浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー 作:門矢心夜
その後は美咲にとって耐えがたい時間が続いた。
戦う意思があるのに、美咲には何も出来ない。
ただ黙って、ムラマサ達が戦う様子を眺める事しか……。
「ウチも行く系……!」
近くで休んでいた優香が、もう一度ベルトを装着し直す。
「優香さん、大丈夫ですの?」
「このままここに座ってても、ウチがここに来た意味がなくなる系。ウチも戦う系……」
やはり身体が震えている。
それでも何とか身体を動かす優香。
美咲はその手を止める。
「無茶はやめなさいな……。私だって戦いたい。けど、それで死んでは意味がありませんわ!」
「……」
「あの攻撃を、恐れていますのね?」
優香がその言葉に頷く。
「ウチ、誰かの為なら戦えると思った系。でもやっぱり、ウチは傷付くのも傷付けるのも苦手系……。ごめん、美咲っち。そんなんじゃ、美咲っちの役には立てないよね……」
「……強いですわ。優香さん、貴女は本当に強い」
「えっ?」
「自分の弱さを克服しようと……戦おうとしていたんですわよね?」
「そう系。でも……」
「貴女が二号さんに私の事を一生懸命言ってくれた時、とても嬉しくなりましたわ。それに……私の為に怒ってくれた事。戦いで強くなかったとしても、誰かを思って自分の身を削れる貴女は強い人ですわ」
「美咲っち……」
「自分勝手な私には真似出来ない強さですの。時々しつこいですが、貴女のそういう部分は好きですわ」
「……ッ!」
「これからも、その強さでいろいろな人の心を救うべきですわ。貴女の持つ本当の強さで」
※※※
優香は美咲の言葉で安心する。
遥が言っていた言葉は、間違っていなかった。
昔からの友人である美咲が、今の自分に助けられていると言ってくれた事。
「美咲っち、ありがと系」
「貴女の友として、当然の事をしたまでですわ。私は友の扱いでも、頂点に立つ者ですわ」
「でもごめん……ウチはやっぱり戦う系」
「え……」
「誰かの為に自分の身を削れるのがウチの強さなら、ウチはその強さも捨てたくない系。戦いで強くなくても、怖くても、ウチは美咲っちの力になりたい系。だから、ウチは行く系。二号っちや操られた子達を傷付ける為じゃなくて、美咲っちをもっと支えてあげられるようになる為に……」
優香の手から震えが消える。
誰が何と言おうと、優香は人を傷付けるのも自分が傷付くのも苦手だ。
けど……友達の為に何も出来ないのは、もっと苦手だ。
自分の強さを捨てる気はない。
友達を傷付ける者が現れた時に止められる強さも欲しいだけだ。
もう二度と、美咲を死なせたりなどしない。
『HORSE DRIVE READY?』
「……変身系」
『COMPLETE』
優香はジャンプし、馬の形を模した光に飛び乗る。
優香は騎兵怪人へと姿を変えてから、武器を構えて駆け出す。