浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第百七十八話

 その後は美咲にとって耐えがたい時間が続いた。

 戦う意思があるのに、美咲には何も出来ない。

 ただ黙って、ムラマサ達が戦う様子を眺める事しか……。

 

「ウチも行く系……!」

 

 近くで休んでいた優香が、もう一度ベルトを装着し直す。

 

「優香さん、大丈夫ですの?」

「このままここに座ってても、ウチがここに来た意味がなくなる系。ウチも戦う系……」

 

 やはり身体が震えている。

 それでも何とか身体を動かす優香。

 美咲はその手を止める。

 

「無茶はやめなさいな……。私だって戦いたい。けど、それで死んでは意味がありませんわ!」

「……」

「あの攻撃を、恐れていますのね?」

 

 優香がその言葉に頷く。

 

「ウチ、誰かの為なら戦えると思った系。でもやっぱり、ウチは傷付くのも傷付けるのも苦手系……。ごめん、美咲っち。そんなんじゃ、美咲っちの役には立てないよね……」

「……強いですわ。優香さん、貴女は本当に強い」

「えっ?」

「自分の弱さを克服しようと……戦おうとしていたんですわよね?」

「そう系。でも……」

「貴女が二号さんに私の事を一生懸命言ってくれた時、とても嬉しくなりましたわ。それに……私の為に怒ってくれた事。戦いで強くなかったとしても、誰かを思って自分の身を削れる貴女は強い人ですわ」

「美咲っち……」

「自分勝手な私には真似出来ない強さですの。時々しつこいですが、貴女のそういう部分は好きですわ」

「……ッ!」

「これからも、その強さでいろいろな人の心を救うべきですわ。貴女の持つ本当の強さで」

 

※※※

 

 優香は美咲の言葉で安心する。

 遥が言っていた言葉は、間違っていなかった。

 昔からの友人である美咲が、今の自分に助けられていると言ってくれた事。

 

「美咲っち、ありがと系」

「貴女の友として、当然の事をしたまでですわ。私は友の扱いでも、頂点に立つ者ですわ」

「でもごめん……ウチはやっぱり戦う系」

「え……」

「誰かの為に自分の身を削れるのがウチの強さなら、ウチはその強さも捨てたくない系。戦いで強くなくても、怖くても、ウチは美咲っちの力になりたい系。だから、ウチは行く系。二号っちや操られた子達を傷付ける為じゃなくて、美咲っちをもっと支えてあげられるようになる為に……」

 

 優香の手から震えが消える。

 誰が何と言おうと、優香は人を傷付けるのも自分が傷付くのも苦手だ。

 けど……友達の為に何も出来ないのは、もっと苦手だ。

 自分の強さを捨てる気はない。

 友達を傷付ける者が現れた時に止められる強さも欲しいだけだ。

 もう二度と、美咲を死なせたりなどしない。

 

『HORSE DRIVE READY?』

「……変身系」

『COMPLETE』

 

 優香はジャンプし、馬の形を模した光に飛び乗る。

 優香は騎兵怪人へと姿を変えてから、武器を構えて駆け出す。

 


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