浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー 作:門矢心夜
「お見事だ」
バスケットボールを投げて、リングの中へと見事シュートした青年に、知的な雰囲気を漂わせる女性が拍手してそう告げた。
女性の名前は、戸間菫。
自分とは学部の違う同級生で、彼女の友人と共に大学内で知らないものはいないとか。
それはそうだ。
何せ、彼女は若干十九歳の身にして、何やら高度な研究をしている程の天才なのだから。
彼女のしている事など青年には理解出来ない世界だが、それが凄い事だけはよく分かる。
「……ありがとう、ございます」
青年は緊張した声で、菫の称賛に対して礼を言う。
菫のような人物に評価してもらえる事も嬉しかったし、何より彼女は美しかった。
まともに目を合わせる事も、青年のようなバスケ以外取り柄のない青年には厳しい事だ。
「またここに、見に来ても良いかい?」
「……え?」
「僕も最近スランプ気味でね、気分転換出来る何かが欲しいんだ。協力してもらえるか?」
「……」
青年は言葉も出ないぐらい嬉しくなり、下を向いて返すべき言葉を探す。
「やはり見られるのは恥ずかしいかい? では残念だが、別の所へ……」
「まっ、待って!」
青年は手を伸ばして止める。
「俺のバスケで良ければ、是非……見てってください」
――。
「げほっげほっ!」
一号は、咳き込みながら目を覚ました。
まだ重い身体を少し持ち上げ、近くにある電話の子機まで手を伸ばす。
眠る前に出て行った明人は、美咲は……裕太は、どうなったのだろうか。
「はあ……はあ……」
少し動くのでさえ、息が切れて辛い。
もう生きられる時間がないというのが、それだけで一号の心に伝わってくる。
「菫……」
さっきまで見ていた夢の中に、菫がいた。
一号が人間だった時の記憶なのかは定かではないが、あの菫の姿は、今までの一号の記憶の中にはなかった筈だ。
それに、自分が元々バスケットボールを嗜んでいた事も。
「……」
菫といたい、そんな気持ちが今の自分の中で強くなっている気がする。
自分が死に近付いているからなのか……それは分からない。
けど、この身体でその願いを叶えるのはとても……。
それに明人には否定されたが、今の自分には罪を償う事が最優先だ。
裕太や美咲の為に出来る事をしなくては……。
「行かないと……ッ!」
一号はサックドライバーを手にする。
このシステムは負傷をある程度軽減する機能が備わっている筈。
ならば……この病に侵された身体もあるいは……。
『SMASH DRIVE READY?』
「……変身」
一号は構えてから、息を切らしつつそう呟く。