 

「やべ……頭がいてえ……」

「大丈夫ですの? 少し横になりなさいな」

「お、おうすまん」

 

 裕太は目を閉じてすぐに、眠りにつく。

 まるでの〇太並みの速さだ。

 

「どうやら、かなり疲れがたまっていたらしいな」

「一号さんは大丈夫ですの?」

「俺は問題ない。二日くらい寝なかった事があるくらいだからな」

 

 一号は平気なそぶりで、冷蔵庫を開く。

 

「こ、これは……」

 

 そして中身を見た一号が固まる。

 絶望とも言える表情を浮かべた状態で。

 

「どうしましたの?」

「見ろ……」

 

 一号に呼ばれた美咲が近くで、冷蔵庫の中身を見た。

 

「……」

 

 酷い有様だ。

 冷蔵庫内の食材の殆どが腐っている。

 それもその筈……裕太は長らく敵の手の内にあった。

 しばらく家に帰っていなかった故、溜まっていたものが……。

 

「参ったな……これでは飯の支度が出来んな」

「確かにこれでは難しいですわね」

「ああ。参ったな」

 

 一号の腹からは大きな音が。

 

「昨日の夜も何も食べてないし、このままでは飢え死にだ」

「音鳴らしながらそんな真面目な顔しないで欲しいですの」

 

※※※

 

 一号が冷蔵庫を閉じて、何も持たずに外へ出ようとする。

 

「どこへ行きますの?」

「この近くに雑草が生えていないか調べに行く」

「……へ?」

「いや、食材探しに……」

「何故雑草ですの?」

「外で寝起きしていた時の必需品だ。醤油をつけて食えば割と美味い」

「流石に他の人が食べるものがそれではまずいですわね……」

 

 美咲は財布の中身を確認してから、スマホで仲間に連絡する。

 そして裕太のエコバッグを借りて、靴を履く。

 

「私が買い物に行きますから、一号さんは家で待ってなさいな」

「お前、夕飯の買い物なんて出来るのか?」

「貴方は何を言ってますの?」

「お前の普段の行動を見るに料理が出来そうには見えんからな」

「どいつもこいつも私を生活力ないとか言うのやめなさいな」

 

 少なくとも雑草をご馳走しようと考えた者に言われるとは思わなかった。

 

「これでもある人に認められるくらいには美味しく作れますわよ」

「ある人? それは誰だ?」

「言うわけありませんわ!」

 

 ソウジとの思い出はまだ話さずに胸にしまっておきたい。

 

「まったく……三人とも待ってなさいな。私が最高の料理をご馳走しますわよ」

 

 美咲はそう告げて、部屋を飛び出す。

 


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