浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー 作:門矢心夜
「ほらよ、これで良いだろ?」
二号は菫の研究所に戻ってすぐに、ハイドロフォームカードを菫に見せる。
「……」
だが菫は不満げな表情で対応する。
「僕は、君に何と言ったか覚えてるかい?」
「ああ……。ハイドロフォームカードを奪った上で、オールウェポンのカードを破壊、その上であの場の全員を塵も残さず全員殺せ……だったか?」
「そうだね。でも、君はその内の一つしか達成していない」
「お袋よぉ、俺がそんなつまんねえ事すると思うか?」
二号が笑みを浮かべて告げた言葉に、菫は不快感を全面に出した表情で答えた。
「……はあ、君の願いを叶えてあげたんだから、これからは完璧にこなしてくれると思っていたんだがね。どうしてなんだい? 君は自分が強いという現実さえあればそれでいいのではないか?」
「ただただ力だけあっても、それが強いかどうかは試さなきゃ分かんねえだろうが。あいつらが無駄な努力をして、それでも俺が勝つ。それによって、こいつの……いや、俺の力が本物だって事が分かる。お袋みたいな奴には一生理解出来ねえと思うけどな」
「どういう意味かなそれは」
「分かってる癖に……。アンタは心の中では負けを認めてる。だから自分一人の力じゃなくて、俺らを使って狩野遥を消そうとしてるんだろ? まともに研究したって勝てねえから」
「……」
彼の……いや彼女の言う事は事実だ。
だからこそ、菫は耐え切れずに反論する。
「それは君とて同じだろう? 昔の肉体のままではあれ以上強くなる事が出来ないから、僕の力を借りたのではないのかい?」
「……ふっ」
「何がおかしい? 君も僕も同じ穴の狢……そうじゃないのかい?」
「ああ、いやいや。そういや俺も言う資格無かったなって笑っただけだ」
「……君、人を舐めるのも大概にしたまえよ。誰のおかげで、自分の願いが叶ったと思っているんだい?」
「だからアンタには感謝してるし、アンタの言う事を一部聞いてやってるだろ? でも俺はつまんねえ勝ち方はしたくねえんだよ。安心しろ。俺は人の力借りた上で負けるなんてだせえ真似しねえよ」
「それで負けたら、どう責任を取るつもりだい?」
「……知らねえな。俺は別にアンタがどうなろうが知ったこっちゃねえからな」
菫は完全に後悔する。
彼女にあの身体を与えたのは失敗だという事を。
でも……今なら。
「どうやら、僕が無理矢理にでも君を矯正するしかないみたいだね」
「……」
「悪いけど、君に一度痛い目を見てもらうよ。僕の勝利の為にね」
「能力使えば操作も妨害出来るって知ってるか? って聞いてねえか」
「超化!」
『COMPLETE』
菫の身体をオーラが包み、力を与えた。
「……良いぜ。やれるもんならやってみな」
ベルトを装着しようとしている二号に向かって超スピードで飛び出し、拳を勢いよく振るう菫。
二号はそれを間一髪で回避し、端末を操作。
『BOMER DRIVE READY?』
「変身」
左拳を握りながら、端末をベルトに装着。
『COMPLETE』
二号はその姿を、仮面ライダーアトミックへと変えた。
「ふっ……」