浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第百六十四話

 

 その日の夕飯は麻婆豆腐だ。

 料理を作った美咲が最初に箸を入れ、口に運ぶ。

 

「んー! やっぱりあの人流の麻婆豆腐は美味しいですわ!」

「あの人流? なんだ前教えてくれなかった人か?」

 

 数時間眠ってすっかり元気になった裕太が、麻婆豆腐を食べながら問う。

 

「その人ではありませんわよ。私とその人が好きなヒーローが作ったことのある麻婆豆腐ですわ」

「そうか。これも、そのヒーローが作ったやつ?」

 

 裕太は別の皿に盛られた中華風冷奴を箸で掴んで聞く。

 

「そうですわ! ヒロインの方が微妙と言ってましたが、私はその冷奴好きですわよ」

「ほへー……」

「というより、今回はそのヒーロー関連の料理メインにしてますわ」

「待て待て待て。聞きたいんだけどよ」

「なんですの?」

「ヒーロー番組で出てくる料理、ここまで忠実に再現出来るもんなの?」

 

 一号も確かに聞いててそう思う。

 

「あー、サイトにレシピが載ってますの」

「え、ホントか?」

「ええ。この料理以外にもあと何品か」

「へー……って言いたいところだけど良いか?」

「はい?」

「それヒーロー番組なのか? ホントに?」

「何言ってますの? 仮面ライダーカブトは、特撮ヒーローもので教育番組、なおかつ料理番組ですわ」

「属性多いなおい……」

 

 天に指をさしながら言う美咲に、裕太が返答。

 

「なあ美咲、聞いても良いか?」

「なんですの? 一号さん」

「その人というのはお前の彼氏か?」

「……」

 

 美咲が箸を落とす。

 

「えっ、いや、教えるわけないですわ! 私とその人の間に何もありませんわよ!」

 

 そういう割には顔が赤い。

 

「顔が赤いぞ」

「……」

 

 美咲は静かに爆弾を取り出す。

 

「おいやめろ俺の部屋吹き飛ばすつもりか」

 

 裕太に止められる。

 

※※※

 

 成音は丁度そのくらいに、店で買い物をしていた。

 惣菜コーナーに向かって歩きながら、さっきの特訓を思い出す。

 

「……」

 

 優香は予想以上に戦闘に適応してきたが、それでもかなり相手に対しての甘さを捨てきれていない。

 そもそも敵を傷付ける事自体、彼女の性格上向いていないというのもあるし、まだ彼女が覚悟や容赦をするようなら、やはり明日の攻め込みに参加させるのは危険だ。

 

「あたし達で何とかするしかない」

 

 あの後連絡をとったが、一号が明人の監視役、裕太と美咲が成音達と共に戦うらしい。

 ヴィーダも合わせれば三人もライダーがいる以上、戦力に不足はないが、相手の強さも未知数だ。

 戦力が多いに越した事はないが、それでも……。

 

「?」

 

 パンコーナー近く。

 成音の目の前で、黒フードの人物が現れる。

 それも一号や二号が着ていた見慣れたデザインの。

 

「でもあれ女の人、っぽいわね」

 

 明らかに一号や二号より背が低く、体つき的に女性だと分かる。

 その人はパンコーナーで菓子パンを手にし、そのまま外に向かって走り去ろうとした。

 

「えっ」

 勿論店員さんもそれを見ていた。

 

「きゃっ! 万引きよぉ! 追っかけて誰か!」

 

 店員さんの何人かが黒フードの女に立ち向かうが、黒フードは喧嘩殺法で軽々撃退して店外に向かって逃走。

 

「仕方ないわね」

 

 成音はそう呟いてから、その女を追いかける。

 

 

 


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