浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第百九十九話

 

 アトミックは一度も攻撃を仕掛けてこない。

 が……寧ろ追いつめられているのは菫だった。

 相手は未だハイドロフォームを使用していない。

 未使用の状態であれば、菫が使用しているベルトはアトミックが持つそれと互角の筈なのに、太刀打ち出来なかった。

 

「はっ……」

 

 菫は息を切らす。

 

「どうした? それで終わりか? なら、大人しく諦めな」

 

 アトミックが光剣を向けた。

 菫はそれに対して呟く。

 

「そうやって僕のプライドを傷付ける……。僕は誰かに命令されるのが嫌いなんだよ」

「馬鹿だなお袋は。俺の方が強いんだ。本来なら俺の命令をアンタが聞くのが筋の筈だろ」

「ほざいていろ。今すぐその口を利けなくしてやる」

「追いつめられている分際でイキってんじゃねえよ」

 

 アトミックが一瞬にして距離を詰め、拳で菫を勢いよく吹き飛ばした。

 

「お袋さ……さっきまでので全力? だとしたら、残念だけど俺は半分も力出してねえぞ」

「……ッ!」

 

 菫は屈辱感に耐えかねて声を漏らす。

 

「良い顔だなそれ。もっとプライドへし折ったらそれよりすげえ顔になったりするのか?」

「黙れ!」

 

 飛び出し、菫が拳をアトミックに振るう。

 直後。

アトミックの前で見えない障壁が生まれ、拳は防がれる。

 

「はいはい。そんな攻撃良いからさ、もっと派手なの来いよ。ま……期待はしてねえけどな」

「くっ……うわああッ!」

 

 叫びながら、次は蹴りを入れようとしたが。

 

「ぐあッ……」

 

 距離を詰められた後拳を叩き入れられ悶絶する菫。

 

「これで終わりだ」

『FINAL DRIVE!』

 

 端末のボタンを押したアトミックがジャンプし、ボムビットを脚に集める。

 

「お前に負けるわけにはいかない……」

 

 負けじと菫も、最後の悪あがきをする。

 端末を取り出し、ボタンを押す。

 

『FINAL DRIVE!』

 

 菫はゆっくりと宙に浮いてから、右足を前に出し。

 

「はああああッ!」

 

 唸り声を上げながら、アトミック目掛けて飛び蹴りを放つ。

 

「ライダーボムキック……」

 

 一方アトミックも、菫目掛けてライダーボムキック。

 ボムビットと共に、右足を前に出して急降下。

 衝突するタイミングはほぼ同時……。

 しかし。

 

「へっ……なーんてな」

 

 ボムビットがアトミックの脚から離れ、放物線を描きながら、菫の所へと飛ぶ。

 飛び蹴りと見せかけたアトミックは地面に着地。

 

「うわああッ!!」

 

 菫はボムビットをダイレクトに浴びて、大ダメージを負う。

 超化が切れ、地面へと叩きつけられた菫に、アトミックは変身を解いて近付く。

 

「ざまあねえな」

 

 笑みを浮かべてそう告げる二号。

 菫のプライドはほぼ破壊され、反論する言葉さえ見当たらない。

 ただ屈辱という言葉が、菫の頭を支配し……身体中に痒さのような何かを覚える。

 

「でもこれで分かっただろ。お袋は、俺が何をしようと文句を言えねえ。もうお袋なんて必要ねえんだよ」

「……」

 

 命乞いをすべき場面かも知れない。

 けど菫には、それが出来なかった。

 

「まあ、それでもこの戦いはお袋が望んだ事だ。この戦いが終わるまでは生かしてやるよ。でも……」

 

 菫の懐から、脳波制御用のスイッチを取り出す。

 二号の分だけではない、一号のも含めた全員分だ。

 

「ふんッ!」

 

 二号はそれを全て破壊する。

 

「これで俺を縛れねえな。あとから作る事は出来ねえだろ?」

「……ッ!」

「じゃあな。一週間後を楽しみにそこでじっとしてな」

 

 二号がそう告げて、その場から姿を消した。

 


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