浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第百六十七話

 

 蒲生は人目につかない所に隠れてから、ガスドライバーの能力で成音を洗脳しようと試みたが。

 

「……」

「やっぱり強い意志の持ち主を洗脳するのは無理みたいっすね」

 

 何度やっても、洗脳が上手くいかない。

 あの時の怪人化した生徒はあくまでガスの影響で思考能力が麻痺していたから成功したが、何の影響も受けておらず、尚且つ強い意志を持つ者を洗脳下に置く事は出来ないみたいだ。

 

「参ったっすね」

 

 命令であるとは言え、半ば自業自得によるものが起こした結果だが、蒲生は追われる身。

  少しでも味方を増やし、〇×女子高の生徒全員を洗脳下から解放した上で、自分を用済み扱いしている菫達も叩き潰そうと考えていたが……これではまた逃げ続けなければならない。

 

「……」

 

 疲れ果てた蒲生は諦めてから、近くの塀に身体を預けた。

 不思議と昨日程、眠るときの不快感は覚えなかった。

 適応……という事なのだろうか。

 何となく目を閉じて、深くは眠らずに身を休める。

 

「どんだけこんな生活してりゃ良いんすかね?」

 

 あれから家にも帰っていない。

 菫の配下だった時でさえ、我が家では多少の不信感を抱かれつつも、そこで寝起きする事は出来た。

 昨日からである筈の逃げている時間が長く感じて、今では自分の部屋の景色すら懐かしく感じる。

 

「クソ……力が欲しいっす……」

 

 蒲生はあの薬を使っていた時の事を思い出す。

 身体は物凄く痛かったし、実際死に至りそうになったが、圧倒的な力を感じた。

 痛みすら快感になるほどに。

 あれを上手く自分の力に出来ていれば、美咲すら追い越せていたというのに。

 結局そうはいかず、二号に先を越され、単純な力では美咲に劣ってしまった。

 あそこで死にたくは無かったが、ここまで悔しく、そしてしんどい思いをするのなら、薬のせいであのまま目を覚まさない方が楽だったかも知れないとすら思う。

 ガスドライバーだけでは、美咲を倒す事も、今自分を始末しようとしている追手を倒す事すら出来ないのだから。

 

「……」

 

 そして洗脳が使えないなら、美咲に頭を下げれば良いのでは……という思考が生まれそうになる自分が嫌になる。

 確かに美咲の性格上、共闘を望めばしてくれそうだが、そんな事は蒲生自身のプライドが許さない。

 自分はどんな方法を使っても、美咲の存在を消し、自分が美咲より上だと証明する為に洗脳される道を選んだ。

 あいつの力だけは絶対に借りる気はない。

 

「けっ……」

 

 爪を噛んで、蒲生はただこの状況を耐える事を選ぶ。

 

 

 

 

 


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