浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第百六十九話

 蒲生は通話を終えた後、爪を噛みながら成音を見て呟く。

 

「山内ちゃんも、美咲と戦った者は皆おかしくなってくっす。なんであんな奴についていこうと思うんすか……」

 

 元はと言えば、生徒会を最初に辞めだしたのも彼女なのだ。

 それを見て……蒲生も他のメンバーも生徒会を辞めた。

 皆口にしなかっただけで、気持ちは皆同じだと思っていたのに、成音は美咲と戦った後、急に美咲と行動を共にするようになった。

 あれだけ菫の為に動いていた一号も、自分達を裏切って美咲の味方をしている。

 美咲の敵だった者は美咲と戦う事で、美咲の味方になっていく。

 

「……」

 

 蒲生にはとても理解の出来ない話だ。

 彼女のやる気や向上心は確かに、凄まじいものがあるし、見習うべきものではあると思う。

 だが一方で、他人まで彼女の価値観に巻き込もうとする。

 そのせいで、生徒会に関係のない仕事にまで付き合わされた事が何度もあった。

 去年は卒業した元会長がある程度ストッパーになってくれたが、副会長だった時から彼女の行動はそういう問題を孕んでいた。

 

 けど……そんな事は彼女には一切関係ない。

 

 ついていかないのなら、彼女は一人でも歩く。

 多勢に無勢な状況でも、絶対に勝ちに来る。

 自分の強さを認めさせようとしてくる。

 そして、そうでなければ満足しない。

 蒲生がどれだけ強くなろうとも、美咲は絶対にそれを超える。

 そして、相手より正しい事を証明したとしても、彼女は自分の思いを曲げる事はない。

 

「強ければ、何だって良いんすか……」

「確かに、あの人は生徒会長としては零点よね」

「山内ちゃん……」

 

 いつの間にか起きていた成音に言われる。

 

「あの人は学校を守ったけど、それはあの人の行動が結果的にそうなっただけ。あの人は自分の為にしか動かない。自分のプライドの為だけに生きてる」

 

 成音は俯いて笑みを浮かべつつ告げる。

 それに対して、蒲生は睨みながら反論した。

 

「そこまで思ってくれるなら、なんであんな人の為に戦えるんすか?」

「そうね……強いて言うなら、認めたくはないけどやるべき事をやろうとする気持ちが人とは違い過ぎる点ね」

「……」

 

 考えている事は、自分と同じというわけだ。

 

「そうよね。だからそれが悔しくて、何というか絶対にあの人を超えなきゃって思うのよ。まあ……難しいなんてレベルじゃないんだろうけど」

「……」

 

 成音も、美咲に対抗したいという気持ちは同じだった。

 けど彼女と自分では、やはりやり方が違った。

 

「だから、あの人に死なれちゃ困るのよ。あたしも折角、あの人に負けたおかげで色んな事にやる気を出そうって思えるようになったし」

「……」

 

 成音が蒲生に顔を向けて頼む。

 

「副会長、お願いがあるの。会長に今だけは力を貸してくれない?」

 

 

 


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