浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第百九十五話

 変身が解けて、白い髪の福沢裕太の姿へと戻った二号が「馬鹿な……」と呟きながら地面に手を付けた。

 

「俺が負けた? 嘘だ……こんなのあり得ねえ。あり得るわけねえよ」

 

 いつもの余裕そうな態度を崩し、目の前の現実を否定しようとそう口にする。

 ボマーも必殺技の使用で強制的に美咲の姿へ戻る。

 解除の後、ドライバーの液晶にブランクタイムが表示された。

 

「俺は何の為にここまでしたんだよ。俺はこの力でお前達を倒す為に、自分の身体を捨てて、お袋の犬になる真似までしたんだぞ! なのに何故勝てない! どうしてお前に負けたんだ!」

 

 声を荒らげ、地面に拳を叩きつけた。

 

「一回の勝負の結果だけでは、何の意味もありませんのよ」

「……は?」

「何度も戦い、そして負け続ける……その先で勝利を掴む。私の勝利は、今までの戦いで積み重ねたものの勝利ですわ」

「……何度も戦って、負け続ける? 抜かせ。お前は甘い。甘すぎる。お前は相手を殺さなかったからいいかも知れねえがな……俺は違う。俺は負けた奴に二度とチャンスなんて与えねえ。負けた奴は、一生負けたまま死なせてやる。それが俺のやり方だ。そんな奴が相手でも、お前はそんな事言うのか?」

「……それでも、私はそう言い続けますわ。貴方に負けて腕を失っても、脚を失っても、例えこの命を奪われても……自分がもしもう一度動けるなら、私は何度だって勝ちに行きますわ!」

 

 二号は笑う。

 

「ふふ……はは……」

「?」

「お前馬鹿だな。でも……すげえ根性あるんだな」

「その通りですわ。私もそれを誇りに思ってますの」

 

 美咲も笑い返す。

 

「二号さん、お願いがありますの」

 

 真面目な顔に戻り、頼み込む美咲。

 

「なんだよ」

「私と一緒に、菫先生を止めて欲しいですわ」

 

 二号が目を丸くする。

 

「俺と一緒? お前……正気か?」

「正気ですわ。私と貴方はもう敵じゃない。もう一度戦う事だってあるかも知れないけど、次戦う時は憎み合ったり何かを奪い合ったりする戦いじゃありませんの。きっと、仲間としてお互いを高め合う為に戦えますわ」

「仲間として……ねえ。もしそう出来たら、楽しいかもしんねえな」

「楽しいですわよ! 絶対、ぜ~ったい! 勿論、次だって私は負けませんわよ!」

「そうか。まあ、俺だって次は勝たせてもらうけどよ」

「はいですの! これからよろしくお願いしますわ」

「へへっ……」

 

 二号は笑顔で握手を求める。

 美咲も、それを笑顔で握り返そうと手を伸ばす。

 

「――だから、甘いっつってんだよ」

 

 

 


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