浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第十六話

 

 かくしてルール無用、先に倒れた方が負けのタイマンがスタートした。

 

「先手必勝ですわ!」

 

 バットを構えたボマーが、火炎放射器怪人に向かって全速力で駆け出す。

 金属バットを大きく振りかぶり、そのまま脳天に向かって。

 

「……」

 

 怪人には間一髪で躱される。

 ベルトの能力もあるかも知れないが、何というか勘で回避された感がある。

 

「あたしは多分、アンタに力勝負じゃ勝てない。でも、アンタを一か月ずっと見てきた。あたしはアンタのやりそうな事なら見通せる……」

「たった一発避けた程度で……よくそこまでイキれますわね」

 

 すかさず第二撃。

 しかし……彼女の言う通り攻撃は躱されてしまう。

 

「攻撃を当てる必要なんてない。それ以外でも倒す方法はある」

 

 火炎放射器の怪人はフィールドから、サッカーゴールの上へと飛ぶ。

 確かに場外負けのルールはないが、敵前逃亡ともとれる行動。

 それも背中のブースターの影響で、ジェットエンジン並みの速度を出している。

 

「なるほど……私が疲労したその時に叩くって事ですの? 上等ですわ!」

 

 ボマーは火炎放射器怪人を追いかける。

 ただいくらボマーでも、あの速度は……。

 

「まだ使ってなかった機能……試させてもらいますわ」

 

 端末を取り出し、あるボタンをクリック。

 端末から音声が流れる。

 

『ACCELERATE DRIVE』

 

 加速……を意味する単語。

 名の通り、ボマーの動きが、あの火炎放射器怪人とほぼ同等に。

 眼にも止まらぬ……という程ではないかもだが、それでも車なんかより全然速い。

 

「これならどうです?」

 

 心なしか、加速出来る事が凄く嬉しそうに見えるのは気のせいだろうか。

 

「やるね……でもこちらにはこれがある」

 

 飛行し始める火炎放射器怪人。

 だがボマーには強力な飛び道具がある。

 

「ボムビット!」

 

 ボマーの意思のまま、何もない所から彼女の背中に、ダイナマイト型のビットが出現する。

 複雑な軌道を描き、火炎放射器怪人へと飛んでいく。

 

「……」

 

 それも読まれていた。

 火炎放射器怪人は両手から炎を生み出し、ボムビットを跡形もなく消し去ってしまう。

 

「あ……当たりませんの」

「何度も言わせないで。あたしはアンタのやりそうな事は分かる。蘇我高校の連中も、それが分かっててあたしにやらせた筈」

「ぐぬぬ……」

 

 そうこうしているうちに、頼みの綱のアクセラレートも終了してしまう。

 

『ACCELE END』

 

 ボマーは加速した世界から引き離される。

 

「しまった……」

「切り札をそう簡単に使うなんて、何も考えてないのが見え見えね」

 

 ボマーの図星を指す火炎放射器怪人。

 これで終わりだと言わんばかりに、火炎放射器怪人は右掌に巨大な炎の弾を生成する。

 

「消し飛ばしてやる……」

「あ、あれはまずい……」

 

 流石に止めないと!

 

「山内、そんな事をしたら俺達に当たる!」

 

 黒子衣装なのも忘れて、俺は大声で叫ぶ。

 

「だから何? 見学者が勝負に口出ししないで!」

 

 余った左手で火の弾を生成し、俺に投げつける。

 

「ぐあっ!」

 

 上着が焦げる。

 俺は脱ぎ捨てて、何とか止めようと走り出す……が。

 

「やめなさい、裕太さん」

 

 ボマーが止める。

 

「美咲……」

 

 


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